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閑話 王子殿下
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いつものように忙しく執務をこなしていたある日のことだった。
幼馴染で私の側近でもあるハリーが、勢いよく執務室に入って来る。
「殿下!!」
「ハリー、騒がしいぞ。」
「殿下に手紙が届いている。
…女性からだ。」
第二王子という身分に惹かれるのか、私に言いよる令嬢は昔から多かった。どうせまたよく知らない令嬢からの恋文だろう。
「ハリー、私に手紙が届いても全く付き合いのない令嬢だから、無視してよいと言ってるだろうが!」
「捨ててもいいのですね?」
「構わない。どうせ意味の無い恋文だろうから。」
「差出人の名前にエレノア・ロジャースって書いてありますけど、捨ててもい………」
「何だって!!」
エレノアと聞いて、無意識にハリーに詰め寄っていた。
「手紙が破れてしまうではないですか!」
ハリーを無視して、手紙を見ると確かに〝エレノア・ロジャース〟と書いてある。ロジャース伯爵家の紋章で間違いない。
エレノアから手紙が届くなんて初めてのことだ…。
「殿下、何て書いてあるのです?
もしかして、離縁するから殿下に迎えに来て欲しいとか書いて……、痛っ!叩かないで下さいよ!」
「ハリー、ちょっと黙ってろ!」
煩いハリーを黙らせ、胸が高鳴るのを落ち着かせ、手紙の封を開ける。
手紙の内容は、先日の夜会のお礼で始まる。
エイベル伯爵令嬢にいつも絡まれて困っていたが、王子殿下が助けて下さって嬉しかったこと、友人だと言ってもらえて大変光栄だと書いてある。
こんな風に手紙でお礼を伝えてくれるなんて…。
エレノアがこんな風に感謝してくれることは初めてのことだし、正直、とても嬉しい。
でも…、それくらい彼女は弱っているのかもしれない。
あの日のエレノアは、夫であるロジャース伯爵とは別行動で、義弟のギルバートと一緒だった。
何となく疲れた表情をしていた。周りには分からなくても、ずっとエレノアを見てきた私には分かる。
あの日のエイベル伯爵令嬢は特に酷かった。学生の頃から私に付き纏い、エレノアにはつらく当たる迷惑でしかない女。
エレノアを一方的にライバル視して、この前の夜会では、エレノアの夫の不貞の話をワザとエレノアに振る性悪女。
エレノアが傷付いているのを知りながら、あんな言葉を投げかけるなんて許せないと思った。
あの女は学生の頃から、エレノアに対する態度が酷かったので、私から何度か注意してきたが、全く効果はなかった。
そして今回はさすがに許せないと思った私は、エイベル伯爵家に王家から抗議する書簡を出した。
私の友人を侮辱し続け、何度も注意をしてきたのに全く反省をしていないことと、王家主催の夜会に今後2年間の参加を禁止すると明記して。
これであの女も自分のやってきたことを少しは反省すれば良いと考えていたのだが、その考えは甘かったことをすぐに知ることになる。
エレノアの手紙には、せっかく王子殿下がエイベル伯爵令嬢に反省を促す話をしたのに、彼女には全く意味が伝わっていないようで悲しくなったと書いてある。そして、エイベル伯爵令嬢がエレノアに書いたと思われる手紙が同封してあった。
その手紙の内容は、とにかく酷いものであった。
あの女、私の前でだけ猫をかぶりやがって!
怒りが込み上げて来た私は、エイベル伯爵令嬢の手紙を握りしめて、この国の王妃である母の所に向かっていた。
令嬢が1番堪える罰は何かを相談する為だ。
こういうことは、母か兄上の妃である義姉に相談した方が良さそうだと判断した。
「マテオ…。この手紙は何なの?あの小娘は、マテオが注意したにも関わらず、全く分かってないのねぇ。
私達王族も随分と下に見られたものだわ。」
「母上、あの女は学生時代からこうなのですよ。何度注意したか分かりません。
それで…、令嬢が1番堪える罰みたいなものはありますか?」
「ふふ…。社交を1年間禁止にしましょうか。年頃の令嬢にはキツいと思うわよ。
それとは別に、小娘の母親であるエイベル伯爵夫人に私から直接手紙を書いておきましょう。きちんと娘を躾けるようにと。
あの小娘ごときが、エレノアに絡むなんて身の程知らずもいいところよ。」
これは怒っているな…。
「ありがとうございます。では、私の方でまたエイベル伯爵家に書簡を送りますね。」
「エイベル伯爵夫人宛ての手紙には、小娘がマテオに付き纏って困っていることと、早く小娘に相応しい相手を見つけてあげなさいとも付け加えて書いておくわ。」
「お願いします。」
母上は、大金持ちの家に生まれながらも、努力家で飾らない性格のエレノアをとても気に入っている。
今回のことは、王妃である母がエイベル伯爵夫人に直接手紙を送ることで、エイベル伯爵家にとってはかなり大きな圧力になるだろう。
幼馴染で私の側近でもあるハリーが、勢いよく執務室に入って来る。
「殿下!!」
「ハリー、騒がしいぞ。」
「殿下に手紙が届いている。
…女性からだ。」
第二王子という身分に惹かれるのか、私に言いよる令嬢は昔から多かった。どうせまたよく知らない令嬢からの恋文だろう。
「ハリー、私に手紙が届いても全く付き合いのない令嬢だから、無視してよいと言ってるだろうが!」
「捨ててもいいのですね?」
「構わない。どうせ意味の無い恋文だろうから。」
「差出人の名前にエレノア・ロジャースって書いてありますけど、捨ててもい………」
「何だって!!」
エレノアと聞いて、無意識にハリーに詰め寄っていた。
「手紙が破れてしまうではないですか!」
ハリーを無視して、手紙を見ると確かに〝エレノア・ロジャース〟と書いてある。ロジャース伯爵家の紋章で間違いない。
エレノアから手紙が届くなんて初めてのことだ…。
「殿下、何て書いてあるのです?
もしかして、離縁するから殿下に迎えに来て欲しいとか書いて……、痛っ!叩かないで下さいよ!」
「ハリー、ちょっと黙ってろ!」
煩いハリーを黙らせ、胸が高鳴るのを落ち着かせ、手紙の封を開ける。
手紙の内容は、先日の夜会のお礼で始まる。
エイベル伯爵令嬢にいつも絡まれて困っていたが、王子殿下が助けて下さって嬉しかったこと、友人だと言ってもらえて大変光栄だと書いてある。
こんな風に手紙でお礼を伝えてくれるなんて…。
エレノアがこんな風に感謝してくれることは初めてのことだし、正直、とても嬉しい。
でも…、それくらい彼女は弱っているのかもしれない。
あの日のエレノアは、夫であるロジャース伯爵とは別行動で、義弟のギルバートと一緒だった。
何となく疲れた表情をしていた。周りには分からなくても、ずっとエレノアを見てきた私には分かる。
あの日のエイベル伯爵令嬢は特に酷かった。学生の頃から私に付き纏い、エレノアにはつらく当たる迷惑でしかない女。
エレノアを一方的にライバル視して、この前の夜会では、エレノアの夫の不貞の話をワザとエレノアに振る性悪女。
エレノアが傷付いているのを知りながら、あんな言葉を投げかけるなんて許せないと思った。
あの女は学生の頃から、エレノアに対する態度が酷かったので、私から何度か注意してきたが、全く効果はなかった。
そして今回はさすがに許せないと思った私は、エイベル伯爵家に王家から抗議する書簡を出した。
私の友人を侮辱し続け、何度も注意をしてきたのに全く反省をしていないことと、王家主催の夜会に今後2年間の参加を禁止すると明記して。
これであの女も自分のやってきたことを少しは反省すれば良いと考えていたのだが、その考えは甘かったことをすぐに知ることになる。
エレノアの手紙には、せっかく王子殿下がエイベル伯爵令嬢に反省を促す話をしたのに、彼女には全く意味が伝わっていないようで悲しくなったと書いてある。そして、エイベル伯爵令嬢がエレノアに書いたと思われる手紙が同封してあった。
その手紙の内容は、とにかく酷いものであった。
あの女、私の前でだけ猫をかぶりやがって!
怒りが込み上げて来た私は、エイベル伯爵令嬢の手紙を握りしめて、この国の王妃である母の所に向かっていた。
令嬢が1番堪える罰は何かを相談する為だ。
こういうことは、母か兄上の妃である義姉に相談した方が良さそうだと判断した。
「マテオ…。この手紙は何なの?あの小娘は、マテオが注意したにも関わらず、全く分かってないのねぇ。
私達王族も随分と下に見られたものだわ。」
「母上、あの女は学生時代からこうなのですよ。何度注意したか分かりません。
それで…、令嬢が1番堪える罰みたいなものはありますか?」
「ふふ…。社交を1年間禁止にしましょうか。年頃の令嬢にはキツいと思うわよ。
それとは別に、小娘の母親であるエイベル伯爵夫人に私から直接手紙を書いておきましょう。きちんと娘を躾けるようにと。
あの小娘ごときが、エレノアに絡むなんて身の程知らずもいいところよ。」
これは怒っているな…。
「ありがとうございます。では、私の方でまたエイベル伯爵家に書簡を送りますね。」
「エイベル伯爵夫人宛ての手紙には、小娘がマテオに付き纏って困っていることと、早く小娘に相応しい相手を見つけてあげなさいとも付け加えて書いておくわ。」
「お願いします。」
母上は、大金持ちの家に生まれながらも、努力家で飾らない性格のエレノアをとても気に入っている。
今回のことは、王妃である母がエイベル伯爵夫人に直接手紙を送ることで、エイベル伯爵家にとってはかなり大きな圧力になるだろう。
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