スターチスを届けて

田古みゆう

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10.3月19日 (1)

10.3月19日 (1) p.3

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 そんな浩志の様子に、優は、更に不思議そうにしつつ、言葉を繋げる。

「せつなさんのことを聞いた後輩の中に、1年2組の子はいなかったから、もしかしたら、本当にせつなさんのことを知らないだけなのかも知れないけど……」
「けど?」
「確認した子の誰もが知らないって言うの」
「う~ん。まぁ、あいつ、大人しそうだからな。スポーツやってる様な、お前みたいなチャキチャキしたタイプとは関わってないんじゃないか?」

 優の言葉に、浩志は、思ったままを口にする。そんな彼の言葉に、彼女は思わず眉を上げる。

「チャキチャキって何よ?」
「ん? チャキチャキはチャキチャキだよ。よく喋るっつーか、よく動くっつーか」
「はぁ? 何? あんた、私のこと、けなしてるわけ?」

 突然、優から立ち上った怒りのオーラに気が付いた浩志は、慌てて彼女から半歩距離を取る。

「ちげーよ! 俺は、お前らと、せつなじゃタイプが違うって……」

 浩志の瞬時の訂正に、優は、フンと鼻を鳴らし、ツンと顔を背ける。

 そんな優の態度に、浩志は、彼女には聞かれない様に、小さくため息を吐く。

 思春期女子の瞬間湯沸かし器の様な変化に、先日のことも思い出され、ついついめんどくさいと思ってしまう。

 しかし、このままでは、また話が中途半端に終わってしまうので、何とか話を先へ進めようと、浩志は優に声をかける。

「俺は、ただ、タイプが違うから、仲良くしてないんじゃないかって事が言いたかっただけ。お前を貶してるとかじゃないから、機嫌直せって」

 優は、浩志をジロリとひと睨みしてから、まるで怒りを吐き出すかの様に、フゥと大きく、浩志に聞こえるように息を吐き出した。

「まぁ、いいわ。せつなさんがどんな子なのか私は知らないから、タイプ云々はこの際、置いておいておくとして……」

 まだ怒りを内に秘めているのか、優の声のトーンは幾分低かったが、それでも、彼女が口を開いた事で、浩志はほっと胸を撫で下ろした。

「私が言いたいのは、仲良くないから、知らないって事はないんじゃないかなって事」
「ん? どう言う事だ?」

 優の言わんとしている事が、すぐには分からず浩志は聞き返した。

「確かに、仲良くなかったらその人のことはよく分からないけれど、それでも同じ学年なら、例えば、廊下で見かけるとか、体育とかの合同授業とか、友達の友達とか、誰かしら、何かしらの接点はあるもんじゃない?」
「まぁ、そうかもな……」
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