スターチスを届けて

田古みゆう

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15.3月25日

15.3月25日 p.5

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 優は、興奮と心配が入り混じったような顔で、胸の内をポロリとこぼした。そんな優に浩志はいつになく真面目に相槌を打つ。

「そうだな。せつな……あいつ、頑張ってるもんな。蒼井には、あいつの事なんて見えないのに……。それでも、頑張ってるんだ。せっかくパーティーするんだから、せつなにも、楽しんで貰いたいよな」

 浩志の言葉に、優は、大きく肯いた。

「それで、大体のスケジュールは、もう決まったのか?」

 浩志とせつなは裏方に徹し、パーティーの仕切りは、優を中心に、彼女の所属する部に完全に任せているので、浩志は、どのような感じになるのか、全く知らなかった。

「うん。それは大体ね。体育館を借りられたのは良かったよね。結構な人数、入れられるし。教室でやるよりも盛り上がるわ」
「しかし、よく借りられたよな。4月1日って、確か日曜だろ? 運動部とか使いそうじゃん」
「もともと、うちの部が使う予定入れてただけで、他の部の予定はなかったのよ」
「ふ~ん。それで? 会場も決まったし、スケジュールも決まったんだろ? 後は、何が問題なんだよ?」
「うん……あのさ、せつなさんのことなんだけどね」

 浩志が不思議そうに問うと、優は眉尻を少し下げた。

「学校でパーティー出来る事になって、喜んでくれたけど、本当は、パーティーをする事が目的じゃなくて、せつなさんは、蒼井ちゃんにお祝いが言いたいんじゃないのかな?」

 優の真剣な声に、浩志は腕組みをしながら唸る。

「う~ん。まぁ、本心はそうかもな。でも、事情を知ったこいちゃんにも、せつなの姿は見えなかったんだから、蒼井も難しいんじゃないかって言う話だっただろ」

 諭すような浩志の言葉に、優は、小さく肯いたが、その顔は、不満そうだった。

「そうなんだよね。やっぱり見えないってなったら、せっかくの楽しい気分が台無しになっちゃうし、せつなさんにとって、危ない橋は渡らない方が良いとは思うんだけど……でも……」

 優は、悔しそうに唇を噛む。それから、意を決したように、口を開いた。

「あのね。当日、スケジュールの中で、『生徒から先生へ一言』っていう、時間があるの」
「なんだそれ?」
「う~ん。なんでもいいのよ。多分、みんな、結婚おめでとうとか、そんな当たり障りのない感じになると思うけど」
「うん?」
「その時、今作ってる造花を一本ずつ、蒼井ちゃんへ渡して貰おうと思ってるの」
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