落ちてきた数字

田古みゆう

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p.8

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 数字の襲来があってから一日が過ぎた。

 数字の襲来以外にも事前警告の通り、太陽フレアにより、磁場の歪みからか町の至る所で異常事態が起きていたようだが、それは、懸念していた事態よりもずっと小規模なもので、取るに足らない事ばかりだった。

 それより何より、やはり最大の異常事態は、数字の襲来だった。

 まさしく襲うという表現がしっくりとくるほどに、大群で空から落ちてきた数字たちは、互いに押し合いへし合いを繰り返していた。その間、家はミシミシと軋み続け、今にも家ごと押し潰されてしまうのではないかと感じた。

 タモで一網打尽にしてやろうなんて考えは、微塵も浮かばないくらい僕は自身の身を守ることに必死だった。

 襲来からしばらく経つと、数字たちの押し合いも収束したのか家は軋まなくなり、窓に張り付くようにしていた数字の一部も剥がれていなくなった。窓から外が見渡せるようになり、そっと覗くと、数字たちはより開けた場所を求めるかのように、隊列を組んでどこかへ向かって浮遊していった。

 襲来から24時間が過ぎた頃には、家の周りには巨大数字は愚か、いつも見かける通常サイズの数字すらどこにも漂っていなかった。

 僕は数字確保に失敗してしまったが、外にいた人たちは、さぞや大量のスコア獲得が出来たことだろうと恨みがましく思いながら、何かニュースになっていないかとテレビをつける。

 すると、昨日のニュースキャスターが危機感を感じさせる早口でニュース原稿を読んでいた。画面が中継へと切り替わり、昨日の広場を映し出す。

 昨日見たように広場にはテントが張られ、至る所にゴミが散らばっている。どれだけ騒いだのかと呆れながら画面を見ているとふと違和感を覚えた。

 人が誰もいない。

 しんと静まり返った広場に響くのは、状況を伝えるアナウンサーの声のみ。

「昨日はあれだけ居た人影が、今は全く見当たりません。皆さんは一体どこへ行ってしまったのでしょうか?」

 その時、速報を知らせるアラームが鳴り、テレビ画面上部にテロップが流れた。

『行方不明者多数。行方不明になっているのは高スコア保持者ばかりか』

 続いて別の速報が流れる。

『数字研究チーム、全員が忽然と姿を消す。消息不明』

 途端に汗が噴き出した。

 やはり、数字は得体の知れないものだったのではないか。

 昨日の数字の大群を思い出す。

 あの時、アレらは意志を持って動いていなかっただろうか。

 噴き出した汗が、背中をツゥっと垂れていった。





完結しました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
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