君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

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閑話 ロジャース伯爵

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「あの女は、妻として夫からプレゼントされたドレスを着たいと言っていたというが、それは女性ならみんなそう思うのだろうか?」


 トーマスは私の質問に対して冷たい目を向けてくる。


「当たり前というか普通のことでしょう。
 妻や婚約者と言う立場では、誕生日や記念日などのプレゼントは愛情の目安となるものかと。」

「全く考えたことがなかったな…。」

「旦那様のご両親は夫婦関係が終わっていましたし、愛人の所に住んでいた前伯爵様は、自分の妻や息子にプレゼントを贈ったり、誕生日などを祝うなんてことはしませんでしたからね。旦那様のお母上も自分の子供には興味がなく、誕生日や記念日などをお祝いするよなことはなさいませんでした。
 そんな両親を見て育てば、プレゼントや誕生日や記念日が、どれくらい大切なのかを知ることが出来なかったのは仕方がないのかもしれませんがね…。
 更に旦那様の奥様であるエレノア様も、伯爵家が貧しいことを気にしてか、旦那様にはプレゼントを強請ったりはしないお方でしたし、結婚してからも誕生日も結婚記念日もお祝いしなくてよいと話されていましたので、私達は特に何もしてきませんでした。旦那様も全く興味がないようでしたので。」

「興味がない訳ではない!」

「私は婚約期間中に何度も申し上げたはずですよ。
 エレノア様が遠慮して何もいらないと言ったとしても、形だけでもいいから何かを贈ったり、お祝いしてあげてはどうですかと。
 その時の旦那様は、本人が必要ないと言っているなら無理にしなくていいとか、実家でお祝いをしているようだから、私がしなくても大丈夫だとか言って、全然話を聞いてくれませんでしたよね。」

「……何も考えてなかった。」

「旦那様はエレノア様の誕生日を覚えていますか?何かをしてあげたいと思ったことはありますか?妻であるエレノア様を知ろうと考えたことはありますか?…ないですよね?
 エレノア様からは無関心で冷たい夫に見えるでしょう。
 そして旦那様は媚薬を盛られたとはいえ、他の女とまぐわい、第二夫人まで作られて…。1番お辛いのはエレノア様です。
 旦那様はもうすぐ捨てられます。私がエレノア様なら、どんな手を使ってでも離縁したいと考えますね。」

「私は離縁しないし、そのことはエレノアにも伝えている。」

「そう思うならもっと色々考えて行動してください。今の旦那様はエレノア様を大切にしているようには見えません。口先だけで愛していると言っているように見えますし、全く信用出来ませんよ。」

「分かった…。」


 トーマスから言われて、今までの自分ではいけないと考えた私は、今度の夜会で着るドレスを贈りたいということを手紙に書いて渡してもらうことにした。
 しかしエレノアからはドレスは沢山あるのでお気持ちだけ頂きますという返事が届く。
 今までしてこなかったことを急にやろうとしたから、警戒でもされたのかもしれない。

 だったら、王宮の夜会ではエレノアだけをエスコートして、私が大切なのは正妻であるエレノアだけなのだと誰が見ても分かるようにしようと考えていた。
 しかし夜会当日、エレノアの義弟がエレノアをエスコートすると迎えに来る。エレノアからは、今日は第二夫人と初めての夜会なのだから、第二夫人をエスコートしてあげるようにと言われてしまうのだった。

 そんなエレノアに対して、凄い目つきでみる第二夫人のあの女。
 何なんだ?あの趣味の悪い娼婦みたいなドレスは…?清楚で上品なエレノアとは大違いだ。

 夜会では、王妃殿下からは泥棒猫と呼ばれ、王子殿下からは卑しい娼婦とまで言われていた。自分がしたことを言われているだけなのに自分が悪いとは思っていないのか、エレノアへの態度があまりにも酷い。
 

 エレノアではなく、あの女を連れていた私に友人達は…


「アラン、今日は夫人はいないのか?
 そんな女ではなく夫人を大切にしろよ。」

「夫人を守れよ!あんなことをするくらいだから、正妻が邪魔だからと毒を盛ることくらいするかもしれないぞ。気を付けろ。」

「ロジャース伯爵様。私は夫人にお会いしたかったのですわ。そちらはどこの娼館のお方かしら?」

「ロジャース夫人に挨拶がしたかったのですが、残念ですわ。」


 散々な言われようだった…


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