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閑話 エドワーズ公爵 11

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 クラーク侯爵家からソフィア嬢との婚約の許可を得た私は、今度は国王陛下からの許可を取る為に、すぐに陛下に早馬を飛ばした。国王派で王族のエドワーズ公爵家と、中立派のボスのクラーク侯爵家の婚約は、陛下にとってもいい話だろうから、何の問題もないはずだ。

 そして、別邸に戻りソフィア嬢とランチを取っていると、側近がやって来る。婚約が国王陛下から認められたので、婚約届けを教会に提出して、無事に受理されたとの報告であった。

 嬉しくて仕方がなかった私は、ソフィア嬢を抱きしめて、愛を囁いていた。ソフィア嬢は顔を赤くして、恥ずかしそうにしている。可愛すぎだろう!

 早く2人きりになりたいが、私にはまだやる事が残っている。それは、ソフィア嬢の職場に婚約者として、挨拶という名の牽制に行くことだ。

 弟の情報だと、神官達がソフィア嬢に目をつけていたとか、聖騎士達がソフィア嬢を口説いていたとか、とにかく、あの職場は危険な場所でしかない。
 本音を言えば仕事はやめて欲しいが、仕事を認めると話した以上は約束は守らねばいけないのだ。

 神殿に挨拶に行くと、王族のエドワーズ家と聞いたからなのか、突然訪ねたにも関わらず、神官長達が対応してくれた。早速、こちらの治療師のダイアナこと、クラーク侯爵令嬢と婚約することになったことの報告と、彼女はこれからも仕事を続けていくことを希望していることを話した。
 神官長達は、ソフィア嬢が実は大貴族のクラーク侯爵家の令嬢だと知って顔色を悪くしていた。平民だと思って、無理に結婚の話を持っていこうとしていたのがバレバレだ。

 神官長達の話だと、ソフィア嬢の治癒魔法は評判が良く、とにかくリピーターが多いらしい。要するに、ソフィア嬢のおかげで、神殿は儲けさせてもらっているということだな。だから、ソフィア嬢が仕事を続けてくれることを嬉しく思うと話していた。
 ふん!平民だったら、いいように使いたかったって考えていたようだな。
 婚約者としては、警備で常駐している聖騎士の中に、ソフィア嬢を口説いたり、付き纏ったりする者がいるのが心配だと話し、聖騎士達には注意を促して欲しいと伝えた。未来の公爵夫人なのだから、よろしくという意味を込めて。
 勿論、タダでとは言わない。今日は側近に大金を用意させて来ている。これからもお世話になるので、ぜひ寄付をさせて欲しいと、大金をテーブルの上に並べれば、神官長達は一瞬にして表情が変わった。ソフィア嬢が働きやすい環境になるように、配慮していきたいと笑顔で言ってくれた。
 結局、神官長も私達と同じ人間なのだ。

 ソフィア嬢の寮の荷物は使用人達が運び出してくれ、退去が完了した。

 そして。
 ここまで来たのだから、愚弟に会っていくとするか。
 手紙に書いてあった聖騎士の寮を訪ねると、弟がすぐに出てきた。コイツのことは、まだ許すことは出来ないが、時々なら邸に帰って来ても良いということと、週末にソフィア嬢を保護して、今日正式に婚約したことを話した。
 弟は、随分と仕事が早いですねと少し引いた顔をしていたような気がするが、別に気にしない。仕事は早い方がいいに決まっているのだ。

 言いたいことを伝え終わったので、ソフィーの待つ別邸にすぐに帰ろう。
 早く帰って、可愛いソフィーを抱きしめたい私は、家路を急ぐのであった。

 明日からまた仕事が始まるが、やはり夜はソフィーと一緒に過ごしたい。
 あまり無理にならない程度で我慢しよう。そう思ってソフィーをベッドに運んだが、サラサラの髪や、白い触り心地の良い肌、可愛いソフィーの乱れた姿を見たら、自分を抑えることが出来なくなっていた。

 私はこの先の人生、彼女なしでは生きていけないだろう。ソフィーに何かあったら、正気を保っていられる自信がない。
 
 私は時間がある時は、仕事をするソフィーを、必ず迎えに行くことにした。仕事を終えて来たソフィーを、皆が見ている前で抱きしめ、ソフィーの職場の男達を牽制するようにする為だ。
 その行動を繰り返していたら、貴族達の間で、エドワーズ公爵が婚約者を溺愛していると噂になるのに、時間は掛からなかった。

 そして、ある日のこと。

 陛下からまた登城命令が来る。今度はソフィーも一緒に連れて来るようにとのことであった。

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