記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ

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閑話 マーティン侯爵 9

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 エドワーズ公爵に、ソフィア嬢に会わせて欲しいと私が訪ねて行っても、会わせてもらえるのかは分からない。相手は公爵であり、王族なのだから。

 自分の力だけでは難しいと判断して、国王陛下に相談してみることにした。

「イーサンの所に囲われているだって?…あのイーサンが?本当か?」

「ソフィア嬢と思われる令嬢が、エドワーズ公爵領の騎士団の近くの店で、働いていたらしいのですが、突然、店を出て行ったようなのです。その店の店主達が、公爵様の所で上手くやっているといいとか話していたという情報を掴みまして。しかも、お忍びで店に食事に来ていた公爵閣下が、店の娘に花やお菓子をよくプレゼントしていたという情報もあるのです。」

「イーサンが花をプレゼントしていた?もしかして…、あの堅物イーサンが愛人として囲っているのか?今まで全く女性に興味を持たなくて、男色の噂もあった、あのイーサンがついに!」

「陛下!愛人だなんて言わないで下さい。私は必死なのです。」

「ああ。すまないな!個人的にも興味があるから、イーサンを呼んで直接聞いてみるか!」

 国王陛下は、すぐにエドワーズ公爵に登城するように、連絡をしてくれたようだった。
 この事はクラーク侯爵家にも知らせた。信用を取り戻す為にも、調べ得た情報は、クラーク侯爵家にも伝えるようにしている。すると、ソフィア嬢の義兄のクラーク卿も、エドワーズ公爵が登城する時に同席することになる。

 当日。

「イーサン。忙しいのに、呼び出して悪かったな。」

「…陛下。そしてマーティン将軍とクラーク卿。随分と珍しいメンバーが揃ってどうされた?」

「実はマーティン将軍と、クラーク卿が探している人物がいてな。令嬢なのだが、エドワーズ公爵領で目撃情報があったらしい。それで、イーサンにも捜索の協力をお願いしたいそうなんだ。」

 公爵閣下のことを勝手に調べたとは言えないから、陛下は当たり障りなく話してくれたようだ。しかし、

「…なるほど。それで、マーティン将軍はうちの騎士団の近くによく出没していたのだな。忙しい将軍が何を調べているのかと思っていたのだが、そういうことか。」

 …バレていたようだ。さすが、エドワーズ公爵だ。

「エドワーズ公爵閣下、失礼いたしました。」

「で、クラーク卿とマーティン将軍は誰を探しているんだ?」

「私の義妹です。こちらが義妹の姿絵です。記憶を無くしているようなので、私のことも覚えてないと思われます。」

 クラーク卿は、分かりやすいようにソフィア嬢の姿絵を持参して来たようだ。それをエドワーズ公爵に見せる。
 エドワーズ公爵は表情を全く変えることなく、ソフィア嬢の姿絵をじっと見つめる。

「…こちらの令嬢の名前は?」

「ソフィア・クラークです。私の大切な人なのです。」

 クラーク卿が義妹を大切な人と話している。気分のいいものではない。

「マーティン将軍とは、どんな関係なのだ?」

 エドワーズ公爵は痛いところを突いてくる。陛下はそんな私を見て、……楽しんでいるな。悪魔め!

「彼女とは婚姻関係にありましたが、彼女から白い結婚による婚姻関係の無効という届出を受けて、婚姻関係は無かったものになりました。」

「白い結婚が認められるような、そんな関係だったということか。……なら、何の問題もないな。彼女は私が保護している。偽名を使っているが、この姿絵を見る限り、恐らくソフィア・クラーク侯爵令嬢だ。平民の店で働いていたが、色々な貴族に狙われて危険だから、私が保護することにしたのだ。」

「公爵閣下、うちのソフィアを保護して下さり、ありがとうございます。」

「イーサン!ただの保護なのか?愛人にしてないか?」

 陛下め!

「はあー。陛下!彼女はどう見ても、高位の貴族令嬢にしか見えなかった。そんな彼女を愛人に落とすなんて出来ないだろう!しかし、マーティン将軍と婚姻関係にあったとは、全く知らなかったな。しかも、クラーク侯爵家の令嬢だったとは。」

「ソフィアは体が弱く、社交の場に出る機会が少なかったので、ソフィアの顔を知らない人は珍しくないと思われます。将軍とは結婚式も挙げれない婚姻でしたし、あの時は戦争中でしたから、私達家族は2人が結婚したことを、積極的に公表することもしませんでした。戦争から戻って来た後も、将軍閣下はソフィアをいない者として扱っていましたから、公爵閣下が知らなかったのはしょうがないことかと思います。」

「…それは本当か?あんなに素晴らしい令嬢なのに。将軍は別に愛する人でもいるのか?…まあ、構わない。今となっては、将軍が白い結婚にしてくれたおかげで、私は彼女と出会えたのだからな。将軍には、感謝する。」

 なぜ、そんなことを?

「公爵閣下?それはどう言う意味でしょうか?」

「私は彼女を愛しているということだ。クラーク侯爵家には、近いうちに正式に婚約を申し込みたい。」

 

 
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