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弟をよろしく
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ダンスを一曲踊り終えた時だった。
「ナイトレイ公爵様。国王陛下と王妃殿下がお呼びでございます。」
国王陛下とは、公爵様のお兄様ですよね…。
「今行く。ちょうど挨拶に行こうと思っていたんだ。
エレノア、兄上に挨拶に行ってこよう。」
「…そうですわね。」
公爵様は笑顔でいるけど、私はこのドレスのことで陛下達に迷惑をかけた話をデザイナーさんに聞いているから、何となく気不味いな…。
ご機嫌で私の手を取って歩き出す公爵様。
相変わらず、周りからは視線を感じるし。
国王陛下と王妃殿下は、挨拶に来たと思われる沢山の貴族に囲まれていた。
しかし、公爵様と私が来た事に気づいた貴族達は、サッと退いてくれ…、私達の目の前には、国王陛下と王妃殿下の元に続く一本道のようなものが出来ていた。
何これ…?怖い。しかもまた注目されているし。
そんな中でも、普通に堂々としている公爵様は凄いわ。こういうのって、育ちがでるよね。
「マテオ。パーティーは楽しんでいるか?」
「国王陛下のご配慮のおかげで、大変素晴らしい時間を過ごせております。」
「それは良かった。
ベネット伯爵令嬢、今日は来てくれて感謝する。」
「国王陛下。御即位おめでとうございます。
本日は、このようなおめでたい席にご招待してくださってありがとうございます。」
「ベネット伯爵令嬢、これからも弟をよろしくな。
弟が贈ったドレスは、弟が必死に考えてデザインしたものなのだが、ベネット伯爵令嬢によく似合っているな。
私と妃と母の3人で、デザインのアドバイスまでした甲斐があったよ。」
国王陛下の声は、さすが一国一城の主なだけあって、堂々としたよく通る声をしている。
なので…、その話は周りで聞き耳を立てている貴族達にも聞こえてしまっている訳で……
「まあ!公爵様がプレゼントしたドレスですって!」
「素敵だわー!」
「よくお似合いよね!」
外野が騒がしくなるのが分かった。
やめてー!私を見ないでー!
「あ、ありがとうございます。とても素敵なドレスで、た…、大切にしたいと思いますわ。」
顔が引き攣りそうになりながら、この言葉を言うのが精一杯な私。
「兄上!余計なことをエレノアに話さないで下さい!」
公爵様まで慌てているのか、さっきは〝陛下〟呼びしていたのに、〝兄上〟呼びに戻っているわ…。この兄弟って、仲が良いって聞くよね。
「マテオは初めて贈るプレゼントだからと、とにかく張り切っていたんだ。
そのネックレスも私と妃は、重過ぎてベネット伯爵令嬢の首が可哀想だから程々にしろと話をしたのだ。しかし、それだけは折れてくれなかったんだよな。」
「ええ…。私はあまりに重過ぎると嫌われてしまうとまで公爵様には助言をしたのですが。
ベネット伯爵令嬢は、あまりにも重い者はお好きではないでしょう?」
王妃殿下まで…。
「な、何事も程々が一番かと思いますわ。」
「やはりそう思うでしょ?私も公爵様の義理の姉として、義弟があまり暴走しないように、気をつけて見守るようにしますから、これからも仲良くしてあげてね。」
「は、はい。」
「マテオ、良かったな。
ベネット伯爵令嬢はお前と仲良くしてくれるそうだ。
今度、マテオとベネット伯爵令嬢と私達で茶会でもしたいな。」
「そうですわね!近々、私からベネット伯爵令嬢に招待状を送りましょうね。」
「…こ、光栄ですわ。」
その後、色々あったがよく覚えていない…。
翌日。
「義姉さん…、もうナイトレイ公爵様で良いんじゃない?」
「は…?何言ってんのよ?」
あのギルが真顔で話している。冗談を言っているようには見えない。
「昨日のパーティーで、国王陛下と王妃殿下、ナイトレイ公爵様に、完全に外堀を埋められてしまっていたじゃないか。
国王陛下も、周りにアピールするようにわざわざあの場で、公爵様が義姉さんに贈ったプレゼントの話をしているし、王妃殿下も公爵様と仲良くしてあげてなんて言っていたでしょう?何より、あの独占欲の塊のようなネックレス…。
私は友人達から、義姉さんと公爵様はいつ婚約したんだって聞かれたんだよ。
とにかく、あの場にいた貴族達は、国王陛下と王妃殿下が公認のお付き合いをしているって思ったはずだろうね。」
「付き合ってないわ!」
「ナイトレイ公爵様ならいいと思うよ。一途な男って感じだし、仕事は出来るし、陛下とも仲がいい兄弟みたいだしね。
義姉さんは、よくロジャース伯爵は私を金蔓としか思っていないとか口にしていたけど、公爵様なら王族で金持ちだから、金蔓にされる心配はなさそうだし。
あの方なら、義姉さんを大切にしてくれそうな気がする。」
「ギルはあの男の差し金なの?」
「違うよ。……私は、たった1人の大切な義姉に幸せになって欲しいだけ。」
ジーン…。
ギルは今日も可愛いわ。
「義姉さん。ここだけの話なんだけど、少し前にボルチャコフ侯爵家から縁談の申込みがあったらしいよ。」
「え?あのしつこい侯爵子息?」
ボルチャコフ侯爵子息は、ロジャース伯爵様と婚約する前にしつこくされて苦手だった子息だ。
待ち伏せされたり、強引に人気のない所に連れて行かれそうになったり、大嫌いだったんだよね。
「白い結婚とはいえ、まだ別れたばかりだからと言って義父上は断っていたようだけど。
あのしつこい男は簡単には諦めないだろうから、身分の高いナイトレイ公爵様が近くにいてくれたら便利かもね。」
「……。」
正直なところ、あのしつこいボルチャコフ侯爵子息よりは、ナイトレイ公爵様の方が100倍マシだと思った私だ。
「ナイトレイ公爵様。国王陛下と王妃殿下がお呼びでございます。」
国王陛下とは、公爵様のお兄様ですよね…。
「今行く。ちょうど挨拶に行こうと思っていたんだ。
エレノア、兄上に挨拶に行ってこよう。」
「…そうですわね。」
公爵様は笑顔でいるけど、私はこのドレスのことで陛下達に迷惑をかけた話をデザイナーさんに聞いているから、何となく気不味いな…。
ご機嫌で私の手を取って歩き出す公爵様。
相変わらず、周りからは視線を感じるし。
国王陛下と王妃殿下は、挨拶に来たと思われる沢山の貴族に囲まれていた。
しかし、公爵様と私が来た事に気づいた貴族達は、サッと退いてくれ…、私達の目の前には、国王陛下と王妃殿下の元に続く一本道のようなものが出来ていた。
何これ…?怖い。しかもまた注目されているし。
そんな中でも、普通に堂々としている公爵様は凄いわ。こういうのって、育ちがでるよね。
「マテオ。パーティーは楽しんでいるか?」
「国王陛下のご配慮のおかげで、大変素晴らしい時間を過ごせております。」
「それは良かった。
ベネット伯爵令嬢、今日は来てくれて感謝する。」
「国王陛下。御即位おめでとうございます。
本日は、このようなおめでたい席にご招待してくださってありがとうございます。」
「ベネット伯爵令嬢、これからも弟をよろしくな。
弟が贈ったドレスは、弟が必死に考えてデザインしたものなのだが、ベネット伯爵令嬢によく似合っているな。
私と妃と母の3人で、デザインのアドバイスまでした甲斐があったよ。」
国王陛下の声は、さすが一国一城の主なだけあって、堂々としたよく通る声をしている。
なので…、その話は周りで聞き耳を立てている貴族達にも聞こえてしまっている訳で……
「まあ!公爵様がプレゼントしたドレスですって!」
「素敵だわー!」
「よくお似合いよね!」
外野が騒がしくなるのが分かった。
やめてー!私を見ないでー!
「あ、ありがとうございます。とても素敵なドレスで、た…、大切にしたいと思いますわ。」
顔が引き攣りそうになりながら、この言葉を言うのが精一杯な私。
「兄上!余計なことをエレノアに話さないで下さい!」
公爵様まで慌てているのか、さっきは〝陛下〟呼びしていたのに、〝兄上〟呼びに戻っているわ…。この兄弟って、仲が良いって聞くよね。
「マテオは初めて贈るプレゼントだからと、とにかく張り切っていたんだ。
そのネックレスも私と妃は、重過ぎてベネット伯爵令嬢の首が可哀想だから程々にしろと話をしたのだ。しかし、それだけは折れてくれなかったんだよな。」
「ええ…。私はあまりに重過ぎると嫌われてしまうとまで公爵様には助言をしたのですが。
ベネット伯爵令嬢は、あまりにも重い者はお好きではないでしょう?」
王妃殿下まで…。
「な、何事も程々が一番かと思いますわ。」
「やはりそう思うでしょ?私も公爵様の義理の姉として、義弟があまり暴走しないように、気をつけて見守るようにしますから、これからも仲良くしてあげてね。」
「は、はい。」
「マテオ、良かったな。
ベネット伯爵令嬢はお前と仲良くしてくれるそうだ。
今度、マテオとベネット伯爵令嬢と私達で茶会でもしたいな。」
「そうですわね!近々、私からベネット伯爵令嬢に招待状を送りましょうね。」
「…こ、光栄ですわ。」
その後、色々あったがよく覚えていない…。
翌日。
「義姉さん…、もうナイトレイ公爵様で良いんじゃない?」
「は…?何言ってんのよ?」
あのギルが真顔で話している。冗談を言っているようには見えない。
「昨日のパーティーで、国王陛下と王妃殿下、ナイトレイ公爵様に、完全に外堀を埋められてしまっていたじゃないか。
国王陛下も、周りにアピールするようにわざわざあの場で、公爵様が義姉さんに贈ったプレゼントの話をしているし、王妃殿下も公爵様と仲良くしてあげてなんて言っていたでしょう?何より、あの独占欲の塊のようなネックレス…。
私は友人達から、義姉さんと公爵様はいつ婚約したんだって聞かれたんだよ。
とにかく、あの場にいた貴族達は、国王陛下と王妃殿下が公認のお付き合いをしているって思ったはずだろうね。」
「付き合ってないわ!」
「ナイトレイ公爵様ならいいと思うよ。一途な男って感じだし、仕事は出来るし、陛下とも仲がいい兄弟みたいだしね。
義姉さんは、よくロジャース伯爵は私を金蔓としか思っていないとか口にしていたけど、公爵様なら王族で金持ちだから、金蔓にされる心配はなさそうだし。
あの方なら、義姉さんを大切にしてくれそうな気がする。」
「ギルはあの男の差し金なの?」
「違うよ。……私は、たった1人の大切な義姉に幸せになって欲しいだけ。」
ジーン…。
ギルは今日も可愛いわ。
「義姉さん。ここだけの話なんだけど、少し前にボルチャコフ侯爵家から縁談の申込みがあったらしいよ。」
「え?あのしつこい侯爵子息?」
ボルチャコフ侯爵子息は、ロジャース伯爵様と婚約する前にしつこくされて苦手だった子息だ。
待ち伏せされたり、強引に人気のない所に連れて行かれそうになったり、大嫌いだったんだよね。
「白い結婚とはいえ、まだ別れたばかりだからと言って義父上は断っていたようだけど。
あのしつこい男は簡単には諦めないだろうから、身分の高いナイトレイ公爵様が近くにいてくれたら便利かもね。」
「……。」
正直なところ、あのしつこいボルチャコフ侯爵子息よりは、ナイトレイ公爵様の方が100倍マシだと思った私だ。
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