君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

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2回目の断罪?

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 応接室に入ると……

 え?何なの、この大きなスクリーンは?
 ギルってば、この大きなスクリーンにあの生々しい画像を映すの?
 ポルノ映画を観るみたいじゃないの。


 アブス子爵家の皆様も、応接室の異様さに気付いたようだ。
 大きなスクリーンがあるのも変だし、騎士が6人も待機しているなんて普通ならおかしいと感じるだろう。
 騎士達には、一瞬たりともアブスから目を離すなと言ってあるからか、アブスは騎士達からジロっと見られていて、居心地が悪そうにしている。

「話をする前に、まずはアブス子爵様と夫人に見て欲しいものがありますの。
 ギル、毒の方をまず見せてくれるかしら?」

「毒ね。分かった。」

 生々しい方はヤバそうだから後にして、まずは毒を買ってくるようにと頼んでいるシーンを見てもらおうと思ったのだ。


 隠しカメラで撮られた動画にしては、綺麗に撮られたものだった。
 質素な狭い部屋で、男女が体を密着させている姿が映っている。女がアブスだと誰が見てもはっきり分かるものだった。



『ねぇー、マシュー。お願いがあるの。私の為なら何でもしてくれるって言ってたでしょ?』

『お嬢さんのお願いですか?』

『誰にもバレないように毒を買って来て欲しいの。』

『……毒ですか?』

『お願い!私が幸せになるのには必要なのよ。』

『それは…、少し考えさせて下さい。毒がどこで売っているのかも知りませんし。』
 

 アブス子爵家の皆様は絶句していた。
 アブスの顔が怖い……

 自分の部屋が隠し撮りされていたことに驚いたかな。

 
 違う日の動画


『マシュー。毒のこと調べられた?用意出来そう?』

『お嬢さん、毒を用意して何に使うのです?自殺でもする気ですか?』

『私は死なないわよ。ただ、憎らしい女にちょっとね…。』

『お嬢さん…、私には毒は用意出来ませんよ。
 私はお嬢さんに道を踏み外して欲しくない。』

『な、何で?マシューだけはいつも私の力になってくれたじゃないの。…マシューまで私から離れるの?』

 マシューはアブスを強く抱きしめる。

『私はお嬢さんが許してくれる限りはずっと側にいます。
 ただ…、お嬢さんを深く愛しているからこそ、その命令だけは聞けません。お許しください。』



 ちょっとした昼ドラみたいで、つい動画に見入ってしまった鬼嫁。

 マシュー、いい奴じゃないのー!!



「…コホン!」

 ギルがワザとらしく咳払いをした。

 いけない…。つい夢中になってしまったわ。


「第二夫人が毒を手に入れようとしていると情報が入ったので、ちょっと調査させて頂きましたの。
 ですから先程のボディチェックは、侮辱行為ではなく正当な防衛行為ですわ。」

「ララ…。これは……」

 ババアが煩くなりそうだ。その前に…

「ギル、生々しい方をよろしく。」

「了解!」



 さっきと同じ部屋でアブスとマシューが抱き合っている。

『アラン様は、全く私を相手にしてくれないの。
 私ってそんなに魅力がないのかしら…。』

『お嬢さんは、とっても可愛くて素敵です。私にとって特別な人です。』

『そんなの嘘よ!』

『私は嘘はついていません。私は昔からお嬢さんだけを見てきましたから。』

『マシュー…。それが本当なら私を抱ける?』

『お、お嬢さん。何を言っているのです?お嬢さんは伯爵様が好きなのですよね?』

『好きよ。愛しているわ!でも、アラン様は私を見てくれないの。寂しくて、恋しくて…。私、どうしていいか分からないの。
 マシュー、助けて。』

『………お嬢さん。途中でやめられませんよ。』

 マシューはアブスに激しくキスをして、ベッドに押し倒した。

『お嬢さん。昔から好きだった…。こうやって触れることが出来て嬉しい。
 愛してます。』

 チュッ、チュッ…


 おおー!

 動画が盛り上がってきたその時…


「もう、やめて頂きたい!!」

 いいところで、子爵からストップがかかってしまった。

 父が娘のこんな動画を観るのは辛いよね。
 スミマセン…。

「うちの娘が毒を使って夫人を陥れようと考えていたことや、里帰り中に使用人と不貞をしていたことは分かりました。
 媚薬を盛って無理やり第二夫人になったのに、今度は不貞行為をして裏切るなど、これほどにバカな娘だとは知らずに、大変申し訳ないことをしました。
 これ以上伯爵様にご迷惑を掛けるわけにはいきませんので、離縁させて頂きます。
 慰謝料も何とか工面しますから、どうかうちのアブス子爵家をお許しください。時期当主である息子を守りたいのです。」

「私からもお願いします。娘がここまでとは知りませんでした。申し訳ありませんでした。」

 離縁を向こうから言ってくれて助かったわ。
 伯爵様も少しホッとした顔をしている。

「では、今すぐ離縁届けにサインをして欲しい。」

「分かりました。
 ララ、すぐにサインしなさい!」

 子爵が顔色を悪くするアブスにペンを渡した時だった。

「………いよ。」

 アブスがボソっと何かを言っている。

「…ララ?早くサインをするんだ。最後くらいは伯爵様と夫人を困らせるな。」

「アンタのせいよ!!アンタがいるから、アラン様は私を見てくれないの!」

 急に金切り声を上げたアブス。
 その姿に皆が驚き固まっていると、ペンを振り上げて、鬼嫁に向かって来た。


 ヤバい…!刺される……





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