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夜会は波乱 1
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家庭内別居中のエレノア20歳、今日は王太子殿下の誕生日を祝う夜会に来ています。
ここに到着する前、邸で少し揉めて来たので、すでに少し疲れ気味。
何を揉めたのかというと……
優しい鬼嫁である私は、新婚の2人(伯爵様と第二夫人のアブスね)が初めて一緒に参加する夜会だからと、2人きりになれるように気を遣って、別の馬車で王宮に行くつもりでいたのだ。
優しい義弟のギルが、今夜はエスコートと送り迎えをしてくれる予定になっていて、ギルは少し早めに迎えに来てくれたのだが…、その時、伯爵様が出てきてしまって軽く修羅場になってしまった。
「エレノアは私の妻だ。どうして、義弟のベネット卿がエレノアのエスコートをする必要があるのだ?」
「伯爵様は新婚の第二夫人をエスコートしてあげて下さいませ。
私はギルと先に行っておりますわ。王族に挨拶する時は伯爵様と合流しますから大丈夫です。
2人の時間を大切にして頂きたいのですわ。」
「アレは妻ではない!私の妻はエレノアだけだと言っている!」
え……?〝アレ〟って言った?アブスを名前で呼んであげないの?
ちょっとー!!
「伯爵様、何を言っているのです?貴方がどんな感情をお持ちなのかは私には関係ありませんが、一応はあの方は第二夫人なのですわ!
あの方が嫁いで来られて初めての夜会なのです。お飾りの妻の私よりも、今日は第二夫人を優先してあげて下さいませ。」
「お飾りじゃないと言っている。私はエレノアだけを愛しているんだ…。どうして分からない?」
はいはい…。
エレノアの金を愛しているのは理解してますから大丈夫です。
その時…、
ん?視線が……?
うわー!!アブスが少し離れた所からこっちを見ているわ。
しかも私を睨みつけているよ、アレは…。
やっぱり大人しそうなフリして、本性はなかなかなのね…。
私は別に敵対するつもりはなかったのだけど、アンタがそういう態度をとるなら……。ふふ!
「きゃー!怖い!」
私は可愛らしく?叫んでギルの影に隠れてみた。
「義姉さん、大丈夫?あの第二夫人、自分の立場を分からないようだ…。
義姉さんを睨みつけるなんて!!」
ギルがすごい目で、アブスを睨み返した。
さすがギルね。私のこの酷い演技にちゃんとついて来てくれるなんて。
「ロジャース伯爵様、貴方はあの第二夫人をどう躾けているのです?
この邸の女主人である義姉を睨みつけるなんて、なんて女だ。
あんな女の側に義姉を置いておくのは、不安でしかないので、やはり今日は私が義姉のエスコートを致します。
伯爵様は、あの身の程知らずの女をきちんと見張って下さいね。義姉に危害を加えることのないように頼みましたよ。
義姉さん、行こう。」
皆さーん!私の義弟はいい男でしょ?
独身の貴族の中で、今1番のオススメよー!!
……と叫びたいくらいだった。
しかし、アブスはしばらくぶりに見たらかなり太っていたな…。よほどベネット家のシェフの料理がお口に合っているようね。
ふふ…。ウチの実家のシェフを気に入ってもらえて、鬼嫁も嬉しいわよ。
アブスの今日の装いは、伯爵様の瞳の色を意識したようなブルーに、胸がポロリしそうなデザインのドレスだった。
夜会のドレスが欲しいと伯爵様に強請って、ドケチな伯爵様が渋々お金を払ったとメイド長が言っていたドレス。
やっぱり、派手で胸の開いたドレスがお好みなのね…。
悪役令嬢じゃなくて、悪役夫人っぽくてお似合いよ。
そして、アブスに夜会のドレスを強請られて、私の存在を思い出したらしく、慌ててドレスをプレゼントさせて欲しいと手紙を書いてきた伯爵様。
今まで何もプレゼントしてもらったことがないアナタから、プレゼントを受け取るほど恐ろしいことはないのよ…。丁重にお断りさせて頂いたわ。
「義姉さん。あの女は危険だから、うちの暗部の人間に監視させることにしたから。
そのうち義姉さんに毒を盛ったり、呪いをかけるくらいのことはしそうだよ。」
「ギルもそう思う?何か危険だから、私は関わらないようにしているのよ。
でも…、伯爵様に全く相手にされてないのを私のせいにしていると思うから、またああやって睨みつけてきそうね。」
「今日は私が義姉さんの側に付いているから安心して。
義姉さんは、あの女の媚薬事件から夜会は自粛していて、久しぶりの夜会で色々と不安かもしれないけど…、殆どの貴族が義姉さんに同情的みたいだし、ベネット家を敵にはしたくないだろうから、表面的に攻撃してくる奴は少ないと思う。
それに何かあれば私が義姉さんの盾になるから。」
ジーン……。ギルがいい男になっていて、義姉さんは嬉しいわ。
「ギル。ありがとう。今日は頼りにしているわね!
ギルがいてくれて良かった!」
「私はいつでも義姉さんの1番の味方だよ。」
ギルの優しさに癒されながら、夜会の会場である王宮に向かうのだが、今夜の夜会は予想通りに波乱が待ち受けるのであった。
ここに到着する前、邸で少し揉めて来たので、すでに少し疲れ気味。
何を揉めたのかというと……
優しい鬼嫁である私は、新婚の2人(伯爵様と第二夫人のアブスね)が初めて一緒に参加する夜会だからと、2人きりになれるように気を遣って、別の馬車で王宮に行くつもりでいたのだ。
優しい義弟のギルが、今夜はエスコートと送り迎えをしてくれる予定になっていて、ギルは少し早めに迎えに来てくれたのだが…、その時、伯爵様が出てきてしまって軽く修羅場になってしまった。
「エレノアは私の妻だ。どうして、義弟のベネット卿がエレノアのエスコートをする必要があるのだ?」
「伯爵様は新婚の第二夫人をエスコートしてあげて下さいませ。
私はギルと先に行っておりますわ。王族に挨拶する時は伯爵様と合流しますから大丈夫です。
2人の時間を大切にして頂きたいのですわ。」
「アレは妻ではない!私の妻はエレノアだけだと言っている!」
え……?〝アレ〟って言った?アブスを名前で呼んであげないの?
ちょっとー!!
「伯爵様、何を言っているのです?貴方がどんな感情をお持ちなのかは私には関係ありませんが、一応はあの方は第二夫人なのですわ!
あの方が嫁いで来られて初めての夜会なのです。お飾りの妻の私よりも、今日は第二夫人を優先してあげて下さいませ。」
「お飾りじゃないと言っている。私はエレノアだけを愛しているんだ…。どうして分からない?」
はいはい…。
エレノアの金を愛しているのは理解してますから大丈夫です。
その時…、
ん?視線が……?
うわー!!アブスが少し離れた所からこっちを見ているわ。
しかも私を睨みつけているよ、アレは…。
やっぱり大人しそうなフリして、本性はなかなかなのね…。
私は別に敵対するつもりはなかったのだけど、アンタがそういう態度をとるなら……。ふふ!
「きゃー!怖い!」
私は可愛らしく?叫んでギルの影に隠れてみた。
「義姉さん、大丈夫?あの第二夫人、自分の立場を分からないようだ…。
義姉さんを睨みつけるなんて!!」
ギルがすごい目で、アブスを睨み返した。
さすがギルね。私のこの酷い演技にちゃんとついて来てくれるなんて。
「ロジャース伯爵様、貴方はあの第二夫人をどう躾けているのです?
この邸の女主人である義姉を睨みつけるなんて、なんて女だ。
あんな女の側に義姉を置いておくのは、不安でしかないので、やはり今日は私が義姉のエスコートを致します。
伯爵様は、あの身の程知らずの女をきちんと見張って下さいね。義姉に危害を加えることのないように頼みましたよ。
義姉さん、行こう。」
皆さーん!私の義弟はいい男でしょ?
独身の貴族の中で、今1番のオススメよー!!
……と叫びたいくらいだった。
しかし、アブスはしばらくぶりに見たらかなり太っていたな…。よほどベネット家のシェフの料理がお口に合っているようね。
ふふ…。ウチの実家のシェフを気に入ってもらえて、鬼嫁も嬉しいわよ。
アブスの今日の装いは、伯爵様の瞳の色を意識したようなブルーに、胸がポロリしそうなデザインのドレスだった。
夜会のドレスが欲しいと伯爵様に強請って、ドケチな伯爵様が渋々お金を払ったとメイド長が言っていたドレス。
やっぱり、派手で胸の開いたドレスがお好みなのね…。
悪役令嬢じゃなくて、悪役夫人っぽくてお似合いよ。
そして、アブスに夜会のドレスを強請られて、私の存在を思い出したらしく、慌ててドレスをプレゼントさせて欲しいと手紙を書いてきた伯爵様。
今まで何もプレゼントしてもらったことがないアナタから、プレゼントを受け取るほど恐ろしいことはないのよ…。丁重にお断りさせて頂いたわ。
「義姉さん。あの女は危険だから、うちの暗部の人間に監視させることにしたから。
そのうち義姉さんに毒を盛ったり、呪いをかけるくらいのことはしそうだよ。」
「ギルもそう思う?何か危険だから、私は関わらないようにしているのよ。
でも…、伯爵様に全く相手にされてないのを私のせいにしていると思うから、またああやって睨みつけてきそうね。」
「今日は私が義姉さんの側に付いているから安心して。
義姉さんは、あの女の媚薬事件から夜会は自粛していて、久しぶりの夜会で色々と不安かもしれないけど…、殆どの貴族が義姉さんに同情的みたいだし、ベネット家を敵にはしたくないだろうから、表面的に攻撃してくる奴は少ないと思う。
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「ギル。ありがとう。今日は頼りにしているわね!
ギルがいてくれて良かった!」
「私はいつでも義姉さんの1番の味方だよ。」
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