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閑話 エドワーズ公爵 12

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 ソフィーが毒で倒れた。

 私は国王陛下主催の建国記念パーティーで、キャンベル公爵家が、ソフィーを陥れようとしているという情報を事前に掴んでいたのに…。

 キャンベル公爵令嬢が、毒入りワインをワザと飲んで、ソフィーに毒を盛られたように自作自演するという計画を知った私とソフィーの義兄のクラーク卿は、キャンベル公爵令嬢が毒入りワインを手に取った時に、取り押さえようと計画していた。
 しかし何も知らないソフィーは、何か危険を感じたのか、自分の目の前のグラスワインではなく、キャンベル公爵令嬢の前にあったグラスワインを手に取り、一瞬で飲み干してしまったらしい。

 グラスが割れる音と、苦しむ声がして駆けつけた時には、ソフィーは顔面蒼白で倒れていた。何度名前を呼んでも反応はなく、医師からは飲んだ毒の量が多すぎて、助かるのかは分からないと言われてしまう。

 ソフィーは私の人生の全てなのに…。絶望感に苛まれる。

「ソフィーはどうしてワインを飲んだのかしら?
 ロン、ソフィーにワインに気をつけるように言ってなかったの?」

 ソフィーの母のクラーク侯爵夫人がクラーク卿に尋ねる。

「ソフィーを不安にさせたくなくて、ワインの話はしていませんでした。
 私の手落ちです…。申し訳ありませんでした。」

 泣きながら謝るクラーク卿。
 いや。私こそソフィーを不安にさせない為に、余計なことは教えていなかった。

「侯爵夫人。私もソフィーを怖がらせなくないと考えて、ワインのことは伝えていませんでした。大変申し訳ありませんでした。大切なソフィーを守れずに、私は…。」

「…そうだったのね。」



 ソフィーは目覚めることなく、時間だけが過ぎていく。
 そんな時に、ソフィーの友人の治療師達が訪ねてきてくれた。ソフィーに治癒魔法をかけたいと言って。

「貴女達はソフィーの友人なのね。来てくれて嬉しいわ。」

 クラーク侯爵夫人は、ソフィーの友人達を快く迎えていた。

「ソフィア!早く元気になれるように、皆んなで会いに来たわよ。」

「私達がこれから交代で、ソフィアに治癒魔法をかけに来るからね。」

「目覚めたら、また皆んなで食事に行こう。」

 意識のないソフィーに話しかけ、治癒魔法をかける友人達。ソフィーは友人に恵まれていたようだ。



 裁判では、憎きキャンベル公爵家の取り潰しが決定した。
 昔から政敵に毒を盛ったり、暗殺者を送り込んだりと、王家の敵であった貴族派の筆頭のキャンベル公爵家。この家門が潰れたことは大きい。
 そして、ソフィーに直接手を下したキャンベル公爵令嬢は国外追放が決まる。
 陛下からは、公開処刑にするかと聞かれたが、今も毒で苦しむソフィーを見ていたら、あの女を楽に死なせようとは思えなかった。
 あの女には、国外追放された後に地獄に堕ちてもらおう。

 せっかくだから、キャンベル公爵家に恨みを持つ使用人でも雇おうと考え、人を探していたら、側近が面白い人物を見つけたと言う。
 あの悪女に歪んだ愛情を持つ、頭のおかしい男。誰にも愛されないあの女にピッタリだと考えた私は、国外追放後に、あの女の従者として雇う事に決めた。

 元キャンベル公爵と夫人、子息は、クラーク侯爵家で始末したいと言われたのでそちらは任せよう。

 クラーク侯爵家は、あの女が国外追放されたすぐ後に、元公爵達を拉致したようだ。時期が来たら消すらしい。

 あの女の方は、頭のおかしい男に保護された後、邸に監禁されているらしい。あの男からは、仕事の一環として、定期的に報告書を送ってもらうことになっている。

『リサ様は私を受け入れてくれました。2人だけの生活はとても幸せです。』

『リサ様は何度か躾をしたら、従順になりました。』

『クラーク侯爵家から、誕生日プレゼントが届きました。素晴らしいプレゼントにリサ様は涙を流していました。』

『最近のリサ様は人形のようです。』

 あの男に順調に壊されているようだ。


 しかし、ソフィーの方は目覚めることはなかった。

「ソフィー。君が目覚めるまで、ずっと側で待つから。」

「君が好きな薔薇を飾ろう。いい香りだろう?」

「ソフィーの声が聞きたい…。」

 来る日も来る日も、ソフィーに話しかける日々。


 そんな時、クラーク侯爵と夫人から、ソフィーと私の婚約解消の話がされるのであった。





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