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空は黒々と蠢くもので覆い尽くされていた。こんな空は見たことがない。ゆっくりと波打つように見える空を凝視していると、空が段々と下がってきていた。どんどんと空の青が黒に侵食されていく。
その光景をじっと見つめていたら、黒い空からポロポロと何かがこぼれ落ちていた。目を凝らしてそれを見つめる。こぼれ落ちた何かは、空を侵食する黒い塊よりも少しだけ早く落ちて、まるで空に小さなシミができているようだった。
黒いシミと黒い塊はゆっくりと、しかし確実に僕たちに迫って来ていた。今までに経験したことのない出来事に、僕は何もかもを忘れて、呆然と空を見上げる。
その間にも空はどんどんと黒に変わっていき、はじめに聞いたざわざわという音も次第にその音を大きくしていく。
最早、耳を塞ぎたくなるような大騒音が辺りに響き出した頃、ようやく僕は黒く蠢くものの正体を視認した。
数字だ。
空を埋め尽くす黒は全て数字だ。研究チームの予測通り、大量の数字が空から落ちてきている。まるで数字の襲来だ。
これだけの数の数字が落ちてくれば、誰もが高スコア保持者になれるのではないか。そんなことが一瞬頭を過ったが、次第に僕は眉を顰めることになった。
数字がいつもよりも大きい。数字の値がではない。そのサイズだ。いつもならばサッカーボールほどのサイズのはずだが、今は、それよりも大きく見える。しかも数字たちはまだ空のずっと高いところにいるのだ。それでいつもよりも大きく見えるということは、僕の目の前へやってきた時には、一体どれほどのサイズに見えるのだろうか。
数字を体内に取り込んだところで、何も問題はない。それは分かっているのに、僕は巨大数字の落下に恐怖を覚えた。
もう騒音と言っていいほどの数字の蠢く音と、どんどんとその姿が大きくなる数字に、僕は思わず窓を閉め部屋の隅へ逃げると、耳を塞ぎ、目を瞑った。
あんなものを体内に取り込んで本当に大丈夫なのか。僕たちのこれまでの行動は間違っていたのではないか。後悔と疑念が頭の中でぐるぐると渦巻く。
随分と長い時間、目と耳を塞いでいた僕は、部屋が振動していることに気がつき、そっと目を開けた。
恐る恐る顔を上げる。僕の目に飛び込んできたのは、窓に張り付くようにして変に潰れた数字の一部だった。それはまるで満員電車のドアに押しつけられた人のお腹のように、ベッチャリと潰れている。
数字たちが窓の外で押し合いへし合いしているのだ。
その光景をじっと見つめていたら、黒い空からポロポロと何かがこぼれ落ちていた。目を凝らしてそれを見つめる。こぼれ落ちた何かは、空を侵食する黒い塊よりも少しだけ早く落ちて、まるで空に小さなシミができているようだった。
黒いシミと黒い塊はゆっくりと、しかし確実に僕たちに迫って来ていた。今までに経験したことのない出来事に、僕は何もかもを忘れて、呆然と空を見上げる。
その間にも空はどんどんと黒に変わっていき、はじめに聞いたざわざわという音も次第にその音を大きくしていく。
最早、耳を塞ぎたくなるような大騒音が辺りに響き出した頃、ようやく僕は黒く蠢くものの正体を視認した。
数字だ。
空を埋め尽くす黒は全て数字だ。研究チームの予測通り、大量の数字が空から落ちてきている。まるで数字の襲来だ。
これだけの数の数字が落ちてくれば、誰もが高スコア保持者になれるのではないか。そんなことが一瞬頭を過ったが、次第に僕は眉を顰めることになった。
数字がいつもよりも大きい。数字の値がではない。そのサイズだ。いつもならばサッカーボールほどのサイズのはずだが、今は、それよりも大きく見える。しかも数字たちはまだ空のずっと高いところにいるのだ。それでいつもよりも大きく見えるということは、僕の目の前へやってきた時には、一体どれほどのサイズに見えるのだろうか。
数字を体内に取り込んだところで、何も問題はない。それは分かっているのに、僕は巨大数字の落下に恐怖を覚えた。
もう騒音と言っていいほどの数字の蠢く音と、どんどんとその姿が大きくなる数字に、僕は思わず窓を閉め部屋の隅へ逃げると、耳を塞ぎ、目を瞑った。
あんなものを体内に取り込んで本当に大丈夫なのか。僕たちのこれまでの行動は間違っていたのではないか。後悔と疑念が頭の中でぐるぐると渦巻く。
随分と長い時間、目と耳を塞いでいた僕は、部屋が振動していることに気がつき、そっと目を開けた。
恐る恐る顔を上げる。僕の目に飛び込んできたのは、窓に張り付くようにして変に潰れた数字の一部だった。それはまるで満員電車のドアに押しつけられた人のお腹のように、ベッチャリと潰れている。
数字たちが窓の外で押し合いへし合いしているのだ。
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