決戦前夜

田古みゆう

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いざ、決戦!

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 小夜子は、吹き付ける潮風を受けながら、青白い顔のまま、胸の前で両手を組み、武が来るのを待っている。

 いつも気がつけば小夜子の周りにいる細川の姿は、珍しく近くに見当たらない。

 細川は、建物の影から、真剣な面持ちで小夜子のことを見ていた。

 そんな細川の背後に近づき、彼女の肩をポンと叩いたのは、細川と同じく、武を見守ろうとやってきた水野だった。

「よぉ! お前も戦況確認か?」
「まぁね。お互い、今後の身の振り方を決めるためにも、ここは見届けないとね」

 細川と水野は、お互いにニヤリと視線を交わす。

 その頃武は、潮風を受けながら、青白い顔のまま、小夜子の前へとやってきた。

 互いの姿を認めると、数秒、無言のまま見つめ合う。そして、沈黙を破ったのも同時だった。

「宮本……くん」
「佐々木……さん」
「あの……」

 小夜子は言い淀む。その隙に、武が口を開いた。

「青い顔をしているけど、大丈夫?」
「えっ……、ええ。乗り物酔いが酷くて。宮本くんも、あまり体調が良くなさそうね?」

 武が自身を気遣ってくれたことに、心震えながら、小夜子も、武の体調を案ずる。

「ああ。僕も、乗り物酔いで、少しね。……だから、済まないが、話は手短に終わらせてもらえるだろうか?」
「ええ。そうね。そうしましょ。実は……」

 小夜子は一呼吸置くと、自身の成功を心の中で祈り、思い切って口を開いた。

「実は、私」
「すまない!」
「えっ?」

 小夜子の言葉を遮って、武は、身体を直角に折り曲げ、頭を下げた。

「君が会長の座を狙っていることは知っている。けど、僕も会長の座を欲っしている。僕は、君に負けるつもりも譲るつもりもない! 僕は、いつでも、君を潰す準備がある」

 思いの丈を、一気に捲し立てた武が顔を上げると、小夜子がポカンと口を開けていた。

「あの、一体、なんのお話ですか?」
「え? 生徒会長の座を掛けた話し合いでは……?」
「いえ、えっと、そういうつもりでお手紙を差し上げたわけでは……」

 そこで小夜子は、あることに、はたと気が付いた。そして、細川の姿を辺りに探す。

 何やら、大慌ての細川と水野に、向かって声を張り上げた。

「あなたたちが原因ですね~」

 小夜子の剣幕に、遅まきながら、何やら食い違いが起きていたようだと悟った武も、水野を恨めしく睨め付ける。

 今回の2人の決戦は、どうやら、不発に終わったようだ。

 いや、今まさに、恋と、生徒会長の座をかけた戦いの火蓋が切って落とされたのかもしれない……





完結しました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
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