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閑話 大公アルバート・エヴァン 2
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国王陛下からの手紙に書いてあった、クラーク侯爵家の別荘にすぐに文を出す。
アンリを助けてくれたことへの感謝と、ぜひ我が別荘に招待したいということを書いて届けてもらうと、すぐにその機会は訪れる。
「殿下。クラーク侯爵令嬢がいらっしゃいました。応接室で待って頂いております。」
執事から、クラーク侯爵令嬢が来たことを告げられ、すぐに応接室に向かう。
応接室に入ると、そこには儚げな雰囲気の美しい令嬢がいた。
「アルバート・エヴァンだ。今日は突然呼び出して申し訳ない。」
「ソフィア・クラークと申します。本日は、ご招待ありがとうございます。」
見た目だけでなく、所作も美しい。さすが名門貴族の令嬢だ。挨拶も品がある。
すぐに、アンリを助けてくれたお礼をしたいことを伝えてみるが、お気持ちだけていいと言う。
あんなにすごい治癒魔法をしてくれたのだから、何でも言って欲しかったのだが。そのことを伝えると、少し考えた表情を見せる。
仕事柄、人の表情や態度から、何となく何を考えているのか分かるのだが、彼女からは欲というものが感じられない。
本当に善意でアンリを助けてくれたようだ。
その後、アンリもやって来て、3人で一緒に食事をするのだが…。
アンリが来てから、クラーク侯爵令嬢の視線はアンリに向かう。この令嬢は子供が好きなのか?いや、私の後妻の座を狙う女狐達も、初めはこうやってアンリに取り入ろうとする者が多かった。
彼女を疑うのは良くないが、今まで通り、注意はした方がいいだろう。
しかし、その後も彼女の視線はアンリだけを見つめていた。…私には全く興味は無さそうだ。
アンリも、優しく接してくれるクラーク侯爵令嬢に懐いたようで、今度はソフィアのおうちに行きたいだなんて言い出す。そんなアンリに、遊びに来て下さいねと優しく微笑む彼女。娘を可愛がってくれるのは嬉しいのだが……。私の存在も忘れないで欲しいと思ったのは、気のせいか?
その数日後、アンリはクラーク侯爵令嬢の別荘に行きたいと言い出す。
「アンリ1人で行くのはやめなさい。お父様が仕事がない日に、またここに招待すればいいだろう?」
いくら護衛を付けると言っても、こんな小さな子を1人で行かせるのは不安だった。まだ一度しか会ったことがない令嬢の所に行き、向こうで変なことを吹き込まれたりしたら困るのだ。
「いや!ソフィアと約束したもの。遊びに来ていいって言ってたもの。」
私はこれから仕事で外に行く用があるのに、アンリは全く聞く耳を持たない。すると、アンリの専属メイドのマニーが口を開く。
「殿下。私が責任を持って付いて行きます。護衛も多めに付けて頂けますか?行ってみて、アンリ様によろしくない環境だと判断したならば、すぐに帰って来ます。なかなか友人を作る機会のないアンリ様が、知り合いの家に遊びに行くという経験も、必要かと思うのです。」
このメイドは、亡くなった妻が実家から連れて来た信頼できるベテランのメイドである。マニーがそこまで言ってくれるなら大丈夫か。
「そうか。では護衛は多く付けて、マニーと一緒に行くがよい。
アンリ!必ずマニーの言うことを聞くのだぞ?何か問題を起こしたら、しばらくはお出かけは出来なくなるからな。約束出来るか?」
「約束するわ!マニーの言うことを聞きます。」
そうして、アンリはクラーク侯爵令嬢の所に、遊びに行くことになるのであった。
アンリを助けてくれたことへの感謝と、ぜひ我が別荘に招待したいということを書いて届けてもらうと、すぐにその機会は訪れる。
「殿下。クラーク侯爵令嬢がいらっしゃいました。応接室で待って頂いております。」
執事から、クラーク侯爵令嬢が来たことを告げられ、すぐに応接室に向かう。
応接室に入ると、そこには儚げな雰囲気の美しい令嬢がいた。
「アルバート・エヴァンだ。今日は突然呼び出して申し訳ない。」
「ソフィア・クラークと申します。本日は、ご招待ありがとうございます。」
見た目だけでなく、所作も美しい。さすが名門貴族の令嬢だ。挨拶も品がある。
すぐに、アンリを助けてくれたお礼をしたいことを伝えてみるが、お気持ちだけていいと言う。
あんなにすごい治癒魔法をしてくれたのだから、何でも言って欲しかったのだが。そのことを伝えると、少し考えた表情を見せる。
仕事柄、人の表情や態度から、何となく何を考えているのか分かるのだが、彼女からは欲というものが感じられない。
本当に善意でアンリを助けてくれたようだ。
その後、アンリもやって来て、3人で一緒に食事をするのだが…。
アンリが来てから、クラーク侯爵令嬢の視線はアンリに向かう。この令嬢は子供が好きなのか?いや、私の後妻の座を狙う女狐達も、初めはこうやってアンリに取り入ろうとする者が多かった。
彼女を疑うのは良くないが、今まで通り、注意はした方がいいだろう。
しかし、その後も彼女の視線はアンリだけを見つめていた。…私には全く興味は無さそうだ。
アンリも、優しく接してくれるクラーク侯爵令嬢に懐いたようで、今度はソフィアのおうちに行きたいだなんて言い出す。そんなアンリに、遊びに来て下さいねと優しく微笑む彼女。娘を可愛がってくれるのは嬉しいのだが……。私の存在も忘れないで欲しいと思ったのは、気のせいか?
その数日後、アンリはクラーク侯爵令嬢の別荘に行きたいと言い出す。
「アンリ1人で行くのはやめなさい。お父様が仕事がない日に、またここに招待すればいいだろう?」
いくら護衛を付けると言っても、こんな小さな子を1人で行かせるのは不安だった。まだ一度しか会ったことがない令嬢の所に行き、向こうで変なことを吹き込まれたりしたら困るのだ。
「いや!ソフィアと約束したもの。遊びに来ていいって言ってたもの。」
私はこれから仕事で外に行く用があるのに、アンリは全く聞く耳を持たない。すると、アンリの専属メイドのマニーが口を開く。
「殿下。私が責任を持って付いて行きます。護衛も多めに付けて頂けますか?行ってみて、アンリ様によろしくない環境だと判断したならば、すぐに帰って来ます。なかなか友人を作る機会のないアンリ様が、知り合いの家に遊びに行くという経験も、必要かと思うのです。」
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「そうか。では護衛は多く付けて、マニーと一緒に行くがよい。
アンリ!必ずマニーの言うことを聞くのだぞ?何か問題を起こしたら、しばらくはお出かけは出来なくなるからな。約束出来るか?」
「約束するわ!マニーの言うことを聞きます。」
そうして、アンリはクラーク侯爵令嬢の所に、遊びに行くことになるのであった。
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