記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ

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閑話 マーティン侯爵 12

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 休日明けに、国王陛下から呼び出しを受ける。

 恐らく、ソフィア嬢の事だろう。陛下には、ソフィア嬢を探すにあたって、色々と配慮していただいたから、一言お礼を伝えた方がいいな。そんな考えで、陛下の執務室を訪ねる。
 しかし、陛下からは知らされたことに、私は目の前が真っ暗になるのであった。

「将軍、クラーク侯爵令嬢はイーサンが見つけたようだな。」

「はい。見つかって良かったと思います。陛下、今までご心配をおかけしました。ソフィア嬢を捜す為に、色々と配慮してくださってありがとうございました。」

「いや、それはいいのだが…。昨日、イーサンからクラーク侯爵令嬢との婚約の許可願いが届いた。クラーク侯爵からの手紙も添えられていて、婚約を認めて欲しいと書いてあったのだ。…この婚約は、私は拒否出来ないことは理解できるな?」

 ああ、そういうことか…。

「解っています。国王派の筆頭のエドワーズ公爵家と、中立派の筆頭のクラーク侯爵家。陛下の地盤固めには文句のつけようのない縁談です。陛下の側近の1人として、この婚約は歓迎したいと思います。」

「理解してくれて感謝する。…で、私個人がディラン個人の考えを聞くが。お前、ショックだろう?」

 悪魔が目の前にいる。

「やり直したいと思ってましたから…。許してくれなくてもいい、愛してくれなくてもいいから、近くで償いをさせて欲しかった。捜索中に食堂で見たソフィア嬢に、治癒魔法をかけてもらったことは忘れられませんし。美しくて、可愛くて、優しくて…。そんな彼女をどうして大切に出来なかったのか。後悔しかありません。」

「ハァー。情けない奴め。ディランが取り戻そうとしても、あのイーサンは絶対に離さないだろうな。」

「辛いですが、彼女がエドワーズ公爵閣下を選んだのなら、幸せを祈りたいと思います。」

「そのうち、イーサンとクラーク侯爵令嬢を呼び出したいとは思う。あの堅物イーサンとディランが、そこまで気に入っている令嬢に会って見たいからな。それにディランだって、最後にちゃんと謝りたいだろう?」

「…そうですね。恐らく、会うことすら嫌がられそうですが、許されるなら、きちんと謝る機会が欲しいとは思います。」



 それからしばらくして、陛下はエドワーズ公爵閣下とソフィア嬢を呼び出したようだった。

 陛下やその場にいた側近、護衛騎士達の話を聞いたが、エドワーズ公爵閣下はソフィア嬢を溺愛していたという。
 愛されているなら良かったと思う。私と婚姻関係にある時は、愛されているとは感じてなかっただろうから。
 私のとった行動で、愛されず、大切にされていない夫人と認識され、使用人達から酷い待遇を受けたのだから。

「将軍!クラーク侯爵令嬢は、非常に美しかったぞ。高位の貴族令嬢にありがちな傲慢さがなくて、何となく守ってあげたくなるような雰囲気で、可愛かった。……本当に勿体無いことをしたな。」

 悪魔め!

「…後悔していると言ったでしょう。彼女が公爵閣下から大切にされているのなら、静かに見守りたいと思います。」

「それでな、非常に言いにくいのだがな。」

「何でしょう?」

「将軍が謝る機会が欲しいと、何となく言ってみたのだが。イーサンは殺気立つし、クラーク侯爵令嬢も会いたくなさそうだったのだ。」

「…はい。今更、会いたくはないでしょう。」

「で、何か伝えたいことはないかと聞いてみたのだが、聞きたいか?」

「はい。」

「クラーク侯爵令嬢は、将軍閣下の知るソフィア・クラークは死んだので、死んだ人間の事は忘れて欲しいと言っていた。」

「………そうですか。」



 彼女の中で、私達のことは完全に終わったことなのだと理解した。


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