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こんなに好きだったのね

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 イーサン様との婚約解消の話を聞いた私。

「…つっ。うっ…。」

 泣きたくないのに、涙が流れてきた。

「ソフィー、ごめんね。エドワーズ公爵様は、ソフィーが目覚めるまで何年でも待つから、婚約解消はしたくないと言って下さったのよ。あの方はソフィーの意識が戻らない間も、毎日付きっきりでね。手を握ったり、ソフィーに話しかけていたりしていたわ。本当にソフィーを愛していたのね。」

 グズっ。グズっ…
 涙だけでなく、鼻水まで垂れてきた。あー、私は今、ブサイクな顔になっているだろうな。

「でも、公爵様という身分の高い方を、いつまでも待たせる訳にはいかないでしょ?跡継ぎが必要だし、エドワーズ公爵は待ちたいと言っていても、周りはそうは思ってくれないわ。クラーク侯爵家がエドワーズ公爵を縛り付けていると思うでしょうね。それにもしかしたらソフィーは、ずっと目覚めないかもしれないとまで言われたの。だから、こうするしかなかった…。ごめんなさいね。」

 お母様も泣いているようだ。娘が毒で意識を失っているのだってキツいのに、娘の婚約解消の話までしなければならなかったお母様も、相当辛かっただろうね。お母様、やつれているし、ずっと私に付いていてくれたのだろう。

「…お母様に辛い思いをさせて、ごめんなさい。婚約解消のことは、お母様の言う通りだと思います。公爵様のことは好きだったので残念ですが、こうやって大好きなお母様が側にいてくれて、私は幸せです。お母様、ありがとうございます。私、お母様みたいに強くて素敵な女性になりたい。…だから、負けませんわ!」

「ふふっ!じゃあ、2人でまた頑張りましょうね。」

 エドワーズ公爵様のことは、こうなってみて気付くが、自分が思っている以上に好きだったみたいだ。しかし、いつまでも悲しんでいる訳にはいかない。とりあえず今は、以前のような生活を送れるように、頑張らなければ。

 1年近く寝たきりだった私は、全身の筋肉が落ちてしまっていた。コップを持つことも、座った姿勢を維持することも、立ち上がることも、何も出来なくなっていた。今の私の目標は、普通の生活が送れるようになることになった。

 公爵様のことを考える余裕はない。あの人のことを考えるのはやめる。あの人とはもう元に戻れないから、関わらない方がいいだろう。

 生死を彷徨う程の毒が、この後にどんな後遺症となって出てくるのか分からない。妊娠できないかもしれないし、妊娠できても、元気な赤ちゃんが生まれてくれるのか分からない。結婚は諦めたほうがよさそうだ。だから…、公爵様は忘れよう。

 あの方と一緒にいた時間は幸せだった。失ってみて、初めて気付くってやつね。

 心配をかけたお母様の為に元気にならないと。元気になったら、家族の迷惑にならないように、今後の自分の生き方を考えて行こう。

 大丈夫!前世の時だって、何だってやっていたんだし。

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