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雲の上は、いつも晴れだった。 ~本編~
プロローグ(3)
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開花儀礼を終えると、司祭様が私たちに声をかけてきた。
「アーラ、フリューゲル、貴方方にお話があります」
「はい。何でしょうか? 司祭様」
私たちは声を揃えて答える。
「ここではなんですので、大樹様のお側でお話しましょうね」
司祭様は庭園で唯一、羽と金の環をお持ちの天使様。毎日の開花儀礼を執り行うのも、私たちNoelを取りまとめるのも、司祭様だ。
「フリューゲル、今日の開花はどうでしたか?」
「はい。司祭様。僕たちの仲間がまた一人増えました。とても、すばらしいことです」
「アーラ、貴方はどうですか?」
「はい。司祭様。私も、とてもすばらしいことだと思います」
「そうですね。仲間が増えることはとてもすばらしいことです。ですが……」
司祭様は言葉を切り、大樹を仰ぎ見た。そんな司祭様のお姿は、まるで、下界の人が困っているときのような、なにか、お顔に影を落とされているような感じにみえる。こんなお顔をなさるなんて、天使様には、下界の人のような感情があるのだろうか。
「どうかされたのですか? 司祭様」
フリューゲルが声をかけると、司祭様は私たちに向き直り、こう切り出した。
「……時期が来たようですね。お二人とも、大樹様を御覧なさい」
「大樹様がどうかされたのですか?」
私には、司祭様が何を仰りたいのか、全然分からない。司祭様は、何をお話になりたいのだろうか? 大樹はいつものように、雄大に聳えているではないか。
そのとき、私の隣で黙って大樹を見上げていたフリューゲルが、突然「あぁっ」と小さな声をあげた。
「司祭様。大樹様の蕾が……」
フリューゲルが指すほうを見ると、大きく茂った大樹の蕾の中のいくつかが枯れ始めていた。遠くからでは分からなかったが、成長が止まってしまったのではないかと思われる蕾もある。
こんなことは今まで見たことがない。大樹はどうしてしまったのか?
「司祭様。大樹様はどうなされたのですか? まさか、お弱りに……?」
「大樹様は、時が来たことを、私たちにお知らせくださっているのです」
「時が来たこと?」
何が起こるというのか? この平穏な世界に、天変地異でも起こるというのか?
「アーラ、貴方は今日も下界を見ていましたね?」
「えっと……。あの……」
答えに詰まっていると、司祭様は、私からフリューゲルに質問を移した。
「フリューゲル。アーラは、今日も下界を見ていましたか?」
「はい。司祭様。……しかし、それはいけないことでしょうか?」
「アーラ、フリューゲル、貴方方にお話があります」
「はい。何でしょうか? 司祭様」
私たちは声を揃えて答える。
「ここではなんですので、大樹様のお側でお話しましょうね」
司祭様は庭園で唯一、羽と金の環をお持ちの天使様。毎日の開花儀礼を執り行うのも、私たちNoelを取りまとめるのも、司祭様だ。
「フリューゲル、今日の開花はどうでしたか?」
「はい。司祭様。僕たちの仲間がまた一人増えました。とても、すばらしいことです」
「アーラ、貴方はどうですか?」
「はい。司祭様。私も、とてもすばらしいことだと思います」
「そうですね。仲間が増えることはとてもすばらしいことです。ですが……」
司祭様は言葉を切り、大樹を仰ぎ見た。そんな司祭様のお姿は、まるで、下界の人が困っているときのような、なにか、お顔に影を落とされているような感じにみえる。こんなお顔をなさるなんて、天使様には、下界の人のような感情があるのだろうか。
「どうかされたのですか? 司祭様」
フリューゲルが声をかけると、司祭様は私たちに向き直り、こう切り出した。
「……時期が来たようですね。お二人とも、大樹様を御覧なさい」
「大樹様がどうかされたのですか?」
私には、司祭様が何を仰りたいのか、全然分からない。司祭様は、何をお話になりたいのだろうか? 大樹はいつものように、雄大に聳えているではないか。
そのとき、私の隣で黙って大樹を見上げていたフリューゲルが、突然「あぁっ」と小さな声をあげた。
「司祭様。大樹様の蕾が……」
フリューゲルが指すほうを見ると、大きく茂った大樹の蕾の中のいくつかが枯れ始めていた。遠くからでは分からなかったが、成長が止まってしまったのではないかと思われる蕾もある。
こんなことは今まで見たことがない。大樹はどうしてしまったのか?
「司祭様。大樹様はどうなされたのですか? まさか、お弱りに……?」
「大樹様は、時が来たことを、私たちにお知らせくださっているのです」
「時が来たこと?」
何が起こるというのか? この平穏な世界に、天変地異でも起こるというのか?
「アーラ、貴方は今日も下界を見ていましたね?」
「えっと……。あの……」
答えに詰まっていると、司祭様は、私からフリューゲルに質問を移した。
「フリューゲル。アーラは、今日も下界を見ていましたか?」
「はい。司祭様。……しかし、それはいけないことでしょうか?」
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