96 / 125
閑話 ロジャース伯爵
しおりを挟む
「あの女は、妻として夫からプレゼントされたドレスを着たいと言っていたというが、それは女性ならみんなそう思うのだろうか?」
トーマスは私の質問に対して冷たい目を向けてくる。
「当たり前というか普通のことでしょう。
妻や婚約者と言う立場では、誕生日や記念日などのプレゼントは愛情の目安となるものかと。」
「全く考えたことがなかったな…。」
「旦那様のご両親は夫婦関係が終わっていましたし、愛人の所に住んでいた前伯爵様は、自分の妻や息子にプレゼントを贈ったり、誕生日などを祝うなんてことはしませんでしたからね。旦那様のお母上も自分の子供には興味がなく、誕生日や記念日などをお祝いするよなことはなさいませんでした。
そんな両親を見て育てば、プレゼントや誕生日や記念日が、どれくらい大切なのかを知ることが出来なかったのは仕方がないのかもしれませんがね…。
更に旦那様の奥様であるエレノア様も、伯爵家が貧しいことを気にしてか、旦那様にはプレゼントを強請ったりはしないお方でしたし、結婚してからも誕生日も結婚記念日もお祝いしなくてよいと話されていましたので、私達は特に何もしてきませんでした。旦那様も全く興味がないようでしたので。」
「興味がない訳ではない!」
「私は婚約期間中に何度も申し上げたはずですよ。
エレノア様が遠慮して何もいらないと言ったとしても、形だけでもいいから何かを贈ったり、お祝いしてあげてはどうですかと。
その時の旦那様は、本人が必要ないと言っているなら無理にしなくていいとか、実家でお祝いをしているようだから、私がしなくても大丈夫だとか言って、全然話を聞いてくれませんでしたよね。」
「……何も考えてなかった。」
「旦那様はエレノア様の誕生日を覚えていますか?何かをしてあげたいと思ったことはありますか?妻であるエレノア様を知ろうと考えたことはありますか?…ないですよね?
エレノア様からは無関心で冷たい夫に見えるでしょう。
そして旦那様は媚薬を盛られたとはいえ、他の女とまぐわい、第二夫人まで作られて…。1番お辛いのはエレノア様です。
旦那様はもうすぐ捨てられます。私がエレノア様なら、どんな手を使ってでも離縁したいと考えますね。」
「私は離縁しないし、そのことはエレノアにも伝えている。」
「そう思うならもっと色々考えて行動してください。今の旦那様はエレノア様を大切にしているようには見えません。口先だけで愛していると言っているように見えますし、全く信用出来ませんよ。」
「分かった…。」
トーマスから言われて、今までの自分ではいけないと考えた私は、今度の夜会で着るドレスを贈りたいということを手紙に書いて渡してもらうことにした。
しかしエレノアからはドレスは沢山あるのでお気持ちだけ頂きますという返事が届く。
今までしてこなかったことを急にやろうとしたから、警戒でもされたのかもしれない。
だったら、王宮の夜会ではエレノアだけをエスコートして、私が大切なのは正妻であるエレノアだけなのだと誰が見ても分かるようにしようと考えていた。
しかし夜会当日、エレノアの義弟がエレノアをエスコートすると迎えに来る。エレノアからは、今日は第二夫人と初めての夜会なのだから、第二夫人をエスコートしてあげるようにと言われてしまうのだった。
そんなエレノアに対して、凄い目つきでみる第二夫人のあの女。
何なんだ?あの趣味の悪い娼婦みたいなドレスは…?清楚で上品なエレノアとは大違いだ。
夜会では、王妃殿下からは泥棒猫と呼ばれ、王子殿下からは卑しい娼婦とまで言われていた。自分がしたことを言われているだけなのに自分が悪いとは思っていないのか、エレノアへの態度があまりにも酷い。
エレノアではなく、あの女を連れていた私に友人達は…
「アラン、今日は夫人はいないのか?
そんな女ではなく夫人を大切にしろよ。」
「夫人を守れよ!あんなことをするくらいだから、正妻が邪魔だからと毒を盛ることくらいするかもしれないぞ。気を付けろ。」
「ロジャース伯爵様。私は夫人にお会いしたかったのですわ。そちらはどこの娼館のお方かしら?」
「ロジャース夫人に挨拶がしたかったのですが、残念ですわ。」
散々な言われようだった…
トーマスは私の質問に対して冷たい目を向けてくる。
「当たり前というか普通のことでしょう。
妻や婚約者と言う立場では、誕生日や記念日などのプレゼントは愛情の目安となるものかと。」
「全く考えたことがなかったな…。」
「旦那様のご両親は夫婦関係が終わっていましたし、愛人の所に住んでいた前伯爵様は、自分の妻や息子にプレゼントを贈ったり、誕生日などを祝うなんてことはしませんでしたからね。旦那様のお母上も自分の子供には興味がなく、誕生日や記念日などをお祝いするよなことはなさいませんでした。
そんな両親を見て育てば、プレゼントや誕生日や記念日が、どれくらい大切なのかを知ることが出来なかったのは仕方がないのかもしれませんがね…。
更に旦那様の奥様であるエレノア様も、伯爵家が貧しいことを気にしてか、旦那様にはプレゼントを強請ったりはしないお方でしたし、結婚してからも誕生日も結婚記念日もお祝いしなくてよいと話されていましたので、私達は特に何もしてきませんでした。旦那様も全く興味がないようでしたので。」
「興味がない訳ではない!」
「私は婚約期間中に何度も申し上げたはずですよ。
エレノア様が遠慮して何もいらないと言ったとしても、形だけでもいいから何かを贈ったり、お祝いしてあげてはどうですかと。
その時の旦那様は、本人が必要ないと言っているなら無理にしなくていいとか、実家でお祝いをしているようだから、私がしなくても大丈夫だとか言って、全然話を聞いてくれませんでしたよね。」
「……何も考えてなかった。」
「旦那様はエレノア様の誕生日を覚えていますか?何かをしてあげたいと思ったことはありますか?妻であるエレノア様を知ろうと考えたことはありますか?…ないですよね?
エレノア様からは無関心で冷たい夫に見えるでしょう。
そして旦那様は媚薬を盛られたとはいえ、他の女とまぐわい、第二夫人まで作られて…。1番お辛いのはエレノア様です。
旦那様はもうすぐ捨てられます。私がエレノア様なら、どんな手を使ってでも離縁したいと考えますね。」
「私は離縁しないし、そのことはエレノアにも伝えている。」
「そう思うならもっと色々考えて行動してください。今の旦那様はエレノア様を大切にしているようには見えません。口先だけで愛していると言っているように見えますし、全く信用出来ませんよ。」
「分かった…。」
トーマスから言われて、今までの自分ではいけないと考えた私は、今度の夜会で着るドレスを贈りたいということを手紙に書いて渡してもらうことにした。
しかしエレノアからはドレスは沢山あるのでお気持ちだけ頂きますという返事が届く。
今までしてこなかったことを急にやろうとしたから、警戒でもされたのかもしれない。
だったら、王宮の夜会ではエレノアだけをエスコートして、私が大切なのは正妻であるエレノアだけなのだと誰が見ても分かるようにしようと考えていた。
しかし夜会当日、エレノアの義弟がエレノアをエスコートすると迎えに来る。エレノアからは、今日は第二夫人と初めての夜会なのだから、第二夫人をエスコートしてあげるようにと言われてしまうのだった。
そんなエレノアに対して、凄い目つきでみる第二夫人のあの女。
何なんだ?あの趣味の悪い娼婦みたいなドレスは…?清楚で上品なエレノアとは大違いだ。
夜会では、王妃殿下からは泥棒猫と呼ばれ、王子殿下からは卑しい娼婦とまで言われていた。自分がしたことを言われているだけなのに自分が悪いとは思っていないのか、エレノアへの態度があまりにも酷い。
エレノアではなく、あの女を連れていた私に友人達は…
「アラン、今日は夫人はいないのか?
そんな女ではなく夫人を大切にしろよ。」
「夫人を守れよ!あんなことをするくらいだから、正妻が邪魔だからと毒を盛ることくらいするかもしれないぞ。気を付けろ。」
「ロジャース伯爵様。私は夫人にお会いしたかったのですわ。そちらはどこの娼館のお方かしら?」
「ロジャース夫人に挨拶がしたかったのですが、残念ですわ。」
散々な言われようだった…
84
お気に入りに追加
6,596
あなたにおすすめの小説
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
貴方様の後悔など知りません。探さないで下さいませ。
ましろ
恋愛
「致しかねます」
「な!?」
「何故強姦魔の被害者探しを?見つけて如何なさるのです」
「勿論謝罪を!」
「それは貴方様の自己満足に過ぎませんよ」
今まで順風満帆だった侯爵令息オーガストはある罪を犯した。
ある令嬢に恋をし、失恋した翌朝。目覚めるとあからさまな事後の後。あれは夢ではなかったのか?
白い体、胸元のホクロ。暗めな髪色。『違います、お許し下さい』涙ながらに抵抗する声。覚えているのはそれだけ。だが……血痕あり。
私は誰を抱いたのだ?
泥酔して罪を犯した男と、それに巻き込まれる人々と、その恋の行方。
★以前、無理矢理ネタを考えた時の別案。
幸せな始まりでは無いので苦手な方はそっ閉じでお願いします。
いつでもご都合主義。ゆるふわ設定です。箸休め程度にお楽しみ頂けると幸いです。
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。
しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。
だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。
○○sideあり
全20話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる