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最後の夜会 2
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国王陛下の誕生祭で伯爵様とダンスを踊る鬼嫁。
このダンスは伯爵様との最後のダンス。
この男の妻を辞めたら、もう絶対に一緒にダンスなんて踊らないんだから!
これが2年前だったら、大好きなアラン様とダンスが踊れて幸せだわ、カッコいい、大好き…!なーんて考えながら、伯爵様に微笑みながら踊っていたんだろうなぁ。
あんなに好きだったはずなのにね…。
伯爵家にお金がなくても、私がお金を持っているし、大好きなアラン様のために私が金儲けを頑張ればいいと思って結婚したのに…。その想いは結婚初夜に全て壊されて、お花畑のエレノアも、伯爵様への愛も全て死んだけど…。
それでも前世のおばちゃん根性でここまで頑張ってきた私って偉くない?誰も褒めてくれないから、自分で褒めちゃうからね。
私は頑張った!
「エレノア…?気分が悪いのか?目が潤んでいるような気がする。大丈夫か?」
はっ!結婚詐欺に遭いながらも、泣きたい気持ちを我慢して、ひたすら頑張ってきた自分があまりにも哀れで、涙が溢れそうになっていたわ。
こんな場でいけないわ。気を付けないと。
「失礼しました。最近少し忙しかったので、疲れているのかもしれません。
ダンスは1曲だけでもよろしいでしょうか?」
前のように、周りに仲良し夫婦であることをアピールするためだけに、ダンスを2~3曲踊らされたりしたら大変だからね。
「無理をしなくていい。気にするな。
ダンスは次の夜会でまた踊れるから大丈夫だ。」
いや、アンタとはもうダンスはしないからね。
これが最後のダンスって決めているんだから。
「申し訳ありません…。」
ダンスが終わった後、飲み物でも飲もうかという話になり、飲食コーナーへ2人で移動する。
「エレノア!元気でいたか?」
何を飲もうかと悩んでいた私に声を掛けて来たのは、学生時代からの知り合いであるにも関わらず、最近になってやっと友人だと認めてあげた王子殿下だった。
さっき国王陛下に挨拶に行った時は、珍しく絡んで来なかったんだよね。
横から口を挟んできて、今までのように子供みたいな絡みをされるのかと思っていたのだけど、あまりにも静かにしていたから、どっか具合でも悪いのかと思っていたわ。
もしかして、本当に心を入れ替えて大人になったってこと?
「王子殿下、ご機嫌よう。
この前はありがとうございました。とても美味しかったですわ。」
「エレノアが喜んでくれたならまた用意する。
ロジャース伯爵も元気そうで何よりだな。」
「王子殿下、ご機嫌麗しゅうございます。
先日は私の妻が大変お世話になりました。」
何が〝私の妻〟だ?
「気にするな。
ところで、エレノアは飲み物を探しているようだな。」
相変わらずよく見てるわ。
恐るべし王族…。
「ええ。少し喉を潤そうかと思いまして。」
「少し待ってくれるか?
おい、エレノアの好きなスパークリングワインを今すぐ持って来てくれ!」
「畏まりました。」
私がスパークリングワインが好きなことまで知ってるのね。
恐るべし王族…。
殿下から命令された従者がサッと運んで来てくれる。
「ほら、エレノアはこれが好きだっただろう?
冷たくて美味いから早く飲め。」
「王子殿下、ありがとうございます。」
前にも感じたけど、王子殿下は性格が丸くなったのかな?前よりも口調が優しくなったような気がする…。
ま、いいか!
遠慮なくスパークリングワインを頂く鬼嫁。
はー、美味しいわ!
「王子殿下、とても美味しいですわ。
伯爵様も頂いてみてはどうでしょうか?」
「エレノア、私は大丈夫だ。」
は?愛想悪くない?
一応こんなんでも王族だし、国王陛下の息子なんだから、愛想良くしてあげてよ!
「エレノア。今日のスイーツのおすすめは、お前の好きなロールケーキらしい。
甘さ控えめのクリームと季節のフルーツ数種類を、しっとりと焼き上げたスポンジで巻いたロールケーキは、特に美味しく仕上がっていると料理人達が言っていた。
食べたいならすぐに持って来させるがどうする?」
王子殿下はどうしちゃったの?
王宮スイーツを完璧にプレゼンしているじゃないのよ!
「王子殿下。頂いてもよろしいでしょうか?」
「ああ。今すぐ持って来させよう。」
殿下の従者はすぐにロールケーキを持って来てくれた。
「エレノア、沢山食べろ!」
「ありがとうございます!」
あー、美味しい。このクリームは甘さを抑えているから重くないし、フルーツの味を邪魔してないんだよね。スポンジはしっとりしながらも、フワッとしていて最高!
「王子殿下、とっても美味しいですわ。
私はこのロールケーキも大好きなのです。」
「そ、そうか。エレノアが喜んでくれて私も嬉しい。
あ…、食べ終わったら、私と踊って頂けないか?」
最近この王子殿下にはお世話になっているから、断れないわね。
「はい。喜んで。」
しかし、あの男が黙っていなかった…。
このダンスは伯爵様との最後のダンス。
この男の妻を辞めたら、もう絶対に一緒にダンスなんて踊らないんだから!
これが2年前だったら、大好きなアラン様とダンスが踊れて幸せだわ、カッコいい、大好き…!なーんて考えながら、伯爵様に微笑みながら踊っていたんだろうなぁ。
あんなに好きだったはずなのにね…。
伯爵家にお金がなくても、私がお金を持っているし、大好きなアラン様のために私が金儲けを頑張ればいいと思って結婚したのに…。その想いは結婚初夜に全て壊されて、お花畑のエレノアも、伯爵様への愛も全て死んだけど…。
それでも前世のおばちゃん根性でここまで頑張ってきた私って偉くない?誰も褒めてくれないから、自分で褒めちゃうからね。
私は頑張った!
「エレノア…?気分が悪いのか?目が潤んでいるような気がする。大丈夫か?」
はっ!結婚詐欺に遭いながらも、泣きたい気持ちを我慢して、ひたすら頑張ってきた自分があまりにも哀れで、涙が溢れそうになっていたわ。
こんな場でいけないわ。気を付けないと。
「失礼しました。最近少し忙しかったので、疲れているのかもしれません。
ダンスは1曲だけでもよろしいでしょうか?」
前のように、周りに仲良し夫婦であることをアピールするためだけに、ダンスを2~3曲踊らされたりしたら大変だからね。
「無理をしなくていい。気にするな。
ダンスは次の夜会でまた踊れるから大丈夫だ。」
いや、アンタとはもうダンスはしないからね。
これが最後のダンスって決めているんだから。
「申し訳ありません…。」
ダンスが終わった後、飲み物でも飲もうかという話になり、飲食コーナーへ2人で移動する。
「エレノア!元気でいたか?」
何を飲もうかと悩んでいた私に声を掛けて来たのは、学生時代からの知り合いであるにも関わらず、最近になってやっと友人だと認めてあげた王子殿下だった。
さっき国王陛下に挨拶に行った時は、珍しく絡んで来なかったんだよね。
横から口を挟んできて、今までのように子供みたいな絡みをされるのかと思っていたのだけど、あまりにも静かにしていたから、どっか具合でも悪いのかと思っていたわ。
もしかして、本当に心を入れ替えて大人になったってこと?
「王子殿下、ご機嫌よう。
この前はありがとうございました。とても美味しかったですわ。」
「エレノアが喜んでくれたならまた用意する。
ロジャース伯爵も元気そうで何よりだな。」
「王子殿下、ご機嫌麗しゅうございます。
先日は私の妻が大変お世話になりました。」
何が〝私の妻〟だ?
「気にするな。
ところで、エレノアは飲み物を探しているようだな。」
相変わらずよく見てるわ。
恐るべし王族…。
「ええ。少し喉を潤そうかと思いまして。」
「少し待ってくれるか?
おい、エレノアの好きなスパークリングワインを今すぐ持って来てくれ!」
「畏まりました。」
私がスパークリングワインが好きなことまで知ってるのね。
恐るべし王族…。
殿下から命令された従者がサッと運んで来てくれる。
「ほら、エレノアはこれが好きだっただろう?
冷たくて美味いから早く飲め。」
「王子殿下、ありがとうございます。」
前にも感じたけど、王子殿下は性格が丸くなったのかな?前よりも口調が優しくなったような気がする…。
ま、いいか!
遠慮なくスパークリングワインを頂く鬼嫁。
はー、美味しいわ!
「王子殿下、とても美味しいですわ。
伯爵様も頂いてみてはどうでしょうか?」
「エレノア、私は大丈夫だ。」
は?愛想悪くない?
一応こんなんでも王族だし、国王陛下の息子なんだから、愛想良くしてあげてよ!
「エレノア。今日のスイーツのおすすめは、お前の好きなロールケーキらしい。
甘さ控えめのクリームと季節のフルーツ数種類を、しっとりと焼き上げたスポンジで巻いたロールケーキは、特に美味しく仕上がっていると料理人達が言っていた。
食べたいならすぐに持って来させるがどうする?」
王子殿下はどうしちゃったの?
王宮スイーツを完璧にプレゼンしているじゃないのよ!
「王子殿下。頂いてもよろしいでしょうか?」
「ああ。今すぐ持って来させよう。」
殿下の従者はすぐにロールケーキを持って来てくれた。
「エレノア、沢山食べろ!」
「ありがとうございます!」
あー、美味しい。このクリームは甘さを抑えているから重くないし、フルーツの味を邪魔してないんだよね。スポンジはしっとりしながらも、フワッとしていて最高!
「王子殿下、とっても美味しいですわ。
私はこのロールケーキも大好きなのです。」
「そ、そうか。エレノアが喜んでくれて私も嬉しい。
あ…、食べ終わったら、私と踊って頂けないか?」
最近この王子殿下にはお世話になっているから、断れないわね。
「はい。喜んで。」
しかし、あの男が黙っていなかった…。
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