記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ

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今更だけど謝罪

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  陛下とその護衛と従者達は部屋を出て行ってしまった。
 2人きりの方が話がしやすいだろうし、この男と2人きりになっても何もないから安心しろと言って。

 何もないかもしれないが、非常に気まずいことは確かだ。

「ソフィア嬢。謝罪をする機会を与えてくれたことに感謝する。」
 
 気まずそうに口を開く将軍閣下。
 ソフィアって名前を知っていたのか。顔を合わせたことはないけど、私の知らない所で名前で呼んでくれていたのかな?

「…いえ。気になさらず。」

 自分で顔が引き攣っているのが分かる。でも、こんな場で自然な笑顔を作れる人なんていないよね。

 すると将軍閣下は、私の所まで来て跪く。

「君が私の邸であんな扱いをされているとは知らずに、大変申し訳ないことをした。君宛てに何度も手紙を書いたのだが、まさかあのメイド長が手紙を隠していたなんて。
 私は君に嫌われていると思い込み、会いに行くことが出来なかった。
 不幸な結婚生活を送らせてしまったこと、君の命が狙われていたのに助けることが出来なかったこと、本当に申し訳なかった。」

 今更、涙は出てこなかった。

 やはりそのことより、毒殺されそうになりエドワーズ公爵様と婚約解消になったこととか、大公様との結婚どうしようかって悩みの方が、今の私にとって大きなことらしい。
 あんなに憎かったはずなのに。正直、今はどうでもいい。

「…謝罪を受け入れます。」

「………ありがとう。」

 ホッとした表情をする将軍閣下。もういいよね?今更、謝られたからと無理に仲良くする必要はないだろうし。

「将軍閣下、どうかお立ち下さいませ。」

「…ああ、すまない。」

 立ち上がった将軍閣下を見ると、やっぱりどこかで会ったことがあるような気がするが…、別にいいや。
 もう、謝罪を受け入れたのだし、陛下も許してくれるよね。

「お忙しいと聞いております。謝罪はもう大丈夫ですから、仕事にお戻りになられては?
 私もそろそろ失礼させて頂きたく思います。」

「……。」

 えっ?そんな傷付いたような顔しないで!被害者は私なはずなのに、誰か他の人に見られたら、私が悪者に見えちゃうじゃん。

「あの…、将軍閣下?」

「私を責めないのか?私は君にあんな酷いことをしたんだ。どうして、怒らないのだ?」

 はあ?今更何を言ってんの?

「もう、終わったことですから。」

「私はまだ終わってない。未だに後悔ばかりしている。君を大切にしたかったとか、戦争に行く前に君に会いに行けば良かったとか。」

 面倒くせぇ。今更何言ってんだよ。

「将軍閣下。後悔しているならば、次は本当に好きな方と結婚して、その方を大切にして下さいませ。
 政略結婚とはいえ、顔も分からない相手と急に結婚だなんて、お互いに不幸でしかありませんでしたよね。次は絶対に幸せな結婚をなさって下さい。」

 前向きな言葉を掛けたつもりだったのに…

「………。」

 将軍閣下の頬にツーっと涙が流れている。

 えー!泣いちゃったの?何で?私完全に悪者?



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