記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ

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結婚生活

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 パチっと目覚めた私。

 やってしまった…!
 一人呑みのワインが思った以上に美味しすぎて、飲み過ぎた。

 ん…?そういえば、酔っ払ってご機嫌の時に、将軍閣下が来て………、初夜をしてしまったんだー!

 酔っていたから記憶が曖昧だけど、ベッドの中の将軍閣下はヘタレじゃなかった気がする…。
 うっ…。恥ずかしい。しかも、お約束に裸だし…。

「……ソフィア嬢?起きてるか?」

 すぐ背後から声が聞こえる。…起きていたのか。

「……はい。」

 恥ずかしいが、寝返りをして振り向く。

「体は大丈夫か?冷えたりしてないか?」

 そんな申し訳なさそうに聞かなくても…。
 ただ、この人の行為もあっさりしていなかったよね。体が怠いのは、飲み過ぎただけではないな。

「大丈夫ですわ。でも、今日はのんびり過ごそうかと思っています。将軍閣下はお仕事は?」

「私の方は、陛下がしばらく休んでいいと言ってくれたから、数日間休みだ。せっかくだから、二人でのんびり過ごせたらいいな。」

「そうでしたか。国王陛下は、部下思いのお優しい方なのですね。」

「昨夜が結婚初夜だと知りながら、どうでもいい内容の書簡を急ぎだと言って、あの時間に届けさせる悪魔のような人間だ。でも根はいい人だとは思う。」

 えっ?褒めてるの、ディスってるの…?仲が良いから言えるのだろうけど。

「昨夜は、陛下からのどうでもいい使者が来たせいで君を待たせてしまったな…。すまなかった。」

「いえ。私もワインを飲み過ぎてしまって、ちょっと酔ってしまって、お恥ずかしい姿を見せてしまいましたわね。申し訳ありませんでした。」

「大丈夫だ。だが、邸で飲むのは構わないと思うが、出先では飲み過ぎないようにして欲しい。」

 ですよねー。将軍閣下の妻が飲んだくれなんてねぇ。

「はい。恥を晒したくはないので、気をつけますわ。」

「酔った君を、他の男に見せるのは危険だと判断したんだ。悪いな…。私でよければ、飲みたい時に付き合うようにするから。」

 私、酔っ払って、そんなにひどく絡んだのかな?
 まぁ、晩酌に付き合ってくれるってことか。

「はい。ありがとうございます。」

「ソフィア嬢…。」

「はい?」

「少し抱きしめたいがいいか?」

 素面でそんなことを言われると恥ずかしいな…

「……はい。」

 ギュッと抱きしめられ、ドキドキしてしまった。





 将軍閣下との結婚生活は、毎日が穏やかで何の不満もなかった。こんな生活を幸せだと言うのかもしれない。
 仕事は忙しそうだが、程よい距離感でいれるから、亭主元気で留守がいいと思っている。

 結婚後、将軍閣下と社交は最低限でよいと約束していたのだが、お母様はそれを許してはくれなかった。
 貴族として、私の娘として、社交はきちんとやっていないと絶対ダメだと言われ、お茶会や夜会は出る羽目になっていた。ムカつく夫人や令嬢は沢山いたが、気の合う友人もできたから良かった。
 侯爵夫人としての仕事も、お母様に細かく指導され、それなりに忙しい日々を送っている。もう戻れないが、治療師として働いて自由に過ごしていた日々を思い出して懐かしく感じたことがあった。

 そしてヘタレだと思っていた将軍閣下は、怒ると凄まじく怖いということが判明した。
 ある休日に2人で街歩きをしていた時だった。ありがちだが、ガラの悪い傭兵みたいな人達に絡まれた時があったのだが…。
 将軍閣下は一瞬でその男達を倒してしまったのだ。少し遅れて所轄の騎士団員達が駆けつけると、街をきちんと管理しろと怒り狂う姿が恐ろしかった。普段は優男なだけに、あまりの変貌ぶりにビビる私。

「ソフィア、もう大丈夫だ。騎士団が治安維持のために、今後はしっかり巡回してくれるみたいだからな。でも心配だから、出掛けるのは私と一緒に行ける時にしよう。」

 いやアンタが怖かったんだけど…、とは言えなかった。

「…そ、そうですわね。旦那様が一緒なら安心ですわ。」

「そんなに怯えて…。大丈夫か?ほら、おいで。」

 私がこんな見た目だから、怯えたように見えるのかもしれないが…。実は怯えたのではなく、アンタが怖すぎて引いただけなのですけど。

 そんな私の気持ちに気付かない将軍閣下は、人目を憚らず抱きしめてくる。周りの人に見られて恥ずかしいからやめて欲しい。
 この人も変わったよね。前はこんなことはしなかったのに。将軍閣下なりの愛情表現なのだと思うことにした。


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