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過労です
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翌日目覚めると、メイドのリリーとミサがいた。
「奥様、目覚められたのですね…。
過労だと言われましたわ。しばらくはゆっくり過ごして下さいませ。」
「奥様がお目覚めになったと、すぐにベネット家にお知らせしますわ。」
この2人はとにかく心配症だったな。
「…大丈夫よ。実家に知らせる程のことではないわ。」
「いえ。何かあれば何でも報告して欲しいとギルバート様から言われていたので、すでにベネット家には奥様が倒れたことを知らせてあるのです。
奥様が目覚めましたら、ベネット家で療養させる為に、直ぐに迎えに来ると言っていましたので、知らせない訳にはいきませんわ。」
ただの過労なのにそこまで…。
悪いなー。
お茶を淹れてもらって飲んでいると、伯爵様が来たと言われる。
疲れがピークだから、あまり顔を合わせたくはないけど、急に倒れて迷惑を掛けてしまったから会いたくないとは言えないか。
部屋に入って来た伯爵様は、今日も覇気のない顔をしていた。
「エレノア…、大丈夫か?
すまなかった…。私のせいでエレノアに無理をさせてしまった。」
分かっているなら早く元気になれよ!!
心の中で盛大に叫ぶ鬼嫁。
封印していたはずの鬼嫁が解かれてしまった瞬間だった。
そしてこの瞬間に、期間限定の白衣の天使のような、自称可愛い嫁は死にました…。
終了!!
爆発しそうになるが我慢…。
この人なりに私を心配してくれたのは何となく分かるし。
不器用で使えない、顔だけ男の旦那様だけど、根は優しいところもあるの。
そんな伯爵様だから、友人にも恵まれているみたいだし、アブスの媚薬事件のことは、その友人達が伯爵様が不利にならないような噂話を流してくれていたようだったし。
家庭内別居の鬼嫁でもそれは何となく分かっているのよ。
だけどね…。
アンタ、この伯爵家の当主でしょ?
もっとしっかりしてよ!!ストレスだわ!
「伯爵様、ご心配をおかけしまして申し訳ありませんでした。」
今の私にはこの言葉を言うのが精一杯…。
これ以上話をしたら、また言い過ぎちゃう。
「謝らないでくれ。エレノアが目の前で倒れた時、私の心臓が止まるかと思った…。
私がもっとしっかりしないとな。」
この男は!!
「伯爵様。私のことよりも、伯爵様自身が早く元気になってくれないと困りますわ。」
「そうだな…。これからは私がエレノアを支えられるようにならないとな。
ところで君が倒れた後に、ベネット家からうちの執務を手伝うためにと、優秀な秘書官を3人も派遣してくれたんだ。今は、彼らが執務を代行してくれている。
とても助かっているよ。ありがとう。」
うちの可愛いギルが手を回してくれたのかしら?
本当に気が利く義弟で、義姉さんは嬉しいわ。
「それは良かったですわ。秘書官達に甘えて、私達は少し休ませてもらった方がいいですわね。」
「エレノアはゆっくり休んでくれ。
私はしばらく休んでいたから、少しずつ仕事をして、体を慣らしていくようにしようと思う。
エレノアが優しいからと甘え過ぎてしまった。」
おーい!自覚してたのかい?
今回のことで気付いたのだけど、この男は優しくし過ぎるとダメになるタイプの男かもしれない。
普段は厳しくして、たまに少しだけ優しくするくらいでいいのかもね。
優しくし過ぎて、あんな風に病的に依存されたら厄介だもの。
時期が来たらサラッと白い結婚を申請して、この邸を出て行くんだから、これからは程よい距離感を維持していこう。
その日の午後、実家で療養した方がいいとギルが迎えに来てくれた。
「秘書官を派遣してくれたから、それだけで十分なのに。」
「ここにいたら、義姉さんは絶対に無理をするからダメ。
義父上も義母上も心配しているから、早く帰ろう。
歩ける?抱っこしようか?」
「もう!ギルったら…。自分で歩けるわよ。」
「歩いていて倒れたら困るから、私が体を支えるよ。」
ギルは私の腰を抱いて歩き出す。
玄関ホールには、伯爵様が待っていてくれた。
「ベネット卿。秘書官を派遣してくれて感謝する。ありがとう。
それとエレノアをよろしく頼む。」
「義姉のためにしていることですから、気になさらず。ロジャース伯爵様もお大事になさって下さい。
そう言えば…、あの第二夫人ですが、伯爵家に戻って来たいと言っても、しばらくは戻らせないで欲しいのです。
義姉が留守中に戻って来て、好き勝手にやられたら義姉が可哀想なので。」
「そうだな。私もまだ体調が万全ではないから、今戻られても迷惑だ。もし戻りたいと言ってきても断ろう。
あの女に好き勝手はさせるつもりはないから、大丈夫だ。
エレノアは何も心配しないで療養してくるんだ。元気になって帰って来てくれるのを待っている。」
随分と聞き分けが良くなったわね。家令かメイド長に何か言われた?
実家に療養しに行くのも反対されるかと思っていたのに。
「伯爵様、ありがとうございます。」
「エレノア、少しいいか?」
伯爵様が急に真顔になる。
「…はい?」
手を引かれたかと思うと、ギュッと抱きしめられる鬼嫁。
何してんの?また可笑しくなった?
家令やメイド長達が見ている前で、突き飛ばすことは出来ないし…
「伯爵様、どうしました?」
私、顔がひきつってないよね?
「大切な妻にしばらく会えなくなるのだから、これくらいはいいだろう…?」
はあ?何が大切な妻だ!
大切な金蔓の間違いだろうが!
私が心の中で悪態をついていると、低い声が聞こえてくる。
「ロジャース伯爵様、そろそろ出発したいので、義姉を離してもらえますか?」
さすがギル!私の表情を読み取ってくれたようだ。
「ああ、すまないな。
エレノア、気をつけてな…。」
「はい。行って参ります。」
ベネット家ではのんびりするぞ!
「奥様、目覚められたのですね…。
過労だと言われましたわ。しばらくはゆっくり過ごして下さいませ。」
「奥様がお目覚めになったと、すぐにベネット家にお知らせしますわ。」
この2人はとにかく心配症だったな。
「…大丈夫よ。実家に知らせる程のことではないわ。」
「いえ。何かあれば何でも報告して欲しいとギルバート様から言われていたので、すでにベネット家には奥様が倒れたことを知らせてあるのです。
奥様が目覚めましたら、ベネット家で療養させる為に、直ぐに迎えに来ると言っていましたので、知らせない訳にはいきませんわ。」
ただの過労なのにそこまで…。
悪いなー。
お茶を淹れてもらって飲んでいると、伯爵様が来たと言われる。
疲れがピークだから、あまり顔を合わせたくはないけど、急に倒れて迷惑を掛けてしまったから会いたくないとは言えないか。
部屋に入って来た伯爵様は、今日も覇気のない顔をしていた。
「エレノア…、大丈夫か?
すまなかった…。私のせいでエレノアに無理をさせてしまった。」
分かっているなら早く元気になれよ!!
心の中で盛大に叫ぶ鬼嫁。
封印していたはずの鬼嫁が解かれてしまった瞬間だった。
そしてこの瞬間に、期間限定の白衣の天使のような、自称可愛い嫁は死にました…。
終了!!
爆発しそうになるが我慢…。
この人なりに私を心配してくれたのは何となく分かるし。
不器用で使えない、顔だけ男の旦那様だけど、根は優しいところもあるの。
そんな伯爵様だから、友人にも恵まれているみたいだし、アブスの媚薬事件のことは、その友人達が伯爵様が不利にならないような噂話を流してくれていたようだったし。
家庭内別居の鬼嫁でもそれは何となく分かっているのよ。
だけどね…。
アンタ、この伯爵家の当主でしょ?
もっとしっかりしてよ!!ストレスだわ!
「伯爵様、ご心配をおかけしまして申し訳ありませんでした。」
今の私にはこの言葉を言うのが精一杯…。
これ以上話をしたら、また言い過ぎちゃう。
「謝らないでくれ。エレノアが目の前で倒れた時、私の心臓が止まるかと思った…。
私がもっとしっかりしないとな。」
この男は!!
「伯爵様。私のことよりも、伯爵様自身が早く元気になってくれないと困りますわ。」
「そうだな…。これからは私がエレノアを支えられるようにならないとな。
ところで君が倒れた後に、ベネット家からうちの執務を手伝うためにと、優秀な秘書官を3人も派遣してくれたんだ。今は、彼らが執務を代行してくれている。
とても助かっているよ。ありがとう。」
うちの可愛いギルが手を回してくれたのかしら?
本当に気が利く義弟で、義姉さんは嬉しいわ。
「それは良かったですわ。秘書官達に甘えて、私達は少し休ませてもらった方がいいですわね。」
「エレノアはゆっくり休んでくれ。
私はしばらく休んでいたから、少しずつ仕事をして、体を慣らしていくようにしようと思う。
エレノアが優しいからと甘え過ぎてしまった。」
おーい!自覚してたのかい?
今回のことで気付いたのだけど、この男は優しくし過ぎるとダメになるタイプの男かもしれない。
普段は厳しくして、たまに少しだけ優しくするくらいでいいのかもね。
優しくし過ぎて、あんな風に病的に依存されたら厄介だもの。
時期が来たらサラッと白い結婚を申請して、この邸を出て行くんだから、これからは程よい距離感を維持していこう。
その日の午後、実家で療養した方がいいとギルが迎えに来てくれた。
「秘書官を派遣してくれたから、それだけで十分なのに。」
「ここにいたら、義姉さんは絶対に無理をするからダメ。
義父上も義母上も心配しているから、早く帰ろう。
歩ける?抱っこしようか?」
「もう!ギルったら…。自分で歩けるわよ。」
「歩いていて倒れたら困るから、私が体を支えるよ。」
ギルは私の腰を抱いて歩き出す。
玄関ホールには、伯爵様が待っていてくれた。
「ベネット卿。秘書官を派遣してくれて感謝する。ありがとう。
それとエレノアをよろしく頼む。」
「義姉のためにしていることですから、気になさらず。ロジャース伯爵様もお大事になさって下さい。
そう言えば…、あの第二夫人ですが、伯爵家に戻って来たいと言っても、しばらくは戻らせないで欲しいのです。
義姉が留守中に戻って来て、好き勝手にやられたら義姉が可哀想なので。」
「そうだな。私もまだ体調が万全ではないから、今戻られても迷惑だ。もし戻りたいと言ってきても断ろう。
あの女に好き勝手はさせるつもりはないから、大丈夫だ。
エレノアは何も心配しないで療養してくるんだ。元気になって帰って来てくれるのを待っている。」
随分と聞き分けが良くなったわね。家令かメイド長に何か言われた?
実家に療養しに行くのも反対されるかと思っていたのに。
「伯爵様、ありがとうございます。」
「エレノア、少しいいか?」
伯爵様が急に真顔になる。
「…はい?」
手を引かれたかと思うと、ギュッと抱きしめられる鬼嫁。
何してんの?また可笑しくなった?
家令やメイド長達が見ている前で、突き飛ばすことは出来ないし…
「伯爵様、どうしました?」
私、顔がひきつってないよね?
「大切な妻にしばらく会えなくなるのだから、これくらいはいいだろう…?」
はあ?何が大切な妻だ!
大切な金蔓の間違いだろうが!
私が心の中で悪態をついていると、低い声が聞こえてくる。
「ロジャース伯爵様、そろそろ出発したいので、義姉を離してもらえますか?」
さすがギル!私の表情を読み取ってくれたようだ。
「ああ、すまないな。
エレノア、気をつけてな…。」
「はい。行って参ります。」
ベネット家ではのんびりするぞ!
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