雲の上は、いつも晴れだった。

田古みゆう

文字の大きさ
上 下
5 / 124
雲の上は、いつも晴れだった。 ~エピソード0~

~エピソード0~ 1

しおりを挟む
 見渡す限り白い雲と青い空の広がる庭園ガーデンで、唯一緑の葉を青々と茂らせ天高くそびえ立つ大樹『リン・カ・ネーション』。大樹は、一年中蕾をつけていて、一日に一つ、ベルの形に似た白い大きな花を咲かせます。

 未満天使であるNoelノエルたちは、このベルの花から生まれてくるのですが、ベルの花から生まれるNoelノエルの体の大きさは、決まっていません。下界人げかいびとのように、皆が赤ん坊の経験をするわけではなく、赤ん坊であったり、子どもであったり、成人であったり、老人であったりと、Noelノエルとして生まれ落ちるときの姿は様々。子どもや成人の姿で生まれたNoelノエルの中には、その後、下界人と同じように体が成長し、歳を重ねていく者もいます。

 Noelノエルの見た目は下界人とほとんど同じです。わたくしたち天使には、下界人がイメージする通り、羽根があり、金の環が頭上で輝いておりますが、それは、立派に天使へ成長した証。未満天使であるNoelノエルにはそれがありません。

 見た目は下界人と変わらないNoelノエルですが、彼らと下界人とでは、大きく異なるところもあります。それは、Noelノエルには感情がほとんどないということです。怒ることも、楽しむことも、悲しむこともありません。ただ、喜ぶことはほんの少しだけあります。

 感情のほとんどないNoelノエルたちは、お互いに干渉しあうことはほとんどありません。それでも、日々新たな仲間を迎え入れることは、彼らにとって、静かで穏やかな喜びなのです。

 大樹の花が開く時間には、いつでも静かで穏やかな喜びがNoelノエルと大樹の周りを包んでおります。

 しかし、本日の開花は少々違いました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~

華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。 突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。 襲撃を受ける元婚約者の領地。 ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!! そんな数奇な運命をたどる女性の物語。 いざ開幕!!

悪役令嬢にはブラック企業で働いてもらいます。

ガイア
ライト文芸
ライヴァ王国の令嬢、マスカレイド・ライヴァは最低最悪の悪役令嬢だった。 嫌われすぎて町人や使用人達から恨みの刻印を胸に刻まれ、ブラック企業で前世の償いをさせられる事に!?

日に向かう花

環 花奈江
ライト文芸
都立高校に通う篤樹が化学部で出会ったのはちょっと風変わりな先輩でした。

愛されない皇子妃、あっさり離宮に引きこもる ~皇都が絶望的だけど、今さら泣きついてきても知りません~

ネコ
恋愛
帝国の第二皇子アシュレイに嫁いだ侯爵令嬢クリスティナ。だがアシュレイは他国の姫と密会を繰り返し、クリスティナを悪女と糾弾して冷遇する。ある日、「彼女を皇妃にするため離縁してくれ」と言われたクリスティナは、あっさりと離宮へ引きこもる道を選ぶ。ところが皇都では不可解な問題が多発し、次第に名ばかり呼ばれるのはクリスティナ。彼女を手放したアシュレイや周囲は、ようやくその存在の大きさに気づくが、今さら彼女は戻ってくれそうもなく……。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

oldies ~僕たちの時間[とき]

ライト文芸
「オマエ、すっげえつまんなそーにピアノ弾くのな」  …それをヤツに言われた時から。  僕の中で、何かが変わっていったのかもしれない――。    竹内俊彦、中学生。 “ヤツら”と出逢い、本当の“音楽”というものを知る。   [当作品は、少し懐かしい時代(1980~90年代頃?)を背景とした青春モノとなっております。現代にはそぐわない表現などもあると思われますので、苦手な方はご注意ください。]

【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド

まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。 事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。 一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。 その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。 そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。 ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。 そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。 第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。 表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。

処理中です...