記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ

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白い結婚

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 今日も教会に来ている私。

『無事に離婚して、自由を手に入れられますように。メイド長がムカつくので、天罰をお願いします。』

 お祈りを終えると、いつものおばちゃんシスターの所へ行き、寄付金を渡す。これを何度か続けていたら、お喋りをするくらいの関係になって来た。そろそろ人生相談に乗ってもらおうかな。

「シスター、あの…お時間がありましたら、少し相談に乗って頂きたいことがありまして。」

 シスターの反応は悪くなさそうだった。優しく微笑んでくれる。

「お嬢様の相談ですか?私でよければ。では、2人になれるところにご案内しましょうね。」

 多分、こんな風に相談をする人が他にもいるんだろうね。聖堂の横の小部屋に案内される。椅子とテーブルだけのシンプルな部屋だ。

「お嬢様の相談とは、何でしょうか?」

「実は嫁いで数年経つのですが、旦那様になる方とはまだ一度も顔を合わせておりません。それどころか、邸では物を盗まれたり、食べ物はくれなかったりと、私の扱いが酷いのです。…私が至らない所があるのかもしれませんが。少し前には、メイドに突き飛ばされて、頭を怪我をしたみたいで、記憶や知識が曖昧になってしまいました。記憶を無くした私に頼れる人は誰もいません。それで、シスターに教えてもらいたいのですが、この国では離婚は出来るのでしょうか?邸から、早く逃げたいのです。」

 シスターは驚愕の表情をしている。結構、深刻な表情で話をした自覚はある。しかも、全く嘘はついていないからね!

「……お嬢様。あなたが嘘をついてるようには見えません。これでも私は今まで、色々な人を見てきましたからね。ご主人や使用人達がお嬢様に対してそのようなことをなさるとは…、あまりに酷い仕打ちです。これは、許されることではありませんわ。よく話して下さいましたね。旦那様とは顔を合わせてないと話していましたが、それは閨も共にしていないということでしょうか?それなら、白い結婚として、結婚をすぐになかった事に出来ますわ。」

 ファンタジー小説と一緒ね!やっぱりあるのね。

「本当ですか?記憶を失っているので、ハッキリはしていませんが、過去の日記には一度も旦那様には会ってないと書いてありました。白い結婚と認められるにはどうすればよいでしょうか?」

「神官が調べて認められれば、すぐに白い結婚として受理されますわ。でも、お嬢様。白い結婚と認められた後のことも大切です。邸を出た後はご実家に戻られるのでしょうか?」

「いえ。記憶のない私が実家に戻っても、家族に迷惑をかけるでしょう。戻らずに、平民として何か仕事をしながら生きて行きたいのです。まだ働くアテはありませんが。」

「お嬢様、そこまで決心をされていますのね。分かりました。仕事は私の知り合いに何かないか聞いてみましょう。そして邸を出るとしたら、準備が必要ですね。お嬢様の服では、街を歩くのは目立ちますし、1人で生活するにもお金は必要です。今日頂いた寄付金は沢山ありすぎますので、このお金で、平民が着る服などを私が準備しておきましょう。ところで、お嬢様は魔法は得意ですか?貴族の方は魔力が高い方が多いですから、もし魔法が得意なら、魔法を活かした仕事にもつけますわ。」

 えー!魔法あるのー?

「魔法は記憶がないので、分からないのです。申し訳ありません。」

「お嬢様…、記憶が消えるほどお辛い思いをされたのかもしれませんね。白い結婚の申請の時に、神官に一緒に魔力を測定してもらいましょうね。」

 と言うことで、結婚無効?離縁?に向けてシスターと計画を立てて、準備をしていく事になった。
 人生の経験豊富な、おばちゃんシスターに頼って良かった!
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