75 / 125
領地 2
しおりを挟む
領地の伯爵邸は予想通りにボロかったが、伯爵家らしく大きな邸だった。
大きな邸だから、修繕費が掛かるんだよね…。
領地の邸なんて、他の貴族は見に来ないのだから、見栄を張らなくていいと思うんだよ。
思い切って減築しちゃうとか?でも、減築するのに費用が掛かるか。
部屋が余ってるなら、シェアハウスとかペンションでも経営しちゃう?
いや…。ご先祖様から引き継いできた邸でそんなことしたら、それこそ本当の鬼嫁だと言われてしまうからやめておこう。
これからも伯爵家の嫁でいるなら、経費削減の為に色々と口を出すところだけど、あと半年を待たずに出て行く予定だから、余計なことは言わない。
「エレノア。この屋敷を管理しているカイルだ。
パーカー男爵家の三男で、私の再従兄弟になる。」
「エレノアと申します。今日と明日、お世話になりますわ。」
「こちらで領主代行をさせて頂いているカイル・パーカーです。
どうぞよろしく。」
伯爵様と同年代かな?綺麗な顔をして、キラキラした笑みを向けてくれているけど、胡散臭い笑顔にしか見えないわね。
せっかく小娘に愛嬌を振りまいてくれているのに、中身がおばちゃんでごめんね…。
パーカー様は、疲れているだろうから少し休まれてはと言っていたけど、時間に余裕はないので、お茶を一杯頂いてから、すぐにフルーツを作っている農家に案内してもらうことにした。
結果…
なんと苺や林檎を作っている農家がいた。
これは、やっぱりジャムを作れということだわ!
林檎は収穫してから日持ちするから出荷しやすいと言っていたけど、苺は痛みやすいから、空いているスペースに植えて、趣味で作って自分達で食べていたらしい。
確かに王都で苺は滅多に見ないし、かなり高級だった気がする。ジャムも林檎やママレードが主流で、苺ジャムは見たことはなかったことに今気付いてしまったわ。
きっと馬車で運ぶと傷んでしまうから、流通させにくいのだろうね。
食べ頃の完熟になってから取ると、すぐにベチャベチャになってしまうし、林檎みたいに大きな箱に詰め込んで運ぶことも出来ないし。
苺を沢山作ってくれたら、ジャムに加工するために、高く取引したいことを農家達に話すと、次からは苺を沢山植えますと農家達が言ってくれた。
うーん…。この計画は離縁前に終われることではないな。軌道に乗るのに年単位でかかってしまいそう。
でも、王都で希少価値のある苺は絶対に金になるし、高級な苺のジャムは絶対にみんな欲しがるわ。
私のカフェやホテルの名物としてお客様に出したいし、実家に頼んで他国に輸出するのもいいよね。
苺が取れない時期は林檎の季節になるから、加工場で高級りんごジュースを作ればいいし。
どうする……?
私が加工場を経営するのが手っ取り早い方法だよね。
加工場で領民を雇用してあげればいいし、苺を高値で引き取るようにすれば、伯爵家の税収は増えるから問題はないよね?
さっきから私の後ろを黙って付いてきている伯爵様にも相談してみる…?
「伯爵様。伯爵領で苺を沢山作ってもらいたいのです。
私が苺を加工する工場を伯爵領に建てますから、収穫した苺を高値で引き取りますわ。
工場では領民に働いてもらえますし、伯爵領の税収も少しは増えると思います。
許可を頂けませんか?」
「許可する。」
えっ…、そんなあっさり決めてくれるの?
「良いのですか?」
「エレノアを信用しているから大丈夫だ。
伯爵領の税収が増えればありがたいし、領民の働く場所を与えてもらえるのだから反対する理由はない。」
「売れるか分かりませんが良いのでしょうか?」
「エレノアの手掛ける物は売れているだろう?
私は何も心配していない。」
そんな風に言ってもらえて嬉しいけど…。この人、こんな性格で詐欺にあったりしないか心配だわ。
「ありがとうございます。」
日が暮れそうになってきたので邸に帰ることになった。
時間がなくて他の作物を見ることが出来なかったのが残念だわね。
伯爵家の邸に戻ると、胡散臭い笑顔のパーカー様が迎えてくれる。
「お帰りなさいませ。お疲れでしょうから、お2人の部屋までご案内いたします。」
今、2人の部屋って言った…?
大きな邸だから、修繕費が掛かるんだよね…。
領地の邸なんて、他の貴族は見に来ないのだから、見栄を張らなくていいと思うんだよ。
思い切って減築しちゃうとか?でも、減築するのに費用が掛かるか。
部屋が余ってるなら、シェアハウスとかペンションでも経営しちゃう?
いや…。ご先祖様から引き継いできた邸でそんなことしたら、それこそ本当の鬼嫁だと言われてしまうからやめておこう。
これからも伯爵家の嫁でいるなら、経費削減の為に色々と口を出すところだけど、あと半年を待たずに出て行く予定だから、余計なことは言わない。
「エレノア。この屋敷を管理しているカイルだ。
パーカー男爵家の三男で、私の再従兄弟になる。」
「エレノアと申します。今日と明日、お世話になりますわ。」
「こちらで領主代行をさせて頂いているカイル・パーカーです。
どうぞよろしく。」
伯爵様と同年代かな?綺麗な顔をして、キラキラした笑みを向けてくれているけど、胡散臭い笑顔にしか見えないわね。
せっかく小娘に愛嬌を振りまいてくれているのに、中身がおばちゃんでごめんね…。
パーカー様は、疲れているだろうから少し休まれてはと言っていたけど、時間に余裕はないので、お茶を一杯頂いてから、すぐにフルーツを作っている農家に案内してもらうことにした。
結果…
なんと苺や林檎を作っている農家がいた。
これは、やっぱりジャムを作れということだわ!
林檎は収穫してから日持ちするから出荷しやすいと言っていたけど、苺は痛みやすいから、空いているスペースに植えて、趣味で作って自分達で食べていたらしい。
確かに王都で苺は滅多に見ないし、かなり高級だった気がする。ジャムも林檎やママレードが主流で、苺ジャムは見たことはなかったことに今気付いてしまったわ。
きっと馬車で運ぶと傷んでしまうから、流通させにくいのだろうね。
食べ頃の完熟になってから取ると、すぐにベチャベチャになってしまうし、林檎みたいに大きな箱に詰め込んで運ぶことも出来ないし。
苺を沢山作ってくれたら、ジャムに加工するために、高く取引したいことを農家達に話すと、次からは苺を沢山植えますと農家達が言ってくれた。
うーん…。この計画は離縁前に終われることではないな。軌道に乗るのに年単位でかかってしまいそう。
でも、王都で希少価値のある苺は絶対に金になるし、高級な苺のジャムは絶対にみんな欲しがるわ。
私のカフェやホテルの名物としてお客様に出したいし、実家に頼んで他国に輸出するのもいいよね。
苺が取れない時期は林檎の季節になるから、加工場で高級りんごジュースを作ればいいし。
どうする……?
私が加工場を経営するのが手っ取り早い方法だよね。
加工場で領民を雇用してあげればいいし、苺を高値で引き取るようにすれば、伯爵家の税収は増えるから問題はないよね?
さっきから私の後ろを黙って付いてきている伯爵様にも相談してみる…?
「伯爵様。伯爵領で苺を沢山作ってもらいたいのです。
私が苺を加工する工場を伯爵領に建てますから、収穫した苺を高値で引き取りますわ。
工場では領民に働いてもらえますし、伯爵領の税収も少しは増えると思います。
許可を頂けませんか?」
「許可する。」
えっ…、そんなあっさり決めてくれるの?
「良いのですか?」
「エレノアを信用しているから大丈夫だ。
伯爵領の税収が増えればありがたいし、領民の働く場所を与えてもらえるのだから反対する理由はない。」
「売れるか分かりませんが良いのでしょうか?」
「エレノアの手掛ける物は売れているだろう?
私は何も心配していない。」
そんな風に言ってもらえて嬉しいけど…。この人、こんな性格で詐欺にあったりしないか心配だわ。
「ありがとうございます。」
日が暮れそうになってきたので邸に帰ることになった。
時間がなくて他の作物を見ることが出来なかったのが残念だわね。
伯爵家の邸に戻ると、胡散臭い笑顔のパーカー様が迎えてくれる。
「お帰りなさいませ。お疲れでしょうから、お2人の部屋までご案内いたします。」
今、2人の部屋って言った…?
121
お気に入りに追加
6,632
あなたにおすすめの小説
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】
男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。
少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。
けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。
少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。
それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。
その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。
そこには残酷な現実が待っていた――
*他サイトでも投稿中

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる