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9.3月17日
9.3月17日 p.3
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「昨日、成瀬が待ち合わせをしていた子の名前は、蒼井せつなさんよね?」
「ああ。別に、待ち合わせってわけじゃないけど……まぁ、そう」
「その子、お姉さんの結婚式に花を送りたくて、今、準備しているのよね?」
「う~ん。結婚式に送りたいのかどうかは知らないけど、結婚のお祝いにするつもりみたいだぞ」
優の質問の意図が全く読み取れないまま、浩志は、彼女から投げられる質問に淡々と答える。
「成瀬はさ、蒼井さんのお姉さんを知ってるの?」
「ん? いいや、全く」
「名前も知らない?」
「ああ」
「そう……」
そう言うと優は、思案顔で、浩志の顔をしばらくの間見つめていたが、何かを決めたかのように、口元を一度キュッと結ぶと、口を開いた。
「あのね。確証はないの。でも、もしかしたらと思って……」
「だから、何がだよ?」
「……あの……ね、蒼井さんって、もしかして、蒼井ちゃんの妹さんなんじゃ……?」
「えっ?」
浩志は、彼女の言葉に驚いたように鉄棒の上で目を見開く。それから、彼はポカンと口を開けたまま、中空を見つめていたが、やがて、勢いよく、鉄棒から飛び降りると、手をパンパンと払いながら、いかにも訝しむように、優を見た。
「蒼井ちゃんって、社会科の蒼井のことか?」
「うん。そう。蒼井永香先生」
浩志の問いに、優は真剣な表情で答える。
「それ、誰かに聞いたのか?」
「ううん。私が勝手にそうかなって思っただけ」
「その根拠は?」
「蒼井ちゃん、来週の日曜日が、結婚式なんだって! さっき、先輩に聞いたの。ほら、前に話したことあるでしょ? 蒼井ちゃんが、もうすぐ結婚するって。覚えてない?」
「ああ。そう言えば、そんな事言ってたな。それで、他には?」
浩志は、1ヶ月ほど前に優から聞いたことを思い返しつつ、腕を組みながら、彼女に向けて、先を促すように顎をしゃくる。しかし、優は、首を振り、視線を足下へと落とす。
「……それだけ……」
「は? それだけ?」
「うん。それだけ」
「お前なぁ~。それだけって、蒼井が、もうすぐ結婚するって事だけが根拠なのか?」
「……うん」
浩志は、呆れたようにため息を吐く。そんな彼に、優は唇を尖らせながら、言い募る。
「でも、だって。そんな気がしたんだもん」
「共通してるのなんて、蒼井って名前と、もうすぐ結婚ってことだけだろ。そんなの根拠として弱すぎるだろ……」
「でも……そんな気がして………私、成瀬に、早く知らせなきゃって思って……」
「ああ。別に、待ち合わせってわけじゃないけど……まぁ、そう」
「その子、お姉さんの結婚式に花を送りたくて、今、準備しているのよね?」
「う~ん。結婚式に送りたいのかどうかは知らないけど、結婚のお祝いにするつもりみたいだぞ」
優の質問の意図が全く読み取れないまま、浩志は、彼女から投げられる質問に淡々と答える。
「成瀬はさ、蒼井さんのお姉さんを知ってるの?」
「ん? いいや、全く」
「名前も知らない?」
「ああ」
「そう……」
そう言うと優は、思案顔で、浩志の顔をしばらくの間見つめていたが、何かを決めたかのように、口元を一度キュッと結ぶと、口を開いた。
「あのね。確証はないの。でも、もしかしたらと思って……」
「だから、何がだよ?」
「……あの……ね、蒼井さんって、もしかして、蒼井ちゃんの妹さんなんじゃ……?」
「えっ?」
浩志は、彼女の言葉に驚いたように鉄棒の上で目を見開く。それから、彼はポカンと口を開けたまま、中空を見つめていたが、やがて、勢いよく、鉄棒から飛び降りると、手をパンパンと払いながら、いかにも訝しむように、優を見た。
「蒼井ちゃんって、社会科の蒼井のことか?」
「うん。そう。蒼井永香先生」
浩志の問いに、優は真剣な表情で答える。
「それ、誰かに聞いたのか?」
「ううん。私が勝手にそうかなって思っただけ」
「その根拠は?」
「蒼井ちゃん、来週の日曜日が、結婚式なんだって! さっき、先輩に聞いたの。ほら、前に話したことあるでしょ? 蒼井ちゃんが、もうすぐ結婚するって。覚えてない?」
「ああ。そう言えば、そんな事言ってたな。それで、他には?」
浩志は、1ヶ月ほど前に優から聞いたことを思い返しつつ、腕を組みながら、彼女に向けて、先を促すように顎をしゃくる。しかし、優は、首を振り、視線を足下へと落とす。
「……それだけ……」
「は? それだけ?」
「うん。それだけ」
「お前なぁ~。それだけって、蒼井が、もうすぐ結婚するって事だけが根拠なのか?」
「……うん」
浩志は、呆れたようにため息を吐く。そんな彼に、優は唇を尖らせながら、言い募る。
「でも、だって。そんな気がしたんだもん」
「共通してるのなんて、蒼井って名前と、もうすぐ結婚ってことだけだろ。そんなの根拠として弱すぎるだろ……」
「でも……そんな気がして………私、成瀬に、早く知らせなきゃって思って……」
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