87 / 125
私は変わりたい
しおりを挟む
お茶会は思っていたよりも楽しい時間だった。
お開きの時間を迎え、帰ることになった鬼嫁。
「エレノア、また来てちょうだいね。楽しかったわ。」
「王妃殿下。私こそ、素晴らしい時間を過ごすことが出来ました。ありがとうございました。」
「エレノア…。馬車まで送る。ほら!」
え?王子殿下がエスコートしてくれるの?
『ほら!』って手を出されても、簡単に手を出して良い人ではないから困るのだけど…。
「エレノア、マテオは暇だから気にしないでエスコートしてもらいなさい。」
暇そうには見えないよ…。
でも、王妃殿下にそう言われたら…
「ありがとうございます。よろしくお願い致しますわ。」
しかし…、しくじったわ。
王子殿下にエスコートされて王宮内を歩くことが……、こんなに目立つことだったなんて!!
王宮で働く文官や近衛騎士にさっきからチラチラと見られまくって嫌なんだけど。
「エレノアが来ると母上は喜ぶから、また来て欲しい。」
「勿論ですわ。」
「エレノア…。本当に辛い時は私を頼ってくれ。
エイベル伯爵令嬢のことも、頼ってくれて嬉しいと思ったんだ。
私は今までエレノアの気持ちを考えて行動出来なかったことを反省している。
私は変わりたいと思う。だから…、エレノアにはこれからの私を見ていて欲しい。」
なるほど…。
今日はいつもより落ち着いていたし、あまり腹が立つことも言われなかったし、今までより親切になったとは思っていたけど…、20歳過ぎてやっと心を入れ替えることにしたのね。
…だよねぇ。いつまでも子供では困るもん。
こんなんでも一応は国王の息子なんだから。
「こんなにも頼り甲斐のある王子殿下が、私の友人でいて下さることを嬉しく思っておりますわ。
友人である王子殿下には何でもお話しさせて頂きますし、勿論、遠慮なんて致しません。友人ですから。
それに…、殿下が自分で変わりたいとお考えであるのなら、私は陰ながら応援させて頂きます。
私こそ、これからもどうぞよろしくお願い致します。」
ふふっ!
絶対的な王族の権力を期待して、王子殿下にはいざという時に友人として助けてもらおう。
おばちゃんの図々しい下心だけど許してね。
……アレ?
王子殿下の様子が変だわ。何か顔が赤い。
はっ!もしかしておばちゃんの下心がバレた?怒ってる?
「王子殿下…、私、もしかして殿下に失礼なことを言ってしまいましたでしょうか?」
「……っ!ち、違うんだ。
エレノアがそんな風に私に笑いかけながら、嬉しいことを言ってくれたのは初めてのことだったから…、嬉しくて……。
あ……、今のは忘れてくれ!これからも私と仲良くしてくれ。」
私って、そんなに王子殿下に塩対応だった…?
一応はこれからは仲の良い友人という設定で、いざという時はこの人の権力に助けてもらう予定でいるのだから、私も態度を改めないとね。
「王子殿下。私も自分が変われるように気をつけるようにしますわ。」
「エレノアはそのままでいい!」
あっ、そうなんだ。それは良かったわ。
馬車止めまで来たら、王子殿下の従者が息を切らせて走ってきた。
「殿下、何とか間に合いました!」
「ご苦労だったな。」
「いえ。」
従者から何かを受け取る殿下。
「エレノア、お前の好きなアップルパイだ。
焼き立てだから、帰ったらみんなで食べてくれ!」
「………。」
この人どうしちゃったの?
「エレノア…?もしかして、食べ飽きてしまったか?」
はっ!あまりにも衝撃的すぎて、言葉を失っていたわ。
「殿下…。私、すごく嬉しいです。
王宮のアップルパイが本当に大好きですし、焼き立てを頂けるなんて……。
幸せをありがとうございます。」
バターの香るサクサクのパイ生地に、甘すぎないリンゴの入ったこのアップルパイが本当に好きなんだよね。
焼き立てなんて最高に美味しいに決まっている!
さっさと帰って、温かいうちに食べようっと!
「……そ、それは良かった。
気をつけて帰るようにな。」
「はい。今日はありがとうございました。
失礼致します。」
今までと違いすぎる殿下と、パイを届けに来てくれた笑顔の従者に挨拶をして、焼き立てを早く食べたい私は、急いで帰ることにした。
「殿下。あそこまで喜んで頂けて、本当に良かったですねー。
調理場から必死に走って来て良かったですよ。
殿下…?顔がリンゴのようになってますよ。」
「…っ!煩いぞ!」
お開きの時間を迎え、帰ることになった鬼嫁。
「エレノア、また来てちょうだいね。楽しかったわ。」
「王妃殿下。私こそ、素晴らしい時間を過ごすことが出来ました。ありがとうございました。」
「エレノア…。馬車まで送る。ほら!」
え?王子殿下がエスコートしてくれるの?
『ほら!』って手を出されても、簡単に手を出して良い人ではないから困るのだけど…。
「エレノア、マテオは暇だから気にしないでエスコートしてもらいなさい。」
暇そうには見えないよ…。
でも、王妃殿下にそう言われたら…
「ありがとうございます。よろしくお願い致しますわ。」
しかし…、しくじったわ。
王子殿下にエスコートされて王宮内を歩くことが……、こんなに目立つことだったなんて!!
王宮で働く文官や近衛騎士にさっきからチラチラと見られまくって嫌なんだけど。
「エレノアが来ると母上は喜ぶから、また来て欲しい。」
「勿論ですわ。」
「エレノア…。本当に辛い時は私を頼ってくれ。
エイベル伯爵令嬢のことも、頼ってくれて嬉しいと思ったんだ。
私は今までエレノアの気持ちを考えて行動出来なかったことを反省している。
私は変わりたいと思う。だから…、エレノアにはこれからの私を見ていて欲しい。」
なるほど…。
今日はいつもより落ち着いていたし、あまり腹が立つことも言われなかったし、今までより親切になったとは思っていたけど…、20歳過ぎてやっと心を入れ替えることにしたのね。
…だよねぇ。いつまでも子供では困るもん。
こんなんでも一応は国王の息子なんだから。
「こんなにも頼り甲斐のある王子殿下が、私の友人でいて下さることを嬉しく思っておりますわ。
友人である王子殿下には何でもお話しさせて頂きますし、勿論、遠慮なんて致しません。友人ですから。
それに…、殿下が自分で変わりたいとお考えであるのなら、私は陰ながら応援させて頂きます。
私こそ、これからもどうぞよろしくお願い致します。」
ふふっ!
絶対的な王族の権力を期待して、王子殿下にはいざという時に友人として助けてもらおう。
おばちゃんの図々しい下心だけど許してね。
……アレ?
王子殿下の様子が変だわ。何か顔が赤い。
はっ!もしかしておばちゃんの下心がバレた?怒ってる?
「王子殿下…、私、もしかして殿下に失礼なことを言ってしまいましたでしょうか?」
「……っ!ち、違うんだ。
エレノアがそんな風に私に笑いかけながら、嬉しいことを言ってくれたのは初めてのことだったから…、嬉しくて……。
あ……、今のは忘れてくれ!これからも私と仲良くしてくれ。」
私って、そんなに王子殿下に塩対応だった…?
一応はこれからは仲の良い友人という設定で、いざという時はこの人の権力に助けてもらう予定でいるのだから、私も態度を改めないとね。
「王子殿下。私も自分が変われるように気をつけるようにしますわ。」
「エレノアはそのままでいい!」
あっ、そうなんだ。それは良かったわ。
馬車止めまで来たら、王子殿下の従者が息を切らせて走ってきた。
「殿下、何とか間に合いました!」
「ご苦労だったな。」
「いえ。」
従者から何かを受け取る殿下。
「エレノア、お前の好きなアップルパイだ。
焼き立てだから、帰ったらみんなで食べてくれ!」
「………。」
この人どうしちゃったの?
「エレノア…?もしかして、食べ飽きてしまったか?」
はっ!あまりにも衝撃的すぎて、言葉を失っていたわ。
「殿下…。私、すごく嬉しいです。
王宮のアップルパイが本当に大好きですし、焼き立てを頂けるなんて……。
幸せをありがとうございます。」
バターの香るサクサクのパイ生地に、甘すぎないリンゴの入ったこのアップルパイが本当に好きなんだよね。
焼き立てなんて最高に美味しいに決まっている!
さっさと帰って、温かいうちに食べようっと!
「……そ、それは良かった。
気をつけて帰るようにな。」
「はい。今日はありがとうございました。
失礼致します。」
今までと違いすぎる殿下と、パイを届けに来てくれた笑顔の従者に挨拶をして、焼き立てを早く食べたい私は、急いで帰ることにした。
「殿下。あそこまで喜んで頂けて、本当に良かったですねー。
調理場から必死に走って来て良かったですよ。
殿下…?顔がリンゴのようになってますよ。」
「…っ!煩いぞ!」
146
お気に入りに追加
6,633
あなたにおすすめの小説

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる