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嫌いではない
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振り返ると、怒りを滲ませたナイトレイ公爵様がいた。
このお方、キレると怖いよね。
「馴れ馴れしくエレノアに触らないでくれるか?」
「ナイトレイ公爵閣下。お言葉ですが、彼女は体調が悪いようなので、私が介抱しようとしているだけですよ。」
「エレノア、それは本当か?」
「気分は悪いですが、こちらの方に介抱を頼んだ覚えはありませんわ。」
「…だそうだ。すぐに離れろ。」
「ナイトレイ公爵閣下は彼女の婚約者でも恋人でもないですよね?それなのに、なぜ彼女が自分のモノであるかのように振る舞うのです?」
この男、前よりも図々しさがパワーアップしてない?
でもボルチャコフの話は、正論に近いような気もしなくもない。
ただ、公爵様なりに私を助けようとしてくれているのも分かる。
嫌味ったらしく言い返すボルチャコフの態度に更にキレた公爵様は…
「エレノアは私の大切な人だ。文句あるか?」
「……。」
「………。」
ちょっとー!大きな声で何言ってんのよ?
「…ハァー。公爵閣下からそこまではっきりと言われてしまったら、私の立場では今日のところは引くしかありませんね。
ベネット伯爵令嬢、また今度…。」
「………。」
おばちゃんだけど、恥ずかしすぎて言葉が出てこなかった。
「…エレノア?大丈夫か?
顔が赤いぞ。熱でもあるのかもしれないな。」
「……。」
「やはり具合が悪いようだな。家まで送る。歩けるか?」
「………あります。」
「エレノア…、どうした?」
「文句ありますって言ったのですわ!
『私の大切な人』だなんて、誰に聞かれているか分からないような場所で、大きな声で言わないで下さい!勘違いされたら嫌だし、恥ずかしいじゃないですか!」
おばちゃんは、王弟である公爵様相手についキレてしまった。
「…あっ!……す、すまない。」
今更、自分が恥ずかしいことを口にしてしまったことに気づいたような反応をする公爵様。
顔が赤くなっているわ……
そんな顔を見せられたら、こっちまで余計に恥ずかしくなるじゃないのよー!
んっ?チクチクと視線が…
ちょっとー!カーテンの影とか柱の影に、エイミーとか私の友人達がいるじゃないの。
えっ…。少し離れたところには、公爵様の友人達が隠れてる。
私の視線で、公爵様まで友人達が隠れていることに気付いたようだった。
「……エレノア、行くぞ!」
「え、ちょっと!」
手を引かれて、バルコニーに出てきた私。
うーん。恥ずかしい…。
「エレノア…、さっき私がエレノアを『私の大切な人』と言ったことなのだが……」
ゴクリ……。思わず唾を飲み込む。
これってもしかして…
「もう気づいていると思うが…
私は…ずっとエレノアが好きだったんだ。」
生まれ変わって初めての告白で、どう反応していいのか分からなかった。
「……私をですか?」
「すまない。急にこんな事を言われても困るよな。
エレノアは私を何とも思っていないことは分かっているんだ。
でも、初めて会った時からずっと好きだった。エレノアが結婚した後も、諦められなかった。」
えっと…、初めて会った時っていつだっけ?
「公爵様。学生時代、私を生徒会というタダ働きの組織に縛り付けて、沢山の仕事を押し付けてくる当時の王子殿下を、私は悪魔としか見えていませんでした。
あの頃から私を好きだったなんて信じられませんわ。」
「悪魔か…。そうだよな、もっと優しく出来たらと、何度後悔したか分からない。
生徒会の仕事も、エレノアを側に置きたくて…。
悪かった。」
あ…、悪魔って正直に言い過ぎちゃったかな。
そんな傷付いた顔をしないでー!
「私こそ不敬でした。申し訳ありません。」
「いいんだ。いつでも本音を話してくれるエレノアを私は好きになのだから。」
うっ…。恥ずかしい…。
「私達が初めて会った時って、いつでしたか?」
「10歳の頃だ。母上が私のために開いてくれた茶会の時だ。」
「……。」
10歳の時だって?全然覚えてないし、その時からエレノアが好きだったの?
自分で聞いておきながら、答えを聞いて恥ずかしくなる私。顔が熱いわ…。
「エレノアは私が嫌いか?」
うっ…。そんなストレートに聞かないでよ。
「嫌いというか、その…、悪魔だとは思いましたけど、最近は、公爵様が実は優しい人だと分かってきましたので、嫌いではないです。」
「本当か?」
「それは本当ですわ。先程のこともですが、公爵様に色々と助けて頂いたことに対しては、嬉しく思っていますし。」
すると何を思ったのか、突然跪きだす公爵様…
「エレノア・ベネット伯爵令嬢。」
「…は、はい。」
「私、マテオ・ナイトレイは、貴女だけをずっと想い続けてきました。
生涯、貴女だけを愛し、幸せにすることを誓います。
私の婚約者になって頂けませんか?」
「………えっ?」
「エレノアの理想の夫になれるように努力する。
私は絶対に君を裏切らないし、大切にする。
本当に好きなんだ…。返事を聞かせて欲しい。」
必死な公爵様が可愛く見えてしまった。
おばちゃんは……
非常に悔しいけど…、
負けを認めます。
公爵様、アンタの粘り勝ちよ…
「……はい。よろしくお願いします。」
「エレノア!ありがとう。絶対に幸せにする。」
立ち上がって、私を抱きしめる公爵様。
ははっ…。そんなに分かりやすく喜ばないで。
悪魔だと思っていた男は、可愛い子犬に成長したようだ。
パチパチ…
んっ?何で拍手が…?
気付くと、バルコニーの周りに人だかりが出来て、私の親友のエイミー達や、公爵様の友人達、そして知らない人達から祝福(?)の拍手を送られていた。
恥ずかしすぎて死ぬかと思った…
ナイトレイ公爵様の10年越しの恋が報われたと、王都中の噂になるのに時間はかからなかった。
このお方、キレると怖いよね。
「馴れ馴れしくエレノアに触らないでくれるか?」
「ナイトレイ公爵閣下。お言葉ですが、彼女は体調が悪いようなので、私が介抱しようとしているだけですよ。」
「エレノア、それは本当か?」
「気分は悪いですが、こちらの方に介抱を頼んだ覚えはありませんわ。」
「…だそうだ。すぐに離れろ。」
「ナイトレイ公爵閣下は彼女の婚約者でも恋人でもないですよね?それなのに、なぜ彼女が自分のモノであるかのように振る舞うのです?」
この男、前よりも図々しさがパワーアップしてない?
でもボルチャコフの話は、正論に近いような気もしなくもない。
ただ、公爵様なりに私を助けようとしてくれているのも分かる。
嫌味ったらしく言い返すボルチャコフの態度に更にキレた公爵様は…
「エレノアは私の大切な人だ。文句あるか?」
「……。」
「………。」
ちょっとー!大きな声で何言ってんのよ?
「…ハァー。公爵閣下からそこまではっきりと言われてしまったら、私の立場では今日のところは引くしかありませんね。
ベネット伯爵令嬢、また今度…。」
「………。」
おばちゃんだけど、恥ずかしすぎて言葉が出てこなかった。
「…エレノア?大丈夫か?
顔が赤いぞ。熱でもあるのかもしれないな。」
「……。」
「やはり具合が悪いようだな。家まで送る。歩けるか?」
「………あります。」
「エレノア…、どうした?」
「文句ありますって言ったのですわ!
『私の大切な人』だなんて、誰に聞かれているか分からないような場所で、大きな声で言わないで下さい!勘違いされたら嫌だし、恥ずかしいじゃないですか!」
おばちゃんは、王弟である公爵様相手についキレてしまった。
「…あっ!……す、すまない。」
今更、自分が恥ずかしいことを口にしてしまったことに気づいたような反応をする公爵様。
顔が赤くなっているわ……
そんな顔を見せられたら、こっちまで余計に恥ずかしくなるじゃないのよー!
んっ?チクチクと視線が…
ちょっとー!カーテンの影とか柱の影に、エイミーとか私の友人達がいるじゃないの。
えっ…。少し離れたところには、公爵様の友人達が隠れてる。
私の視線で、公爵様まで友人達が隠れていることに気付いたようだった。
「……エレノア、行くぞ!」
「え、ちょっと!」
手を引かれて、バルコニーに出てきた私。
うーん。恥ずかしい…。
「エレノア…、さっき私がエレノアを『私の大切な人』と言ったことなのだが……」
ゴクリ……。思わず唾を飲み込む。
これってもしかして…
「もう気づいていると思うが…
私は…ずっとエレノアが好きだったんだ。」
生まれ変わって初めての告白で、どう反応していいのか分からなかった。
「……私をですか?」
「すまない。急にこんな事を言われても困るよな。
エレノアは私を何とも思っていないことは分かっているんだ。
でも、初めて会った時からずっと好きだった。エレノアが結婚した後も、諦められなかった。」
えっと…、初めて会った時っていつだっけ?
「公爵様。学生時代、私を生徒会というタダ働きの組織に縛り付けて、沢山の仕事を押し付けてくる当時の王子殿下を、私は悪魔としか見えていませんでした。
あの頃から私を好きだったなんて信じられませんわ。」
「悪魔か…。そうだよな、もっと優しく出来たらと、何度後悔したか分からない。
生徒会の仕事も、エレノアを側に置きたくて…。
悪かった。」
あ…、悪魔って正直に言い過ぎちゃったかな。
そんな傷付いた顔をしないでー!
「私こそ不敬でした。申し訳ありません。」
「いいんだ。いつでも本音を話してくれるエレノアを私は好きになのだから。」
うっ…。恥ずかしい…。
「私達が初めて会った時って、いつでしたか?」
「10歳の頃だ。母上が私のために開いてくれた茶会の時だ。」
「……。」
10歳の時だって?全然覚えてないし、その時からエレノアが好きだったの?
自分で聞いておきながら、答えを聞いて恥ずかしくなる私。顔が熱いわ…。
「エレノアは私が嫌いか?」
うっ…。そんなストレートに聞かないでよ。
「嫌いというか、その…、悪魔だとは思いましたけど、最近は、公爵様が実は優しい人だと分かってきましたので、嫌いではないです。」
「本当か?」
「それは本当ですわ。先程のこともですが、公爵様に色々と助けて頂いたことに対しては、嬉しく思っていますし。」
すると何を思ったのか、突然跪きだす公爵様…
「エレノア・ベネット伯爵令嬢。」
「…は、はい。」
「私、マテオ・ナイトレイは、貴女だけをずっと想い続けてきました。
生涯、貴女だけを愛し、幸せにすることを誓います。
私の婚約者になって頂けませんか?」
「………えっ?」
「エレノアの理想の夫になれるように努力する。
私は絶対に君を裏切らないし、大切にする。
本当に好きなんだ…。返事を聞かせて欲しい。」
必死な公爵様が可愛く見えてしまった。
おばちゃんは……
非常に悔しいけど…、
負けを認めます。
公爵様、アンタの粘り勝ちよ…
「……はい。よろしくお願いします。」
「エレノア!ありがとう。絶対に幸せにする。」
立ち上がって、私を抱きしめる公爵様。
ははっ…。そんなに分かりやすく喜ばないで。
悪魔だと思っていた男は、可愛い子犬に成長したようだ。
パチパチ…
んっ?何で拍手が…?
気付くと、バルコニーの周りに人だかりが出来て、私の親友のエイミー達や、公爵様の友人達、そして知らない人達から祝福(?)の拍手を送られていた。
恥ずかしすぎて死ぬかと思った…
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