11 / 115
4.2月27日
2月27日 p.2
しおりを挟む
「もうすぐって言ってもなぁ。もう少し暖かくなってからってことだろ。どう考えたって」
せつなの言葉に浩志はため息を吐く。どうも、言動の子供っぽいせつなと接していると小さな苛つきを覚えるのだが、だからといって、一人放っておくこともできないような気がして、つい気にかけてしまう。
「なぁ。その花は、本当にここに咲くのか? 別の場所なんじゃないのか?」
「絶対、ここだもん。お姉ちゃんと一緒に、ここにタネ撒きしたもん」
「で、もうすぐ咲くのか?」
「うん」
せつなは絶対と言い切るが、どう見てもまだ何もない。殺風景な花壇を見て、浩志は頭を掻く。探し物をしているのであれば手伝おうと思って声を掛けたのだが、花の芽吹きを待っていると言われては、浩志にはどうすることも出来ない。なす術の無い浩志は、せつなを残して帰ろうと立ち上がる。
その時、背後から声を掛けられた。振り返ると、学校指定のジャージに軍手とジョウロを手にした女子生徒が、不思議そうにこちらの様子を伺っていた。着用しているジャージの色から、高等部の生徒だとわかる。
彼らの学校は中高一貫校である。高等部の校舎が二棟、中等部の校舎が一棟。そして、それぞれを区切るようにして、浩志達が今いる中庭が作られていた。
「その花壇がどうかした?」
「あ……っと……いえ」
突然の上級生の出現に浩志が慌てふためいていると、上級生は浩志の足元にいるせつなに目を留めた。
「あら、あなた……」
上級生はせつなに対して何か言いたげに口を開いたが、結局、何も言わずに口を閉じる。そして、浩志へ視線を向けると優しげな笑みを浮かべ再び尋ねてきた。
「そこの花壇が気になるの?」
浩志はせつなをチラリと見た。せつなは、上級生の存在など全く意に介さないかのように花壇を見続けている。せつなと話していても埒が明かないので、何か花についての手掛かりが掴めればと思い、浩志は口を開く。
「えっと……、先輩? は、ここの手入れをする人ですか?」
上級生の格好からそうだろうという確信はあったが、念のために確認をしてみる。
「ええ。私、園芸部なの。ここの管理は私がしているけど?」
「あの、えっと……この花壇って、何か育ててます?」
浩志はせつなが執着している花壇を指し上級生の答えを待つ。そんな浩志に上級生は楽しそうに眉尻を下げた。
「なになに? もしかして、園芸に興味あったりする? 何か育てたい感じ?」
「ああ、いえ、そうじゃなくて……」
せつなの言葉に浩志はため息を吐く。どうも、言動の子供っぽいせつなと接していると小さな苛つきを覚えるのだが、だからといって、一人放っておくこともできないような気がして、つい気にかけてしまう。
「なぁ。その花は、本当にここに咲くのか? 別の場所なんじゃないのか?」
「絶対、ここだもん。お姉ちゃんと一緒に、ここにタネ撒きしたもん」
「で、もうすぐ咲くのか?」
「うん」
せつなは絶対と言い切るが、どう見てもまだ何もない。殺風景な花壇を見て、浩志は頭を掻く。探し物をしているのであれば手伝おうと思って声を掛けたのだが、花の芽吹きを待っていると言われては、浩志にはどうすることも出来ない。なす術の無い浩志は、せつなを残して帰ろうと立ち上がる。
その時、背後から声を掛けられた。振り返ると、学校指定のジャージに軍手とジョウロを手にした女子生徒が、不思議そうにこちらの様子を伺っていた。着用しているジャージの色から、高等部の生徒だとわかる。
彼らの学校は中高一貫校である。高等部の校舎が二棟、中等部の校舎が一棟。そして、それぞれを区切るようにして、浩志達が今いる中庭が作られていた。
「その花壇がどうかした?」
「あ……っと……いえ」
突然の上級生の出現に浩志が慌てふためいていると、上級生は浩志の足元にいるせつなに目を留めた。
「あら、あなた……」
上級生はせつなに対して何か言いたげに口を開いたが、結局、何も言わずに口を閉じる。そして、浩志へ視線を向けると優しげな笑みを浮かべ再び尋ねてきた。
「そこの花壇が気になるの?」
浩志はせつなをチラリと見た。せつなは、上級生の存在など全く意に介さないかのように花壇を見続けている。せつなと話していても埒が明かないので、何か花についての手掛かりが掴めればと思い、浩志は口を開く。
「えっと……、先輩? は、ここの手入れをする人ですか?」
上級生の格好からそうだろうという確信はあったが、念のために確認をしてみる。
「ええ。私、園芸部なの。ここの管理は私がしているけど?」
「あの、えっと……この花壇って、何か育ててます?」
浩志はせつなが執着している花壇を指し上級生の答えを待つ。そんな浩志に上級生は楽しそうに眉尻を下げた。
「なになに? もしかして、園芸に興味あったりする? 何か育てたい感じ?」
「ああ、いえ、そうじゃなくて……」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる