スターチスを届けて

田古みゆう

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9.3月17日

9.3月17日 p.4

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「そもそも、蒼井に妹いるのかよ?」
「……えっ? あ~、どうだろう?」

 浩志は、はてと首を傾げる彼女の姿に、がっくりと肩を落とす。

 しかし、そんな事は、本人に確認してみればわかる事なのだからと、彼は気持ちを切り替えた。

「まぁさ、蒼井の妹かどうかは、せつな本人に聞けばわかる事だしな。月曜にでも聞いてみるか」
「私も一緒に行く!」

 彼の言葉に、優は、勢いよくビシッと手を挙げながら、浩志に詰め寄る。

「お、おう」

 浩志は、彼女の勢いに押されて、半歩、体を退け反らせながらも、なんとか反応した。

「それは、別に良いけど、お前、昨日は、あんなにビビってたのに、なんでそんなに、前のめりなんだよ?」

 優の少々強引にも思える姿勢に、彼は、呆れたように疑問を口にする。

 夕陽に照らされ、頬を赤く染めた優は、彼の言葉に、少し鼻息を荒くしつつ、小さく口をパクパクとする。声にならない声を数瞬吐き出していたが、やがて、声を絞り出した。

「……だって、嫌なんだもん」

 優は、鉄棒を握りしめ、項垂れる。そんな優に、彼は、無機質に問いかける。

「何が?」
「……」

 自分の胸の内を言葉に出来ず、押し黙ってしまった彼女を見ながら、彼は、面倒臭そうに大きく息を吐き出した。

「ったく、なんで女は、そうやってすぐに黙るんだよ」

 彼のこの不用意な言葉に、優は、ピクリと肩を震わせて反応すると、酷く傷ついたように顔を歪め、彼を睨む。

「……一緒にしないでっ!!」

 優は、瞬時に湧き上がった怒りを抑えることが出来ずに、剥き出しのまま、彼にぶつけると、怒りの勢いそのままに、公園の出口へと駆けて行ってしまった。

 浩志は、1人公園に残され、しばらく呆然としたのちに、今日何度目かになるため息を吐いた。

「ったく。なんだよあれ。誰と一緒にするなって……」

 浩志は、ぶつぶつと不平を溢しつつ、1人自宅へと戻って行った。
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