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妊娠?
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お気に入りの邸を手にいれて、リフォームの工事が始まった。
後は何事もなく、静かに白い結婚を待つのみ。
このむさ苦しい邸も、あと数ヶ月の辛抱よ。
それに向けて、仕事も頑張っちゃうんだから!
そんな私は上機嫌に仕事をこなす日々を送っていたのだが……
「奥様。お客様が体調不良らしく、嘔吐されています。
侍医を呼んで診てもらおうとしたのですが、お客様は病気ではないから侍医は呼ばなくてよいと言って聞かないのです。
どう致しましょうか?」
メイド長は今日も疲れた顔をしている。
メイド長の言うお客様とは、客間で生活しているアブスのことだ。
伯爵様が使用人達に「あの女は妻ではない宣言」をしたらしく、使用人達はみんなお客様と呼んでいるらしい。
アブスの管理責任者は伯爵様なのに。
いくら嫌いだからって、無関心を通り越して無責任になってるわ!
「もしかして妊娠とか?」
「奥様。悪阻でしたら、もっと早くに症状として出ていてもおかしくはないかと。」
「そうよね…。悪阻なら妊娠3ヶ月くらいが酷いはずで、あの日の行為で妊娠したとしたら、悪阻は落ち着いてきてもいいわよね。
それとも、この邸に引っ越しをして来てから、実は二人は熱い夜を何度も過ごしているとか?
私に気を遣って秘密にしているけど、夜は一緒に寝ているとか?…ふふっ!」
「奥様、それだけは絶対にあり得ませんわ。旦那様はお客様を視界にすら入れたくないようですから。
嘔吐が続いているようなので、侍医に診てもらった方がいいかと思ったのですが、お客様は病気じゃないと言い張りますし、旦那様は放っておけと言いますし、本当に困りました。」
メイド長が可哀想だわ。
しょうがない。鬼嫁がガツンと言ってやるか!
「メイド長。伯爵様は執務室にいるのかしら?」
「はい。今日は外出の予定は入っておりませんので、執務室にいらっしゃると思います。」
「…行くわよ。」
「畏まりました。」
ということで、結婚してこの邸に来てから、初めて伯爵様の執務室にやって来た鬼嫁。
鬼嫁から会いに来るとは思っていなかったらしく、伯爵様や側近達が驚愕の表情をしていた。
「伯爵様。お忙しいところ申し訳ありません。
大切なお話をしたいのですが、少しお時間よろしいでしょうか?」
「あ、ああ…。構わない。そこに座ってくれ。」
「いえ、このままで結構ですわ。
あっ、側近の方達はそのまま仕事を続けて下さって大丈夫ですのよ。私達の会話は気にしないで下さいませ。忙しい中、本当にごめんなさいね。」
別に聞かれて困る話ではないからね。
「伯爵様。第二夫人が体調不良だと聞きました。
すぐに侍医を呼んで診てもらって下さいませ。」
「エレノア。あの女は自分で診察を拒否しているのだ。本人が拒否しているなら必要ないし、君があんな女を気にすることはない。」
「伯爵様はあんな女と言いますが、一応はこの伯爵家の第二夫人ですわ。
伝染病や妊娠の可能性も考えられるのです。きちんと診察を受けさせてください。
メイド達の言うことを聞かないようなので、伯爵様が厳しく対応すべきですわ!伯爵様の言うことも聞けないようなら、実家に連絡して迎えに来させるくらいのことをしてもいいと思います。」
「妊娠…?」
妊娠という言葉で顔色が悪くなる伯爵様。
「そうですわ。伯爵家の跡取りが産まれるかもしれないのですから、早くお調べしたほうがよろしいかと思いますわよ。」
「……あんな女の子供など要らない。」
あらー、はっきり言っちゃったわね。
「伯爵様。それはどうでもいいので、とにかく診察を受けさせて下さい!」
「分かった…。私からあの女に話す。」
「頼みましたわよ。」
伯爵様はすぐに侍医を呼び、侍医と家令・メイド長と一緒にアブスの部屋を訪ねて、診察を受けないと邸を追い出すとまで言って診察を受けさせたらしい。
診察の結果は……
食べ過ぎによる胃炎と、もしかしたら想像妊娠ではないかと侍医は言っていたようだ。
そういえば、コッテリしたご馳走を沢山食べてくれていたわね。
しかし、アブスは本気で妊娠していると思い込んでいたようだった。
太ってきているし、お腹も出てきている。月経も止まっているから、私は絶対に妊娠していると言ったらしい。
お腹の赤ちゃんが私に沢山食べて欲しいって訴えているから、あんなに食欲があったのに、悪阻で吐いてしまったのだと真顔で話したとか。
医師はストレスで生理が止まっているだけだと話をしたらしいが、アブスは納得してなかったようだ。
ここからはメイド長が教えてくれた、アブスが診察中に話していた内容……
このヤブ医者は、夫人(エレノア)の息のかかった医者だから信用できないわ。
妊娠が夫人にバレたら、毒を盛られて流産させられてしまうから、出産ギリギリまで妊娠を秘密にしておきたかったのに!
アンタ(メイド長)が夫人にバラしたわね?アンタはクビよ!今すぐ出て行きなさい。
アラン様ぁ!私は貴方の大切なお子を身籠もっているのです。あの女(エレノア)に命を狙われてしまいますから、今すぐあの女をこの邸から追い出して下さいませ。
貴方のお子を身籠もった私をもっと愛して下さいませぇ。
妊娠していますが、アラン様をお慰めいたしますわ。
そんなアブスに伯爵様がマジギレしたようだ。
お前が出ていけばいいだろう!…と怒鳴りつけた伯爵様は、すぐにアブスの両親を呼びつけたらしい。
呼び出されたアブスの両親に伯爵様は、体調不良だったが、侍医に想像妊娠だと診察されたこと、しかしヤブ医者だと言って診断を信用しないし、妊娠がバレて毒を盛られるとか意味不明なことを言い出して困っていると報告。
精神状態が不安定だから、落ち着くまでは実家で療養するようにと命令して、アブス子爵家に里帰りさせることにしたようだ。
正妻を侮辱する発言ばかりしているので、子爵家できちんと教育し直すようにとも伝えたようで、体調が良くなっても教育が終わるまでは伯爵家には戻らないようにと、アブスの両親に釘を刺したとか。
アブスの両親は平謝りで、アブスを連れて帰ったようだ。
「メイド長、お疲れ様。
お客様はいなくなったのだし、しばらく気分転換にお休みしなさい。
これでどこかに出掛けて来なさい。はい!」
鬼嫁はアブスに疲れ切っていたメイド長に、金貨10枚を渡した。
「奥様…。ありがとうございます。
奥様だけです。私を労って下さるのは。」
メイド長は1週間お休みして、元気になって戻って来た。
後は何事もなく、静かに白い結婚を待つのみ。
このむさ苦しい邸も、あと数ヶ月の辛抱よ。
それに向けて、仕事も頑張っちゃうんだから!
そんな私は上機嫌に仕事をこなす日々を送っていたのだが……
「奥様。お客様が体調不良らしく、嘔吐されています。
侍医を呼んで診てもらおうとしたのですが、お客様は病気ではないから侍医は呼ばなくてよいと言って聞かないのです。
どう致しましょうか?」
メイド長は今日も疲れた顔をしている。
メイド長の言うお客様とは、客間で生活しているアブスのことだ。
伯爵様が使用人達に「あの女は妻ではない宣言」をしたらしく、使用人達はみんなお客様と呼んでいるらしい。
アブスの管理責任者は伯爵様なのに。
いくら嫌いだからって、無関心を通り越して無責任になってるわ!
「もしかして妊娠とか?」
「奥様。悪阻でしたら、もっと早くに症状として出ていてもおかしくはないかと。」
「そうよね…。悪阻なら妊娠3ヶ月くらいが酷いはずで、あの日の行為で妊娠したとしたら、悪阻は落ち着いてきてもいいわよね。
それとも、この邸に引っ越しをして来てから、実は二人は熱い夜を何度も過ごしているとか?
私に気を遣って秘密にしているけど、夜は一緒に寝ているとか?…ふふっ!」
「奥様、それだけは絶対にあり得ませんわ。旦那様はお客様を視界にすら入れたくないようですから。
嘔吐が続いているようなので、侍医に診てもらった方がいいかと思ったのですが、お客様は病気じゃないと言い張りますし、旦那様は放っておけと言いますし、本当に困りました。」
メイド長が可哀想だわ。
しょうがない。鬼嫁がガツンと言ってやるか!
「メイド長。伯爵様は執務室にいるのかしら?」
「はい。今日は外出の予定は入っておりませんので、執務室にいらっしゃると思います。」
「…行くわよ。」
「畏まりました。」
ということで、結婚してこの邸に来てから、初めて伯爵様の執務室にやって来た鬼嫁。
鬼嫁から会いに来るとは思っていなかったらしく、伯爵様や側近達が驚愕の表情をしていた。
「伯爵様。お忙しいところ申し訳ありません。
大切なお話をしたいのですが、少しお時間よろしいでしょうか?」
「あ、ああ…。構わない。そこに座ってくれ。」
「いえ、このままで結構ですわ。
あっ、側近の方達はそのまま仕事を続けて下さって大丈夫ですのよ。私達の会話は気にしないで下さいませ。忙しい中、本当にごめんなさいね。」
別に聞かれて困る話ではないからね。
「伯爵様。第二夫人が体調不良だと聞きました。
すぐに侍医を呼んで診てもらって下さいませ。」
「エレノア。あの女は自分で診察を拒否しているのだ。本人が拒否しているなら必要ないし、君があんな女を気にすることはない。」
「伯爵様はあんな女と言いますが、一応はこの伯爵家の第二夫人ですわ。
伝染病や妊娠の可能性も考えられるのです。きちんと診察を受けさせてください。
メイド達の言うことを聞かないようなので、伯爵様が厳しく対応すべきですわ!伯爵様の言うことも聞けないようなら、実家に連絡して迎えに来させるくらいのことをしてもいいと思います。」
「妊娠…?」
妊娠という言葉で顔色が悪くなる伯爵様。
「そうですわ。伯爵家の跡取りが産まれるかもしれないのですから、早くお調べしたほうがよろしいかと思いますわよ。」
「……あんな女の子供など要らない。」
あらー、はっきり言っちゃったわね。
「伯爵様。それはどうでもいいので、とにかく診察を受けさせて下さい!」
「分かった…。私からあの女に話す。」
「頼みましたわよ。」
伯爵様はすぐに侍医を呼び、侍医と家令・メイド長と一緒にアブスの部屋を訪ねて、診察を受けないと邸を追い出すとまで言って診察を受けさせたらしい。
診察の結果は……
食べ過ぎによる胃炎と、もしかしたら想像妊娠ではないかと侍医は言っていたようだ。
そういえば、コッテリしたご馳走を沢山食べてくれていたわね。
しかし、アブスは本気で妊娠していると思い込んでいたようだった。
太ってきているし、お腹も出てきている。月経も止まっているから、私は絶対に妊娠していると言ったらしい。
お腹の赤ちゃんが私に沢山食べて欲しいって訴えているから、あんなに食欲があったのに、悪阻で吐いてしまったのだと真顔で話したとか。
医師はストレスで生理が止まっているだけだと話をしたらしいが、アブスは納得してなかったようだ。
ここからはメイド長が教えてくれた、アブスが診察中に話していた内容……
このヤブ医者は、夫人(エレノア)の息のかかった医者だから信用できないわ。
妊娠が夫人にバレたら、毒を盛られて流産させられてしまうから、出産ギリギリまで妊娠を秘密にしておきたかったのに!
アンタ(メイド長)が夫人にバラしたわね?アンタはクビよ!今すぐ出て行きなさい。
アラン様ぁ!私は貴方の大切なお子を身籠もっているのです。あの女(エレノア)に命を狙われてしまいますから、今すぐあの女をこの邸から追い出して下さいませ。
貴方のお子を身籠もった私をもっと愛して下さいませぇ。
妊娠していますが、アラン様をお慰めいたしますわ。
そんなアブスに伯爵様がマジギレしたようだ。
お前が出ていけばいいだろう!…と怒鳴りつけた伯爵様は、すぐにアブスの両親を呼びつけたらしい。
呼び出されたアブスの両親に伯爵様は、体調不良だったが、侍医に想像妊娠だと診察されたこと、しかしヤブ医者だと言って診断を信用しないし、妊娠がバレて毒を盛られるとか意味不明なことを言い出して困っていると報告。
精神状態が不安定だから、落ち着くまでは実家で療養するようにと命令して、アブス子爵家に里帰りさせることにしたようだ。
正妻を侮辱する発言ばかりしているので、子爵家できちんと教育し直すようにとも伝えたようで、体調が良くなっても教育が終わるまでは伯爵家には戻らないようにと、アブスの両親に釘を刺したとか。
アブスの両親は平謝りで、アブスを連れて帰ったようだ。
「メイド長、お疲れ様。
お客様はいなくなったのだし、しばらく気分転換にお休みしなさい。
これでどこかに出掛けて来なさい。はい!」
鬼嫁はアブスに疲れ切っていたメイド長に、金貨10枚を渡した。
「奥様…。ありがとうございます。
奥様だけです。私を労って下さるのは。」
メイド長は1週間お休みして、元気になって戻って来た。
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