記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ

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見舞い

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「ソフィア、風邪で臥せっていると聞いて、心配で来てしまった。大丈夫か?」

 優秀なメイド達は、サッと髪を整え、薄く化粧をして、寝起きの酷い有様の私を、上手く誤魔化してくれた。
 そして私の部屋に大公様が入って来て、今に至る。

 未婚の女性の部屋に、普通なら入って来ないはずなのに…。
 まだきちんと結婚すると決まったわけでもないのに…。
 恐らく、臥せって起きれないと聞かされたから、部屋まで会いに行くと言いだし、身分が高すぎるお方ゆえ、使用人達では止められなかったのだろう。
 大公様も、見かけによらずグイグイ来るよね。
 
「わざわざ申し訳ありませんでした。まだ熱がありますが、寝ていれば治ると思います。それよりも、大公様にうつすとよくないので、あまり近くに寄らない方がよいかと…。」

 そう。大公様は、ベッド横にある椅子に腰掛けて、ベッドにいる私の手を握っている。

「私は大丈夫だ。それより……、この前、君に無理をさせてしまって、すまなかった。」

 ええ、無理しましたよ。グッタリでしたよ。
 ……仲良しメイド達の目が!ああ、恥ずかしい。

「た、大公様。何事も程々がよろしいかと。」

「…そうだな。気を付ける。だから、また2人で会いたい。嫌だなんて言わないでくれ。君に嫌われたら、私は生きていけない。」

 そんな必死な顔をしなくても。こっちが悪いみたいじゃないの。

「大公様、大袈裟ですわ。また元気になったら、どこかに誘って下さい。」

「…ソフィア!君が元気になったら、君が好きな所に行こう!約束だ。」

「ええ。…大公様。風邪がうつると公女様に申し訳ないので、そろそろ…。」

「ああ、長居はよくないな。今日は帰るよ。また明日会いに来るからな。
 ソフィア、愛してる。早く元気になるんだよ。」

 大公様は、私の額にキスをして帰って行った。


「「きゃー!」」

 メイド達が叫んでいる…。

 大公様は、綺麗なお花とオシャレなお菓子を沢山持って来てくれた。
 ドレスや宝石も沢山届けられていた。知ってはいたが、リッチなお方らしい。

 大公様は毎日お見舞いに来られた。忙しいだろうし、ただの風邪だから大丈夫だと言っているのに。
 正直、嬉しいけど、まだ申し訳ない気持ちの方が大きいような気がする。この先どうしよう…。

 ただ、色々ありすぎて、エドワーズ公爵様のことを思い出すことが、極端に減ってきているのは分かっている。



 風邪が良くなって来た頃だった。

 王都のお母様から手紙が届く。
 手紙には、色々話し合いたいことがあるから、一度王都に戻ってくるようにと書いてあった。

 恐らく、大公様とのことを聞かれるのだろう。とっくに大公様からの文が届いているはずだろうし。
 一度、お母様と話した方がいいよね。このことは、私が勝手に決められることではない。
 
 よし!王都に一度帰ろう。


「ソフィア。王都に帰っても、私のことを忘れないでくれ…。もし、忘れるようなことがあれば、強引に迎えに行くことになるからな。」

 大公様、優しいようで結構怖い人なのかな?

「申し訳ありません。一度、実家に戻るようにと命令ですので。」

「ソフィア!気をつけてね。また遊ぼう。」

「公女様、また遊んで下さいね。」


 2人に挨拶を済ませて、私は王都に旅立つことになった。

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