8 / 9
決戦当日の小夜子
しおりを挟む
いよいよ決戦当日。
小夜子のコンディションは、最悪だった。それもそうだろう。気持ちが昂りすぎて、前夜に夜更かしをしてしまったのだから。
目の下にしっかりとしたクマができ、せっかくコンディションの良かったお肌は多少むくんでいる。寝不足のせいか、コンタクトもなかなか入らず、仕方なく装備した眼鏡で、残念な顔をなんとか隠し、学校へとやってきた。
今日は、校外学習で、バスと船に乗り、巌流島へ行くことになっている。
巌流島で、班ごとに昼食のバーベキューを楽しんだ後は、自由散策の時間。先日忍ばせた手紙には、時間の指定を書かなかったと後で悔やんだが、スケジュール的に、この時間に指定先である展望広場へ来てくれるだろうと思っている。
呼び出した相手である、宮本武とは、これまで接点らしい接点はなかったが、ここ数日、なんとなく視線を向けられていたし、幾度かは確実に視線が交わったので、自身が思いの丈をぶつけても、色よい返事がもらえるのではなかろうかと、確証もないのに、何処か小夜子は強気でいる。
しかし、やはり、これまでに接点がないというのは、多少心許ないので、ここは「お友達から始めましょう」と言うべきだろうかと、少なからず尻込みする気持ちもある。
だが、成績優秀なうえにスポーツ万能。おまけに、爽やかさはピカイチという彼のことだ。いつ突然に、彼女という存在が現れてもおかしくない。そんなことになってしまっては、面倒なことこの上ない。やはりここは、宮本武との初の接触で必ず、自身の魅力を余すところなく伝えて、武の彼女の座にふさわしいということを思い知らせてやるのだと、小夜子は意気込んでいた。
しかし、それは、バスに乗り込むまでだった。
巌流島に着き、船から降り立った小夜子は、ふらふらとして、顔面蒼白の状態だった。
「大丈夫ですか? 副会長」
「……もう、だめかもしれないです」
メガネを外し、苦しそうに顔を歪める小夜子の背中を、細川が心配そうにさする。
少し離れた場所では、武と水野が同じような状態になっているのを、チラリと視界に映し、細川は、呆れたように声を掛ける。
「そんなんで、本当に大丈夫ですか? 今日が、宮本くんとの対決の日なんですよね?」
「うん。……えっ? 対決? 対決って、何? というか、何故、宮本くんと約束がある事を知っているの?」
青い顔を訝しそうに顰めて、小夜子は細川と目を合わす。しかし細川は、明後日の方を見て、受け流した。
小夜子のコンディションは、最悪だった。それもそうだろう。気持ちが昂りすぎて、前夜に夜更かしをしてしまったのだから。
目の下にしっかりとしたクマができ、せっかくコンディションの良かったお肌は多少むくんでいる。寝不足のせいか、コンタクトもなかなか入らず、仕方なく装備した眼鏡で、残念な顔をなんとか隠し、学校へとやってきた。
今日は、校外学習で、バスと船に乗り、巌流島へ行くことになっている。
巌流島で、班ごとに昼食のバーベキューを楽しんだ後は、自由散策の時間。先日忍ばせた手紙には、時間の指定を書かなかったと後で悔やんだが、スケジュール的に、この時間に指定先である展望広場へ来てくれるだろうと思っている。
呼び出した相手である、宮本武とは、これまで接点らしい接点はなかったが、ここ数日、なんとなく視線を向けられていたし、幾度かは確実に視線が交わったので、自身が思いの丈をぶつけても、色よい返事がもらえるのではなかろうかと、確証もないのに、何処か小夜子は強気でいる。
しかし、やはり、これまでに接点がないというのは、多少心許ないので、ここは「お友達から始めましょう」と言うべきだろうかと、少なからず尻込みする気持ちもある。
だが、成績優秀なうえにスポーツ万能。おまけに、爽やかさはピカイチという彼のことだ。いつ突然に、彼女という存在が現れてもおかしくない。そんなことになってしまっては、面倒なことこの上ない。やはりここは、宮本武との初の接触で必ず、自身の魅力を余すところなく伝えて、武の彼女の座にふさわしいということを思い知らせてやるのだと、小夜子は意気込んでいた。
しかし、それは、バスに乗り込むまでだった。
巌流島に着き、船から降り立った小夜子は、ふらふらとして、顔面蒼白の状態だった。
「大丈夫ですか? 副会長」
「……もう、だめかもしれないです」
メガネを外し、苦しそうに顔を歪める小夜子の背中を、細川が心配そうにさする。
少し離れた場所では、武と水野が同じような状態になっているのを、チラリと視界に映し、細川は、呆れたように声を掛ける。
「そんなんで、本当に大丈夫ですか? 今日が、宮本くんとの対決の日なんですよね?」
「うん。……えっ? 対決? 対決って、何? というか、何故、宮本くんと約束がある事を知っているの?」
青い顔を訝しそうに顰めて、小夜子は細川と目を合わす。しかし細川は、明後日の方を見て、受け流した。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~
味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」
春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。
そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか)
今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。
「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」
そう言う俺に、
「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」
と笑顔で言い返して来た。
「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」
「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」
パタン
俺は玄関の扉を閉めた。
すると直ぐに
バンバンバン!!!!
と扉を叩く音
『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』
そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。
はぁ……勘弁してくれよ……
近所の人に誤解されるだろ……
俺はため息をつきながら玄関を開ける。
そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。
腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる