記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ

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将軍閣下の部下

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 クラーク侯爵家から馬車で5分程の場所に、新居を購入した。
 没落した伯爵家の邸を、私とお母様好みにリフォームして、料理が好きな私専用のキッチン付きにした邸だ。しかも、お父様とお母様専用の部屋まである。将軍閣下には申し訳ないような気もしたが、両親が安心出来るならいいと言ってくれたのだ。
 自分の城が嬉しくなった私は、先に1人で住むことにした。
 ああ、最高!自分の家は最高!

 引っ越した当日は、お父様とお母様も泊まりに来た。あの感じだと、またすぐに泊まりに来そうだね…。


 そして今日は、差し入れを作って、王宮内の将軍閣下の執務室に向かっているところだ。
 料理をするのが好きだと話したら、すごく興味を持ってくれたので、差し入れを届けますかと聞くと、恥ずかしそうに『頼めるか?』と言ってくれたからだ。
 普段どんな風に仕事をしているのか気になるから、ちょっと職場見学を兼ねて行ってこよう。一応は亭主になる人だからね。

 サンドイッチと、塩唐揚げ風のチキンを作り、仲良しメイドのユーリを連れて王宮へ行く。
 王宮内は広いので、執務室の場所を聞いて向かっていると、後ろから文官風の令嬢に話しかけられる。

「マーティン将軍閣下の執務室に行かれるとお聞きしました。私は将軍閣下の執務室で仕事をさせて頂いているイザベラ・ウォーカーと申します。よろしければ、ご案内致しましょうか?」

 将軍閣下の部下かな?文官だけあって、知的な雰囲気の令嬢だ。礼儀正しくて親切な人だね。

「感謝致しますわ。私はソフィア・クラークと申します。どうぞよろしくお願い致します。」

「…クラーク侯爵令嬢ですか?」

 ん?何となく引っかかる反応だ…。

「そうですわ。」

「マーティン将軍閣下の婚約者の…?」

「ええ。」

 なにー?その反応。気になるぅ!

「…そうでしたか。こちらでございます。」

 ウォーカーさんに案内され歩いて行く私達。確か男爵家でそんな家門があったよね…。

「あの…。」

 歩きながら、ウォーカーさんが話しかけてくる。

「はい?」

「クラーク侯爵令嬢はお体が弱いとお聞きしました。」

 何が言いたいのか?

「そんな時期もありましたわね。」

「私、将軍閣下の部下として、長い時間を共有していましたの。将軍閣下のことなら何でも知っていますわ。
 クラーク侯爵令嬢はお体に心配があるそうですが、出産に不安があるならば、私が第二夫人になって、出産は私が引き受けさせて頂くことも出来ますわ。よろしければご検討下さいませ。」

 ほぉー。わざわざ人が少ない廊下でそんな話をするなんて。
 見た目は知的で真面目そうに見えるのに、なかなかの令嬢じゃないの。私の気にしていることを、親切なワタクシが心配してあげてるみたいに言いやがって!
 
 ふふっ!せっかくだから、この令嬢を利用してやろうかしら?
 私はこの令嬢より、根性が悪い自信があるからね…。

「…そうですわね。私は体が弱くて、出産に耐えられる体なのかは分かりませんわね。
 お気遣いありがとうございます。」

 見た目通りの、か弱そうなソフィアさんらしい反応をしてあげた。
 私は見た!この令嬢がフッと一瞬勝ち誇った顔をしたところを。
 

 背後からは、仲良しメイドのユーリちゃんのものと思われる殺気を感じるが、もう少し我慢しててね。

 



 
 完結まであと少し。
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