7 / 9
決戦当日の武
しおりを挟む
いよいよ決戦当日。
武のコンディションは、最悪だった。それもそうだろう。気持ちが昂りすぎて、前夜に夜更かしをしてしまったのだから。
目の下にしっかりとしたクマができていたが、それは、何とか伊達メガネで隠し、いつものように爽やかスマイルで学校へとやってきた。
今日は、合併後初めての行事。校外学習で、バスと船に乗り、巌流島へ行くことになっている。
巌流島で、班ごとに昼食のバーベキューを楽しんだ後は、自由散策の時間。先日受け取った手紙には、時間の指定はなかったが、タイムスケジュール的に、この時間に指定先である展望広場へ行くことになる。
呼び出し人である、佐々木小夜子とは、これまで接点らしい接点はなかったのだが、ここ数日、注意深く彼女を観察し、水野からの情報を得て、それなりに、ライバルとなる小夜子の人物像は把握していた。
成績優秀、スポーツ万能、尚且つ、生徒会活動に熱心に取り組んでいるという話は、本当のようで、先生たちからは厚い信頼を得ているようだ。生徒たちには、少々煙たがられているような感じもあるが、学校を率いる生徒会役員としては、それくらいでちょうど良いだろう。
となると、心象度合いとしては、学校における新参者の武の方が、少々分が悪いように思われる。しかしそこは、前校から引き継がれた内申書と、新たな学校生活を送ってきたこの短い時間でも十分にカバーができるのではないかというほどに、品行方正な態度で過ごしているので、勝算は、十分に見込めるだろう。
しかし、やはり、ライバルはいないに越したことはない。佐々木小夜子との初の直接対決で必ず、彼女よりも自身の方が、生徒会長の座にふさわしいということを思い知らせてやるのだと、武は意気込んでいた。
しかし、それは、バスに乗り込むまでだった。
巌流島に着き、船から降り立った武は、ふらふらとして、顔面蒼白の状態だった。
「おいおい。大丈夫か、宮本?」
「いや……もう、だめかもしれない」
伊達メガネを外し、苦しそうに顔を歪める武の背中を、水野が心配そうにさする。
「お前、乗り物弱いもんな。酔い止めちゃんと飲んできたのかよ?」
「……うん。……でも、昨日夜更かしをしたから、たぶんそのせい……」
武の弱々しい声に、大きくため息を吐いた水野は、呆れたように言う。
「お前、そんなんで本当に大丈夫かよ? 今日が、佐々木小夜子との対決なんだぞ」
「解ってる。それまでには、気分も治る……はず」
武のコンディションは、最悪だった。それもそうだろう。気持ちが昂りすぎて、前夜に夜更かしをしてしまったのだから。
目の下にしっかりとしたクマができていたが、それは、何とか伊達メガネで隠し、いつものように爽やかスマイルで学校へとやってきた。
今日は、合併後初めての行事。校外学習で、バスと船に乗り、巌流島へ行くことになっている。
巌流島で、班ごとに昼食のバーベキューを楽しんだ後は、自由散策の時間。先日受け取った手紙には、時間の指定はなかったが、タイムスケジュール的に、この時間に指定先である展望広場へ行くことになる。
呼び出し人である、佐々木小夜子とは、これまで接点らしい接点はなかったのだが、ここ数日、注意深く彼女を観察し、水野からの情報を得て、それなりに、ライバルとなる小夜子の人物像は把握していた。
成績優秀、スポーツ万能、尚且つ、生徒会活動に熱心に取り組んでいるという話は、本当のようで、先生たちからは厚い信頼を得ているようだ。生徒たちには、少々煙たがられているような感じもあるが、学校を率いる生徒会役員としては、それくらいでちょうど良いだろう。
となると、心象度合いとしては、学校における新参者の武の方が、少々分が悪いように思われる。しかしそこは、前校から引き継がれた内申書と、新たな学校生活を送ってきたこの短い時間でも十分にカバーができるのではないかというほどに、品行方正な態度で過ごしているので、勝算は、十分に見込めるだろう。
しかし、やはり、ライバルはいないに越したことはない。佐々木小夜子との初の直接対決で必ず、彼女よりも自身の方が、生徒会長の座にふさわしいということを思い知らせてやるのだと、武は意気込んでいた。
しかし、それは、バスに乗り込むまでだった。
巌流島に着き、船から降り立った武は、ふらふらとして、顔面蒼白の状態だった。
「おいおい。大丈夫か、宮本?」
「いや……もう、だめかもしれない」
伊達メガネを外し、苦しそうに顔を歪める武の背中を、水野が心配そうにさする。
「お前、乗り物弱いもんな。酔い止めちゃんと飲んできたのかよ?」
「……うん。……でも、昨日夜更かしをしたから、たぶんそのせい……」
武の弱々しい声に、大きくため息を吐いた水野は、呆れたように言う。
「お前、そんなんで本当に大丈夫かよ? 今日が、佐々木小夜子との対決なんだぞ」
「解ってる。それまでには、気分も治る……はず」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる