スターチスを届けて

田古みゆう

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ラッキースポットで合言葉を 〜スターチスを届けて 番外編〜

彼女の朝 p.2

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 時刻は8時。出勤時間である。先ほどお天気お姉さんに宣言した通り、彼女は買ったばかりの白いパンプスを履き、玄関を出る。

 駅までは10分程の道のりだ。道すがら彼女は、数分前に聞いた占いを思い出していた。

(丘なんてそうそう行ける場所じゃないのに……)

 そこで、彼女はふと足を止める。

 そういえば、『丘の上』というフレーズを、今朝は占い意外でも耳にしている。そう、占いの前に特集されていたあの公園だ。確か、『丘の上テラス』がイチオシだとキャスターが言っていた。

(これは、偶然だろうか? それとも、テレビ制作の都合上、意図してのことだろうか?)

 たぶん後者の方が、圧倒的に確率は高いだろう。それでも、彼女はある可能性を考え始めていた。

(もしも、占いが当たるとしたら?)

 そんなわけはないと思いながらも、頭の中では先ほどのアナウンサーの声が、繰り返しこだましている。

「ラッキースポットは、丘の上」

 頭の中で繰り返されるその言葉を、呟いてみる。すると、口からこぼれた言葉はみるみる大きくなり、彼女を動かした。

 彼女はいつも会社のすぐ近くにあるカフェに寄り、朝のコーヒータイムをゆっくりと取ってから出勤している。しかし、その時間を削れば、寄り道をしても始業時間には十分に間に合う。そう決断すると居てもたってもいられなくなり、彼女はいつもとは違う路地へ足を向け、公園に向かって歩き出した。
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