雲の上は、いつも晴れだった。

田古みゆう

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雲の上は、いつも晴れだった。 ~本編~

プロローグ(4)

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「いいえ。フリューゲル。そうではありませんよ。きっと、それがアーラの定めなのでしょうね」
「……定め?」

 司祭様は一体何が言いたいのだろう? 私が何だというのか?

 少しの沈黙の後、再び司祭様が話し出された。

貴方方あなたがたの開花は、いつものそれとは少し違ったことをご存知でしたか?」
「はい。司祭様」

 私は、答えながら司祭様の次の言葉を待った。隣でフリューゲルもコクンと頷いている。

「貴方方の開花のとき、わたくしは、大樹様リン・カ・ネーションのお声を聞いたような気がしたのです」

 司祭様は、気持ちを落ち着けるかのように、深く息を吐き出してから、お話を続けられた。

「『時、来たりしとき、片翼を学ばせよ。時、来たりしとき、片翼を羽ばたかせよ』 これがその時わたくしが聞いたお言葉です」
「それは……」
わたくしには大樹様リン・カ・ネーションのお心までは分かりません。しかし、今日まで、そのお言葉の意味を考えてきました。お声を聞いたときの開花により生まれたNoelノエルは、一人ではなく貴方方お二人でした。お二人は、対となる存在なのではないか。片翼とは、貴方方お二人のうち、どちらかを示しているのではないかと」

 司祭様が話し終えると、フリューゲルが、ポツリと言葉を零した。

「片翼を学ばせよ……?」

 その後を私が引き継ぐように呟く。

「片翼を羽ばたかせよ…?」

 私たちの開花については知っていた。しかし、司祭様から語られた話は、初めて聞くものだった。

 お話を伺いながら、私とフリューゲルはお互いに顔を見合わせる。

「蕾の成長が止まり出したのは、七日ほど前です。今までにないことですが、これは、大樹様リン・カ・ネーションからの啓示ではないかと、わたくしは思うのです。時が来たのです」

「……時が来た?」

 私は話が呑み込めず、ただ司祭様のお言葉を繰り返す。しかし、フリューゲルは、私よりは理解できたのか、司祭様へ質問をした。

「司祭様は、僕たちのうち、どちらがその片翼だとお考えですか?」
わたくしは、……アーラではないかと思っています」
「えっ? 私?」
「それは、なぜでしょう?」

 ほとんど話についていけていない私を一人残し、司祭様とフリューゲルの話は続く。

「貴方を含め、Noelノエルが下界を見ることは、ほとんどありません。しかしアーラは、毎日のように下界を見つめています。下界には、アーラを強く惹きつける何かがあるのかもしれないとわたくしは思うのです」
「確かにそうかもしれません」

 フリューゲルは、司祭様のお考えに深く頷くと、そのまま考え込むように黙ってしまった。
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