スターチスを届けて

田古みゆう

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14.3月21日

14.3月21日  p.1

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 浩志は、せつなと向き合って1年2組の教室で、例の折り紙の花を量産していた。

 相変わらず、彼は緑の折り紙で茎の部分を担当している。そして、新たに、緑の折り紙から葉を切り抜く役目も与えられた。一度せつなを手伝って花の部分も作ってみたのだが、時間がかかるうえに、仕上がり具合が良くないと、少女から、早々に手伝いを遠慮されたのだった。

 優はまだ来ていなかったが、午前中の部活を終えて、そろそろ来る頃だろう。

 浩志が本日のノルマである10本の茎と20枚の葉を作り終えた時、待ち合わせ場所に優が姿を見せた。

「お待たせ」

 急いできたのか、優はポニーテールを元気に揺らして、ジャージ姿でやってきた。

「遅ぇよ」

 浩志の言葉に、優は顔の前で小さく手を合わせる。

「ごめん、ごめん。ちょっと部活の子達と話し込んじゃってさ。せつなさんもごめんね」
「ううん。私は、全然構わないよ」

 優は、浩志の隣の席に荷物を置くと、彼同様椅子の向きをせつなのいる方へ向けて座り、机の上に出来上がりつつある紙の作品たちへ手を伸ばす。彼女の担当は、せつなの作った花弁と、浩志の作った葉と茎を合わせて、一輪の花に完成させる事だった。

「ねぇ? それで小石川先生どうだった?」

 作業に取り掛かりつつ、優は、早速、今日の活動報告を求めてきた。浩志とせつなは互いに顔を見合わせた後、せつなは少し寂しそうに俯き、それを気遣って、浩志も口籠る。

 そんな2人の様子から、なんとなく良い結果が得られなかったのだと察することができた優だったが、それでも、状況を把握して、次の対策を練るためには、求めていた結果に成らずとも口に出さざるを得なかった。

「やっぱり、ダメだって?」
「……ああ、……いや、えっと、それはまだ分からない」

 浩志はチラチラとせつなの方へ視線を送りながら、曖昧な返事を優にする。

「どういう事?」
「生徒への個人的な学校施設の貸出は本来やってないんだって」
「やっぱりそうよね。そう簡単には、いかないかぁ……」

 期待した結果にはならないだろうと予想はしていても、やはり、優も浩志の口から出た結果に落胆の色を見せる。浩志は、相変わらず、せつなの顔色を伺うことはすれど、優の落胆までは読み取れていないのか、自身の活動報告を続けた。

「俺知らなかったけど、蒼井って、お前の部活の顧問なんだってな」

 浩志が呑気に、そう口にすると、それに優は素早く反応した。
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