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公爵様は止められない

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 お母様は婚約を許してくれたようだが、お兄様はまだ納得してないようだ。

「……ソフィー。マーティン家に行く前に、私とした約束も忘れてしまったのだね?」

「……?」

「くっ!ソフィーを記憶喪失にしてくれた、マーティン侯爵家を私は許さない!…ソフィー、君に何かあれば、私は前のように遠慮はせずに、すぐにエドワーズ公爵家に迎えにいくからね。もしこの先、公爵閣下との子ができたとしても、ソフィーが望めば、いつでも子供を連れて帰って来ていいから。君の子は私にとっても大切な存在になるのだから。そのことを忘れないで…。」

「……はい。お優しいお兄様がいて心強いですわ。ありがとうございます。」

 お兄様は悲しそうな目で私を見ている。よっぽど、ソフィアさんを大切にしていたのね。でもソフィアさーん!約束って何?
 お兄様のあの目は妹を見る目なのか?前世で兄達と、血の滲む凄まじい兄妹喧嘩をしてきた私としては、理解できないな。

「エドワーズ公爵様。婚約・結婚となっても、私達はいつでもソフィーに会えますわよね?」

「勿論です。いつでもお待ちしております。」

「なら、良かったわ。ぜひエドワーズ公爵家に遊びに行かせてもらいましょう。マーティン侯爵家ではメイド長達が私達を騙して、ソフィーに会わせてくれなかったものですから、かなり疑い深くなってまして。」

 ん?あのムカつくメイド長か!

「ソフィー。貴女に害をなした者たちは、クラーク侯爵家で消しておいたわよ。だから、お母様達を許してね。」

 何と!ムカつくメイド長達を消してくれたの?この言い方は、ベイカー子爵も消してくれたってことだよね?
 お母様!なんて凄いお方なの!

 すれ違ってしまっていたけど、本当はいい人達なのかな?ソフィアさんは日記で、お母様に会いたいって書いていたもんね。

「お母様、ありがとうございました。記憶は無くなってしまった私ですが、これからまた仲良く出来ましたら嬉しいですわ。」

 ちょっと調子が良過ぎるかな?

「勿論よ!一緒に住むのは無理でも、ここは貴女の実家なの。いつでも遊びに来なさいね。他に貴女に害をなす者がいたら、いつでもお母様に教えなさい。」

「はい!何かあれば、お母様にすぐに報告しますわ。今日はお母様にお会い出来て嬉しかったです。」

「ソフィア嬢。私だって君を守るためなら、誰でも潰すつもりでいるんだ。忘れないでくれ。」

「ふふっ!公爵様も頼りにしてますわ。」

 あまり期待していなかったソフィアさんの家族だったけど、メイド長達を消してくれたと聞いてから、急に親しみを感じた私であった。

 公爵様は両親の目の前で、婚約届のサインを記入すると、すぐに国王陛下の許可を得る為に早馬を飛ばしていた。
 別邸に帰って来て、遅めのランチを食べていると、公爵様の側近が来て、婚約が国王陛下から認められて、教会に婚約届が受理されたと報告を受ける。何から何まで早過ぎるから!
 公爵様は満面の笑みで私の手を引き、抱き寄せる。

「ソフィー。これで私達は正式な婚約者になれた…。愛してるよ。これからは、絶対に離さない。」

「…は、はい。よろしくお願い致します。」

 使用人や、公爵様の側近の目の前でこれは恥ずかし過ぎる!そんなニコニコして、私達を見ないでー!

 その後、公爵様は側近を連れて神殿に出かけて行った。
 神殿の治療師である私との婚約を報告してくるらしい。そこまで必要なのかなと思ったのだが、結婚してからも治療師を続けたいなら、婚約者として挨拶をしておきたいと言って聞かなかった。
 それと予想はしていたが、寮は退去することになった。公爵家の婚約者が一人暮らしをするのは、警備の都合上ダメだって。この別邸から近いから、ここから馬車で通うようにとのことだった。公爵様が神殿に行くのに、使用人達も連れて行き、私の寮の荷物を運んで来てくれるらしい。
 明日から、この別邸から職場に行くのね…。もう平民らしい自由な生活とはサヨナラか…。
 
 週末の夜に公爵様に捕まり、ほぼ強引に婚約の話をされて、純潔を奪われ、両親にも許可をもらい、正式な婚約者になるのに約2日間の出来事だった。

 その日の夜。

「ソフィー。本当はゆっくり休んでと言いたいところだが、君が可愛すぎて我慢出来ない。でも、明日からの仕事に支障があると困るから、回数は減らすようにする。だから許してくれ。……愛してるよ。」

 公爵様は私の額にキスをすると、強引にお姫様抱っこをして、ベッドに連れて行くのだった。

 うっ。回数は減ったような気がしたが、その分激しくなってない?ちょっとーー!


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