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パーティー
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疲れた表情のデザイナーさんは、ため息をつきながら話を続ける。
「ベネット伯爵令嬢は、そのネックレスを色々な意味で重いと感じているかもしれませんが、これでもまだ抑えた方なのですわ。」
「…抑えたとは?」
「実は王子殿下は、ドレスにも強い拘りがあったようでして、アメジストと同じような色鮮やかな紫の色のドレスにして欲しいとオーダーされました。」
アメジストと同じような色鮮やかな紫だって…?
あの男は何を考えているのよ!
「しかしベネット伯爵令嬢は、派手な色味はやめて欲しいと話されておりましたし、ハッキリとした紫色のドレスは、ご令嬢よりは王妃殿下から上の年齢の方向きだと思いまして…。」
「ええ、そうですわね。それで…?」
「そのことを私から話をさせて頂いたのですが、王子殿下はなかなか納得されませんでしたので、王妃殿下や王太子殿下、王太子妃殿下から話をしてもらいましたの。」
ヤバいわ。顔が引き攣ってきた…。
あの男はドレスごときで、他のロイヤルファミリーから苦言を呈されたのね。
「殿下を止めて下さってありがとうございました。」
「いえ。私では力不足でしたので、王妃殿下に報告させて頂いただけですわ。
王妃殿下は王太子殿下夫妻をすぐに召集された後、王子殿下をお呼びだしして、お話をしてくれましたの。
御三方から説得されまして、ドレスの色味をこちらの淡い色に変更することになりましたわ。」
「そ、そうだったのですね。
色々とご迷惑をおかけ致しましたわ。」
「いえ、ベネット伯爵令嬢は気になさらないでください。
ドレスに関してそのようなことがあったので、王子殿下はそのアメジストのネックレスに対しての思い入れが強いと思いますわ。」
「そ、そうですのね。教えて下さってありがとうございました。」
疲れ切っているデザイナーさんに、試作品で作らせた、いちごジャムのギフトセットをプレゼントしたら、喜んでくれたから良かった。
あっという間に数日が経ち、戴冠式を迎える。
戴冠式は爵位を持つ者とその配偶者のみの参加だった為、うちからはお父様とお母様が参加したようだ。
戴冠式の最後に、王子殿下が臣籍降下してナイトレイ公爵となったことが発表されたらしい。
そしてパーティーの日。
メイド達は目をキラキラさせて、私の準備を頑張ってくれた。
「まあ!こんな素敵なドレスは初めて見ましたわ。
公爵様はお嬢様を大切に思ってらっしゃるのですね。」
「こんなに綺麗なダイヤモンドが沢山ついたドレスを贈って下さるなんて、さすが公爵様ですわ!」
「…貴女達、その話はもうお終いよ。
お金持ちの公爵様が、たまたま友人の私に贈って下さっただけだからね。
まぁ、金持ちの道楽とでも思ってちょうだい。変な誤解をして、変な噂を流したりしないでね。」
「……か、畏まりました。」
「申し訳ありません。」
「お嬢様、こちらのネックレスはどうされますか?
今着けてしまってもいいのでしょうか?」
「……公爵様に聞きたいことがあるから、公爵様が迎えに来てからにするわ。」
このネックレスを私が着ける必要があるのか、あの男にはっきり聞いてから着けよう。
メイド達はまた勘違いして、ニコニコしているけど、もうスルーすることに決めた。
少し前まで王子殿下とお呼びしていたナイトレイ公爵様は、満面の笑みで約束の時間ピッタリに迎えに来られた。
「エレノア…、今日は君をエスコート出来ることを嬉しく思う。
ドレスもよく似合っているな。
んっ?……ネックレスは着けてないのか?」
「ナイトレイ公爵様、今日はどうぞよろしくお願い致します。
こんなに素敵なドレスを贈っていただいて、感謝しておりますわ。
私…、淡い色が好きなので、このドレスをとても気に入っておりますのよ。さすが、王妃殿下が贔屓にしているデザイナーですわね。
本当にありがとうございます。」
淡い色が好きって、あえて言うことにした。
「淡い色が好きなのか…。き、気に入ってくれて良かった。」
「公爵様。ところで、この素晴らし過ぎるネックレスは私が着けてもよろしいのでしょうか?
このようなネックレスは、私には過分な御心遣いのような気がしまして、大変恐縮しておりますわ。」
「このネックレスは私がエレノアにどうしても贈りたいと思って用意したのだ。
エレノアは、こういうのは嫌いか?」
そんな泣きそうな顔で言わないでよー!
アンタ、そんな表情できたのね!
「き、嫌いという訳ではないのですが……」
「そうか!じゃあ、問題ないな。どれ、私が着けてやろう!」
「えっ…?ちょっと、殿下…じゃなくて、公爵様!」
「ほら、エレノア動くなよ。
……ああ、やっぱりよく似合っている。」
メイド達から『キャッ』とか声が上がっている……
はあー、やられたわ!
「エレノア、行こうか?」
「…はい。よろしくお願いします。」
非常にご機嫌な様子の公爵様と私は、パーティーに出発したのであった。
「ベネット伯爵令嬢は、そのネックレスを色々な意味で重いと感じているかもしれませんが、これでもまだ抑えた方なのですわ。」
「…抑えたとは?」
「実は王子殿下は、ドレスにも強い拘りがあったようでして、アメジストと同じような色鮮やかな紫の色のドレスにして欲しいとオーダーされました。」
アメジストと同じような色鮮やかな紫だって…?
あの男は何を考えているのよ!
「しかしベネット伯爵令嬢は、派手な色味はやめて欲しいと話されておりましたし、ハッキリとした紫色のドレスは、ご令嬢よりは王妃殿下から上の年齢の方向きだと思いまして…。」
「ええ、そうですわね。それで…?」
「そのことを私から話をさせて頂いたのですが、王子殿下はなかなか納得されませんでしたので、王妃殿下や王太子殿下、王太子妃殿下から話をしてもらいましたの。」
ヤバいわ。顔が引き攣ってきた…。
あの男はドレスごときで、他のロイヤルファミリーから苦言を呈されたのね。
「殿下を止めて下さってありがとうございました。」
「いえ。私では力不足でしたので、王妃殿下に報告させて頂いただけですわ。
王妃殿下は王太子殿下夫妻をすぐに召集された後、王子殿下をお呼びだしして、お話をしてくれましたの。
御三方から説得されまして、ドレスの色味をこちらの淡い色に変更することになりましたわ。」
「そ、そうだったのですね。
色々とご迷惑をおかけ致しましたわ。」
「いえ、ベネット伯爵令嬢は気になさらないでください。
ドレスに関してそのようなことがあったので、王子殿下はそのアメジストのネックレスに対しての思い入れが強いと思いますわ。」
「そ、そうですのね。教えて下さってありがとうございました。」
疲れ切っているデザイナーさんに、試作品で作らせた、いちごジャムのギフトセットをプレゼントしたら、喜んでくれたから良かった。
あっという間に数日が経ち、戴冠式を迎える。
戴冠式は爵位を持つ者とその配偶者のみの参加だった為、うちからはお父様とお母様が参加したようだ。
戴冠式の最後に、王子殿下が臣籍降下してナイトレイ公爵となったことが発表されたらしい。
そしてパーティーの日。
メイド達は目をキラキラさせて、私の準備を頑張ってくれた。
「まあ!こんな素敵なドレスは初めて見ましたわ。
公爵様はお嬢様を大切に思ってらっしゃるのですね。」
「こんなに綺麗なダイヤモンドが沢山ついたドレスを贈って下さるなんて、さすが公爵様ですわ!」
「…貴女達、その話はもうお終いよ。
お金持ちの公爵様が、たまたま友人の私に贈って下さっただけだからね。
まぁ、金持ちの道楽とでも思ってちょうだい。変な誤解をして、変な噂を流したりしないでね。」
「……か、畏まりました。」
「申し訳ありません。」
「お嬢様、こちらのネックレスはどうされますか?
今着けてしまってもいいのでしょうか?」
「……公爵様に聞きたいことがあるから、公爵様が迎えに来てからにするわ。」
このネックレスを私が着ける必要があるのか、あの男にはっきり聞いてから着けよう。
メイド達はまた勘違いして、ニコニコしているけど、もうスルーすることに決めた。
少し前まで王子殿下とお呼びしていたナイトレイ公爵様は、満面の笑みで約束の時間ピッタリに迎えに来られた。
「エレノア…、今日は君をエスコート出来ることを嬉しく思う。
ドレスもよく似合っているな。
んっ?……ネックレスは着けてないのか?」
「ナイトレイ公爵様、今日はどうぞよろしくお願い致します。
こんなに素敵なドレスを贈っていただいて、感謝しておりますわ。
私…、淡い色が好きなので、このドレスをとても気に入っておりますのよ。さすが、王妃殿下が贔屓にしているデザイナーですわね。
本当にありがとうございます。」
淡い色が好きって、あえて言うことにした。
「淡い色が好きなのか…。き、気に入ってくれて良かった。」
「公爵様。ところで、この素晴らし過ぎるネックレスは私が着けてもよろしいのでしょうか?
このようなネックレスは、私には過分な御心遣いのような気がしまして、大変恐縮しておりますわ。」
「このネックレスは私がエレノアにどうしても贈りたいと思って用意したのだ。
エレノアは、こういうのは嫌いか?」
そんな泣きそうな顔で言わないでよー!
アンタ、そんな表情できたのね!
「き、嫌いという訳ではないのですが……」
「そうか!じゃあ、問題ないな。どれ、私が着けてやろう!」
「えっ…?ちょっと、殿下…じゃなくて、公爵様!」
「ほら、エレノア動くなよ。
……ああ、やっぱりよく似合っている。」
メイド達から『キャッ』とか声が上がっている……
はあー、やられたわ!
「エレノア、行こうか?」
「…はい。よろしくお願いします。」
非常にご機嫌な様子の公爵様と私は、パーティーに出発したのであった。
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