記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ

文字の大きさ
上 下
36 / 133

自由な暮らし

しおりを挟む
 治療師の仕事にも少しずつ慣れてきて、研修期間が終わり一人で仕事をすることになった。アマリアさんの指導が良かったのだと思う。

「ダイアナ。個室で仕事をしていると、体を触ろうとする人とか、個人で治療師を雇いたいとか言ってしつこく勧誘する貴族とかいるからね。そんな時は遠慮しないで聖騎士を呼びなさい。すぐに来てくれるからね!」

 そう言うと、アマリアさんは治癒院の警備をしてくれている聖騎士を何人か紹介してくれた。お互い名前を知っている方がいいだろうからと。本当に面倒見の良い姉さんだと思う。
 聖騎士の人達は、本性はどうだか知らないが、普通に感じのいい人達だった。聖騎士は騎士の中ではかなりのエリートらしく、貴族もいるけど、優秀な平民も沢山いて能力主義らしい。しかも、女性の治療師と聖騎士のカップルが多いらしく、アマリアさんの彼も聖騎士だって言っていた。
 こんな話も、自由の身になれたからこそ出来るんだよね。あのまま公爵様やクソ元旦那の邸にいたら、こんな風に楽しい話をして過ごす生活は出来なかっただろうな。やっぱり私にはこんな生活が合っていると思う。

 今日は仕事終わりに、アマリアさんと彼氏とその友人達で飲みに行くことになっている。仕事終わりに飲みに行くなんて、前世ぶりだから楽しみだわ!
 アマリアさんに連れられて近くの店に行くと、店の奥のテーブルから、アマリアさんに手を振るイケメンがいる。青い髪にグレーの瞳の、乙女ゲームの攻略対象者に出てきそうな美形。あの人がアマリアさんの彼氏?手を振られたアマリアさんは、嬉しそうに手をふり返している。あらあら、幸せそうな顔しちゃって。かわいい!

 テーブルに行くと、そこには3人の男性がいた。みんなシャツにスラックス姿で、騎士の制服は着てないが、いい体をしていて、帯剣しているから、おそらくみんな騎士なのだろう。椅子に座る姿勢もみんな綺麗だし、品があるような気がする。

「クリス、お待たせ。こちらはダイアナよ!みんなダイアナと友達になりたがっていたのよー。」

 アマリアさんはすぐに私をみんなに紹介してくれた。この感じ、何だか懐かしい。

「ダイアナです。よろしくお願いします。」

 第一印象が大切だから、一応笑顔で挨拶する。その時、私は気付いてしまった。
 ………これは!反応が前世の飲み会の時と違う!前世の時は、こんな目で見られなかった。見た目男っぽい私を見て、嬉しそうな反応はされた事はなかったもん。ソフィアさんはすごいなぁ。黙ってれば美少女だもんね。やっぱりみんな可愛い子が好きなんだね。
 何だか虚しいな。ソフィアさんは私であって、本当の私じゃないからなぁ。ハァー。

「クリストファーだ。こっちがノアで、そっちがオリバーだ。みんな聖騎士をしている。よろしく!」

「ノアです。よろしく!」

「…………。」

「…オリバー?どうした?」

 何だろう?オリバーさんっていう人が、真顔でジーっと私を見ていている。もしかして、ソフィアさんを知っている人だったりして。

「あら!もしかして、ダイアナの知り合いだった?」

 いや!イケメン聖騎士に知り合いはいない。明るい金髪に青い瞳の美形…、この人も貴族か?ソフィアさんの独身時代の友人だったりして。でも、今の私は知らない人だからなぁ。

「いえ、初対面ですわ。」

「ああ…。初めて会うな。オリバーだ。よろしく。」

 うーむ。何だか微妙な表情をしている。やはり、ソフィアさんの知り合いか?でも分からないし、しょうがないよね。

 気にしてられないわ。何か探られても、私は平民ダイアナで通すしかない。
 飲みに来ているんだから、楽しく飲もうぜ!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました

蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。 家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。 アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。 閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。 養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

処理中です...