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帰って来るのを待ってる

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 港町に向かう道中だった。もうすぐ、王都から出るという時だと思う。

 急に馬車が停まったようだ。…何だろう?

 すると、コンコンと馬車のドアがノックされる。メイドがドアを開けると、私の護衛騎士の1人がいる。

「お嬢様。国王陛下の遣いの近衛騎士が、お嬢様にお会いしたいと来ております。…どうしましょうか?」

 どうやら、私の動きは陛下には筒抜けのようだ。
 ハァー。どうせ断れないやつでしょ。

「大丈夫よ。お会いするわ。」

 馬車から降りた先にいたのは、近衛騎士3人。
 あれ?あの人は確か…、あの涙脆い陛下の護衛騎士様だよね?

「クラーク侯爵令嬢。突然申し訳ありません。陛下より、こちらを預かって参りました。」

 あの涙脆い護衛騎士様から、手紙のような物を渡される。何だろう?コレは…、不幸の手紙だな!

「それと、これは私からなのですが…。先日、ハンカチを貸して頂いて、汚してしまいましたので、代わりの物を用意してきました。良かったら受け取って頂けませんか?」

 ああ、わざわざ気を遣ってくれたのね。

「気にされなくても大丈夫でしたのに…。でも、せっかく用意して下さったので、頂いてもよろしいでしょうか?」

「ええ。そうして下さると嬉しく思います。」

 ハンカチを受け取るだけなのに、嬉しそうに微笑むのね。

「ありがとうございます。わざわざ、こんな場所まで来て頂いて…。陛下にも、よろしくお伝え頂けますでしょうか?」

「勿論です。…クラーク侯爵令嬢、どうかお気をつけて。貴女が元気になって帰って来るのを、ずっとお待ちしております。」

 この護衛騎士様は、よく見ると優しい目をしていた。

 でもね。弱っている時に掛けられる、優しい言葉ほど、涙を誘うものはないと思うんだよね。

「…っ。…はい。ありがとうございます。騎士様達もお気をつけてお戻り下さいませ。それでは、ご機嫌よう。」

 やばいやばい…。涙が流れそうだった。

 馬車の中で、陛下からの不幸の手紙を開けてみると…。


〝療養生活は長くても1年までだ。それまでに必ず王都に帰って来るように。みんな待ってるから大丈夫だ!次に会う日を楽しみにしている。〟



 陛下には、帰らないつもりでいたのがバレていたようだ。まあ、陛下なりの優しさだと受け取ることにしよう。


 そして、無事に港町の別荘に着いた私。高台にある高級別荘地のような場所に建つこの別荘は、一目で気に入った。そして、近くに建つ他の人の所有する別荘もみんなオシャレ。
 よし!私はここで優雅に暮らしいくことに決めた!

 部屋からは青い海が見えて最高。もう、ここにずっと住んでいてもいいかも。お母様がおススメするだけあって、最高の別荘だ。一緒に連れてきたメイド達も、かなり喜んでいるように見える。

「貴女達。せっかくだから、休みを交代で取って、遊んで来なさい。で、美味しい物を見つけたり、良い場所を発見したら、必ず私に知らせるのよ。はい、お小遣い!」

 メイドは味方に付けておくと、いざという時に助けてくれそうだからね。お金だけは沢山持っているし。

「「ありがとうございます!」」


 体の弱いソフィアさんは、今日は一日、ぐうたらすることに決めた!


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