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寝落ち
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独身に戻った私は、学生時代の友人達と出掛けたり、お茶会をしたりと、充実した休日を過ごしていた。
そして今日は、みんなで観劇に出掛ける約束をしている日。
席の予約は友人が手配済みだから、受付に名前を言えば、席に案内してくれると言われて会場入りした私。
しかし、会場の従業員が案内してくれたのは、明らかに普通の席ではなかった。
ステージ正面の2階のこの広過ぎるスペースは、王族の席じゃないの?
「あっ、エレノア!待ってたわよ。遅いわね!」
親友のエイミーが私に気づいて話しかけてきた。
ん?女同士かと思いきや、令息もいる。あ、同じクラスだった人達だわ。
「ナイトレイ公爵様が、王族用の広い席を手配してくれたのよ。
せっかくだから、クラスのメンバーに声をかけようってなったの。」
確かに令嬢が私とエイミーを入れて4人に令息が4人いるようだ。
「エレノア。席、そこが空いているわよ。」
「ありがとう。失礼します。」
すでにみんな座っていたので、空いている席に向かう私。
「エレノア、久しぶりだな。」
席を取ってくれた本人が私の隣に座っていたようだ。
「ナイトレイ公爵様、今日はこんなに素晴らしい席を手配してくださってありがとうございます。」
「偶然空いていただけだ。」
「ふふっ。その偶然に感謝致しますわ。」
「それは良かったよ。」
観劇は、長年の付き合いであった婚約者に、別に好きな人がいることを知ってしまった主人公が、婚約者のために身を引くべきかどうかで悩む内容だったと思うのだが…。
内容をはっきり覚えていないのは、私が後半、寝落ちしてしまったから。今日のために、昨日遅くまで仕事をしていた私は、若干の寝不足だったのだ。
パチっと目覚めた時には、すでに演目は終わっていて…、あれっ?私寝ちゃってた…。
えっ?私誰かの肩に寄りかかっていた…?
「エレノア…?起きたのか?」
声が、すごーく近くから聞こえてくる。
やってしまった!!
「…も、申し訳ありません!うっかり眠ってしまった上に、公爵様の肩まで借りてしまいました。」
どうやら私は、隣りに座るナイトレイ公爵様の肩に寄りかかって眠ってしまったようで、私と公爵様以外の姿はすでに消えていた。
みんな、起こしてよ!
拍手や喝采とか大きな音がしているはずなのに、それでも目覚めないくらい深く眠ってしまった自分に呆れる私。
「いや、気にするな。疲れて眠ってしまったのだろう?
エレノアは毎日忙しいのだろうからな。」
「本当に申し訳ありませんでした。
公爵様にご迷惑をお掛けしてしまいましたわ。
叩き起こしてしまって構いませんでしたのに…。」
「みんな、エレノアが疲れているようだから寝かせてやれと言っていたぞ。それにみんなが帰ってから、また数分くらいしか経ってないから気にするな。」
こんな場所でそんな配慮は要らないから!
「本当にお恥ずかしいですわ。
忙しい公爵様の時間を無駄にしてしまって申し訳ありませんでした。」
「私は今日は一日休みだから気にするな。
エレノアはこの後、何か予定でもあるのか?」
「いえ、私も今日は一日休みですので、この後は特に予定はありませんわ。」
友人達と食事でも行くのかと思っていたのに、私を見捨てて帰ってしまったようだからね。
「そうか…。じゃあ、私の食事に付き合ってくれないか?」
2人で行くってことだよね…?うーん、2人で食事に行って大丈夫かな?また噂話とかされるの嫌なんだけど。
「2人ででしょうか?」
「みんな帰ってしまったからな。
……駄目か?」
そんな捨てられた子犬のような目で見ないで欲しい。
肩に寄りかかって、迷惑までかけてしまった私には拒否権などあるはずもなく……。
「…お供させて頂きますわ。」
うっ…。そんな分かりやすく嬉しそうな顔をしないでよ。
「良かった!じゃあ、すぐに行こう。」
公爵様は私の手を取って歩きだす。
私達のその様子を、観劇会場にいた人達に見られまくり、私と公爵様は恋人同士だと噂になるまでに時間は掛からなかった……
そして今日は、みんなで観劇に出掛ける約束をしている日。
席の予約は友人が手配済みだから、受付に名前を言えば、席に案内してくれると言われて会場入りした私。
しかし、会場の従業員が案内してくれたのは、明らかに普通の席ではなかった。
ステージ正面の2階のこの広過ぎるスペースは、王族の席じゃないの?
「あっ、エレノア!待ってたわよ。遅いわね!」
親友のエイミーが私に気づいて話しかけてきた。
ん?女同士かと思いきや、令息もいる。あ、同じクラスだった人達だわ。
「ナイトレイ公爵様が、王族用の広い席を手配してくれたのよ。
せっかくだから、クラスのメンバーに声をかけようってなったの。」
確かに令嬢が私とエイミーを入れて4人に令息が4人いるようだ。
「エレノア。席、そこが空いているわよ。」
「ありがとう。失礼します。」
すでにみんな座っていたので、空いている席に向かう私。
「エレノア、久しぶりだな。」
席を取ってくれた本人が私の隣に座っていたようだ。
「ナイトレイ公爵様、今日はこんなに素晴らしい席を手配してくださってありがとうございます。」
「偶然空いていただけだ。」
「ふふっ。その偶然に感謝致しますわ。」
「それは良かったよ。」
観劇は、長年の付き合いであった婚約者に、別に好きな人がいることを知ってしまった主人公が、婚約者のために身を引くべきかどうかで悩む内容だったと思うのだが…。
内容をはっきり覚えていないのは、私が後半、寝落ちしてしまったから。今日のために、昨日遅くまで仕事をしていた私は、若干の寝不足だったのだ。
パチっと目覚めた時には、すでに演目は終わっていて…、あれっ?私寝ちゃってた…。
えっ?私誰かの肩に寄りかかっていた…?
「エレノア…?起きたのか?」
声が、すごーく近くから聞こえてくる。
やってしまった!!
「…も、申し訳ありません!うっかり眠ってしまった上に、公爵様の肩まで借りてしまいました。」
どうやら私は、隣りに座るナイトレイ公爵様の肩に寄りかかって眠ってしまったようで、私と公爵様以外の姿はすでに消えていた。
みんな、起こしてよ!
拍手や喝采とか大きな音がしているはずなのに、それでも目覚めないくらい深く眠ってしまった自分に呆れる私。
「いや、気にするな。疲れて眠ってしまったのだろう?
エレノアは毎日忙しいのだろうからな。」
「本当に申し訳ありませんでした。
公爵様にご迷惑をお掛けしてしまいましたわ。
叩き起こしてしまって構いませんでしたのに…。」
「みんな、エレノアが疲れているようだから寝かせてやれと言っていたぞ。それにみんなが帰ってから、また数分くらいしか経ってないから気にするな。」
こんな場所でそんな配慮は要らないから!
「本当にお恥ずかしいですわ。
忙しい公爵様の時間を無駄にしてしまって申し訳ありませんでした。」
「私は今日は一日休みだから気にするな。
エレノアはこの後、何か予定でもあるのか?」
「いえ、私も今日は一日休みですので、この後は特に予定はありませんわ。」
友人達と食事でも行くのかと思っていたのに、私を見捨てて帰ってしまったようだからね。
「そうか…。じゃあ、私の食事に付き合ってくれないか?」
2人で行くってことだよね…?うーん、2人で食事に行って大丈夫かな?また噂話とかされるの嫌なんだけど。
「2人ででしょうか?」
「みんな帰ってしまったからな。
……駄目か?」
そんな捨てられた子犬のような目で見ないで欲しい。
肩に寄りかかって、迷惑までかけてしまった私には拒否権などあるはずもなく……。
「…お供させて頂きますわ。」
うっ…。そんな分かりやすく嬉しそうな顔をしないでよ。
「良かった!じゃあ、すぐに行こう。」
公爵様は私の手を取って歩きだす。
私達のその様子を、観劇会場にいた人達に見られまくり、私と公爵様は恋人同士だと噂になるまでに時間は掛からなかった……
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