君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

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領地 2

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 領地の伯爵邸は予想通りにボロかったが、伯爵家らしく大きな邸だった。

 大きな邸だから、修繕費が掛かるんだよね…。
 領地の邸なんて、他の貴族は見に来ないのだから、見栄を張らなくていいと思うんだよ。
 思い切って減築しちゃうとか?でも、減築するのに費用が掛かるか。
 部屋が余ってるなら、シェアハウスとかペンションでも経営しちゃう?
 いや…。ご先祖様から引き継いできた邸でそんなことしたら、それこそ本当の鬼嫁だと言われてしまうからやめておこう。

 これからも伯爵家の嫁でいるなら、経費削減の為に色々と口を出すところだけど、あと半年を待たずに出て行く予定だから、余計なことは言わない。


「エレノア。この屋敷を管理しているカイルだ。
 パーカー男爵家の三男で、私の再従兄弟になる。」

「エレノアと申します。今日と明日、お世話になりますわ。」

「こちらで領主代行をさせて頂いているカイル・パーカーです。
 どうぞよろしく。」

 伯爵様と同年代かな?綺麗な顔をして、キラキラした笑みを向けてくれているけど、胡散臭い笑顔にしか見えないわね。
 
 せっかく小娘に愛嬌を振りまいてくれているのに、中身がおばちゃんでごめんね…。


 

 パーカー様は、疲れているだろうから少し休まれてはと言っていたけど、時間に余裕はないので、お茶を一杯頂いてから、すぐにフルーツを作っている農家に案内してもらうことにした。




 結果…



 なんと苺や林檎を作っている農家がいた。
 これは、やっぱりジャムを作れということだわ!

 林檎は収穫してから日持ちするから出荷しやすいと言っていたけど、苺は痛みやすいから、空いているスペースに植えて、趣味で作って自分達で食べていたらしい。
 確かに王都で苺は滅多に見ないし、かなり高級だった気がする。ジャムも林檎やママレードが主流で、苺ジャムは見たことはなかったことに今気付いてしまったわ。

 きっと馬車で運ぶと傷んでしまうから、流通させにくいのだろうね。
 食べ頃の完熟になってから取ると、すぐにベチャベチャになってしまうし、林檎みたいに大きな箱に詰め込んで運ぶことも出来ないし。

 苺を沢山作ってくれたら、ジャムに加工するために、高く取引したいことを農家達に話すと、次からは苺を沢山植えますと農家達が言ってくれた。
 
 うーん…。この計画は離縁前に終われることではないな。軌道に乗るのに年単位でかかってしまいそう。

 でも、王都で希少価値のある苺は絶対に金になるし、高級な苺のジャムは絶対にみんな欲しがるわ。
 私のカフェやホテルの名物としてお客様に出したいし、実家に頼んで他国に輸出するのもいいよね。
 苺が取れない時期は林檎の季節になるから、加工場で高級りんごジュースを作ればいいし。

 どうする……?

 私が加工場を経営するのが手っ取り早い方法だよね。
 加工場で領民を雇用してあげればいいし、苺を高値で引き取るようにすれば、伯爵家の税収は増えるから問題はないよね?


 さっきから私の後ろを黙って付いてきている伯爵様にも相談してみる…?


「伯爵様。伯爵領で苺を沢山作ってもらいたいのです。
 私が苺を加工する工場を伯爵領に建てますから、収穫した苺を高値で引き取りますわ。
 工場では領民に働いてもらえますし、伯爵領の税収も少しは増えると思います。
 許可を頂けませんか?」

「許可する。」

 えっ…、そんなあっさり決めてくれるの?

「良いのですか?」

「エレノアを信用しているから大丈夫だ。
 伯爵領の税収が増えればありがたいし、領民の働く場所を与えてもらえるのだから反対する理由はない。」

「売れるか分かりませんが良いのでしょうか?」

「エレノアの手掛ける物は売れているだろう?
 私は何も心配していない。」

 そんな風に言ってもらえて嬉しいけど…。この人、こんな性格で詐欺にあったりしないか心配だわ。

「ありがとうございます。」





 日が暮れそうになってきたので邸に帰ることになった。
 時間がなくて他の作物を見ることが出来なかったのが残念だわね。


 伯爵家の邸に戻ると、胡散臭い笑顔のパーカー様が迎えてくれる。

「お帰りなさいませ。お疲れでしょうから、お2人の部屋までご案内いたします。」


 今、2人の部屋って言った…?



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