記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ

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閑話 キャンベル公爵令嬢 9

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 扉を叩いても誰も来てくれない。一体、これは何なの?
 疲れて座り込んでいると、ガチャガチャと鍵の開けられるような音して、チャールズが中に入って来た。

「これはどういうこと?どうして私を閉じ込めるのよ?」

 チャールズは笑顔だった。

「お嬢様が逃げないようにしろと旦那様の命令です。お嬢様、湯浴みの用意をしました。隣の部屋にどうぞ。」

「は?何を言ってるの?メイドは?」

「…まだ分かりませんか?今はこの邸に使用人は私だけしかいませんよ。庭師や、掃除洗濯、食事作りの使用人は全て通いです。湯浴みも着替えも、お嬢様に直接お世話するのは、私一人でやるようにと旦那様より命を受けています。さあ、お嬢様どうぞ。」

 お父様が?あり得ないわ!

「チャールズ!本当の事を言いなさい。」

「ふっ。お嬢様が初めて私の名前を呼んでくれた。なんて幸せなんだ!お嬢様と2人だけの生活が出来るなんて。お嬢様、これからずっと一緒にいましょうね。貴女だけを、永遠に愛します。」

 この男、何を言って…?
 その瞬間、ぐいっと体を引かれ、抱き寄せられた私は、チャールズに唇を奪われていた。

 うっ、気持ち悪い…。

「…っ、んっ。何をするのよ!離しなさい!こんな事をして許されると思っているの?」

「旦那様からは、殺さなければ何をしてもいいと言われていますから。お嬢様!ほら、湯浴みしましょう。」

「いや!離して!何なのよ!」

 バシっ!
 頬に痛みが走った。

「…っ!」

「お嬢様、躾が必要ですか?今の貴女の面倒を見るのも、一緒にいるのも私だけ。私の言うことが聞けないなら、こうやって躾けていくことになりますから、お忘れなく。」

 バシッ。バシッ。無表情で私を殴るチャールズ。
 何でこうなったの?

「お嬢様、そんなに怯えないでください。お嬢様が素直になれば、私はこんな乱暴はしませんから。ほら、行きましょうか。」

 笑顔のチャールズに浴室に連れていかれ、服を脱がされて、体を素手で丁寧に洗われる。

 なんて屈辱…。

「ああ。お嬢様の美しい体に触れることが出来るなんて。幸せだ。」

 その後、部屋に連れて行かれた私は、チャールズに純潔を奪われてしまった…。

「お嬢様、これで貴女のすべては私の物になりましたね。」

 嬉しそうに私を見つめた後に、沢山のキスを落とすチャールズ。

「早く、お嬢様と私の子が欲しい。お嬢様を孕ませるまで、激しくしてしまうと思いますが、どうかお許しください。……愛してます、お嬢様。貴女は私の物だ。」

 私の思考は停止した…。

 チャールズは私に足枷をつけ、部屋に閉じ込めた。



 しばらくして。

「お嬢様、誕生日プレゼントが届いています!」

 ああ。今日は私の誕生日だったのね…。こんな生活で忘れていた。私に誕生日プレゼントだなんて。お父様に捨てられたと思っていたけど、誕生日は覚えていてくれたのね。

 立派な大きな箱だわ。ドレスかしら?

「お嬢様。メッセージカードもあります。読みましょう!」


〝愛される幸せな日々を送る貴女が大好きな物を贈ります。〟


「……?チャールズ、誰からの贈り物なのかしら?」

「クラーク侯爵家と聞きました。」

 えっ?なぜクラーク侯爵家?

「どういうこと?」

「さあ?開けてみましょうか?」

 チャールズが箱の蓋を開けると……

「人形かしら?えっ?…ひっ、ギャー!」

 箱には、お父様とお母様、弟の3人の首が入っていた…。

 ショックを受けた私は、気を失ってしまった。



 

 数日間寝込み、涙を流し続けた。




「チャールズ、私を殺して…。」

 チャールズは、お父様達の首を見ても何も感じていないようだった。この男、やはりオカシイ…。

「お嬢様、旦那様からは殺さないようにと命令されていますから。」

「貴方を雇ったお父様は殺されたわ。」

「ふっ!お嬢様、私を雇っているのは、貴女のお父上ではありませんよ。」

「…えっ?」

 一体誰に…?

「私はキャンベル公爵家で働いていましたが、貴女のお父上である公爵にクビになりました。あの頃から、お嬢様が好きだったので、お嬢様の使用したスプーンやタオル、櫛などを盗んでいたことがバレましてね…。こんなに好きで愛しているのに、お嬢様と引き離されてしまうなんて…。公爵を恨みましたよ。」

 ゾーっと、寒気がしていた。チャールズの表情は怖いくらいの笑顔だ。

「こんな素晴らしいお役目を私に与えて下さったのは、エドワーズ公爵様です。お嬢様を一生お世話させて頂けるお役目だけでなく、妻にしても、孕ませても、私の好きにしていいと言ってくれました。ただ、絶対に殺すなと言われています。高額な給金に、沢山の生活費。そして住む家まで与えてくれました。」

「…ふふっ!ふふっ!…あははっ!」

 エドワーズ公爵様は、私を簡単に死なせてくれないようだ。

 この狂った男に、一生を捧げろということなのね…。



「お嬢様。貴女の家族は私だけになってしまいましたね。貴女には私しかいないなんて!ああ、幸せだ。……愛してます、お嬢様。」

 


 
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