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捨て駒はダメ
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アブスが子爵家から連れて来た専属メイドのエマに、優しい鬼嫁から挨拶代わりの金貨3枚を渡す。
エマの顔色が更に悪くなったのが分かった。
「お、奥様…。これは?」
「挨拶代わりにあげるわ。この邸の使用人達には、人手不足でも一生懸命働いてくれているから、感謝の気持ちとして、定期的に金貨をあげているのよ。」
「…こんなに沢山ですか?」
この反応は…。多分、エマは平民出身ね。
「ええ。貴女にもこれから色々とお世話になると思うから、あげるわね。」
「あ、ありがとうございます。」
恐る恐る金貨を受け取るエマ。
「……ところで、貴女が仕えているお嬢様がなぜこの伯爵家に嫁ぐことになったのか、エマは事情を知っているのかしら?」
鬼嫁はこの話を聞きたくてアブスのメイドを呼びつけたのだ。
「はい…。何となくは知っております。」
どこまで知っているの?
「あのお嬢様が媚薬を盛ったことを知っているの?」
「……はい。子爵様や奥様、坊ちゃんがそのことで家族喧嘩をよくしていたので、子爵家の使用人達は気付いていると思います。
それに…、媚薬を買って来るように始めに命令されたのは私でしたので。」
あら、アブスのメイドは随分と正直者じゃないの。
こういう子、私は嫌いじゃないわね。
「そうだったのね…。貴女も大変ね。
ところで…エマは、相手の同意なく媚薬を盛るのは犯罪だと知っていたのかしら?
貴女が買いに行かされた媚薬は、購入者以外の人物に渡したり使わせたりしたら、購入した人物本人が告訴されることも知っていたの?」
「え…?告訴ですか?
媚薬を買って来るように命令されて、もし買うことが出来て、私が買って来た媚薬をお嬢様にお渡ししていたら、私は告訴されていたかもしれないのですか?」
「そうなのよ。媚薬は犯罪に使われることが多いから、私の実家の店では、購入者のみが使うって決まりがあって、その決まりを守れない時には告訴をする場合があると説明して、お客様には同意書にサインまで頂いてからお売りしているのよ。」
「媚薬を盛るのは犯罪なのは知ってはおりましたが、命令で買いに行かされた媚薬をお嬢様に渡していたら、私が告訴されてしまうことは知りませんでした…。」
エマの表情が更に暗くなる。
これは…、案外いけるかも!
「エマは平民出身なのかしら?
ごめんなさいね。バカにするとかではなくて、ちょっと気になって聞いているだけなの。」
「はい。平民です。子爵家の使用人はほとんどが平民でしたので。」
「そう…。でも、貴女は品があるから平民出身には見えなかったわ。ここに来るまで、相当な努力をしたのでしょうね。凄いわ!」
「ありがとうございます。」
「でも……、気をつけてね。」
「…はい?」
「あのお嬢様に犯罪の片棒を担がされないように気を付けてってことよ。
すでにあのお嬢様は、伯爵様の妻になりたいからと犯罪を犯したでしょ?
そこまで伯爵様に執着するお嬢様なら、今度は伯爵様の愛とやらを手に入れるために、また何かをするかもしれないって普通なら考えるわよね?」
可哀想なエマはまた顔色が悪くなってしまった。
鬼嫁は虐めてないからね。あくまで注意を促してあげているだけだから。
「何かよからぬことをして、もし失敗でもしたら、あのお嬢様は全ての罪を貴女になすりつけて、自分だけ逃げるかもしれないわ。
何も知らない貴女に媚薬を買いに行かせたようにね。」
「………。」
「いくらメイドとして優秀でも、平民の貴女はそんな時はかなり不利な立場になるわね。
簡単に捨て駒にされてしまうかもしれない…。」
「………。」
「でも、私は初対面だけど、真面目で誠実そうに見えるエマにそんな目にはあって欲しくないわ。
私に力を貸してくれるなら、貴女に何かあった時に私が貴女を守るわよ?」
「…え?」
「エマは真面目でしょ?もしあのお嬢様が、人として反道徳的なことをしたり計画を立てていることに気付いたら、貴女ならすぐにおかしいって分かるわよね?そんな時にすぐに知らせて欲しいのよ。エマは毎日お嬢様の側にいるのだから、何かあればすぐに気付ける立場でしょ?
勘違いしないで欲しいのは、私はあのお嬢様を陥れたくてこんなことを言っているのではなく、この伯爵家を守るために言っているの。
あのお嬢様のやらかしのせいで、この伯爵家の評判はガタ落ちよ。これ以上、何かあると困るの。
だからエマの力を貸してくれないかしら?」
「しかし、私は子爵家に雇われている者ですし…」
「大丈夫よ!何かあれば私が雇ってあげるわ。給与は子爵家より良いと思うわよ。
私、アブス子爵家よりも稼いでいるから!」
「私は………」
エマは私の提案に頷いてくれた。何かあれば、メイド長にすぐに報告すると約束してくれたのだ。
「エマ、今日は色々話してくれてありがとう。忙しい貴女の時間を奪ってしまったお詫びに、これも受け取ってね。」
鬼嫁は追加で金貨2枚をエマに渡した。
「お、奥様…。こんなに沢山ありがとうございます。金貨に見合う働きが出来るように頑張ります。」
「期待しているわよ!
お嬢様にはバレないようにね。表面上エマは、私を嫌っているような態度を取って構わないわ。」
「はい。気を付けます。」
エマはメイド長と一緒に部屋を出て行った。
鬼嫁はお母様のくれた金貨に感謝した!!
真面目なエマは、些細なことやどうでもいいようなことまで、毎日報告に来てくれていると、後日メイド長が教えてくれた。
エマの顔色が更に悪くなったのが分かった。
「お、奥様…。これは?」
「挨拶代わりにあげるわ。この邸の使用人達には、人手不足でも一生懸命働いてくれているから、感謝の気持ちとして、定期的に金貨をあげているのよ。」
「…こんなに沢山ですか?」
この反応は…。多分、エマは平民出身ね。
「ええ。貴女にもこれから色々とお世話になると思うから、あげるわね。」
「あ、ありがとうございます。」
恐る恐る金貨を受け取るエマ。
「……ところで、貴女が仕えているお嬢様がなぜこの伯爵家に嫁ぐことになったのか、エマは事情を知っているのかしら?」
鬼嫁はこの話を聞きたくてアブスのメイドを呼びつけたのだ。
「はい…。何となくは知っております。」
どこまで知っているの?
「あのお嬢様が媚薬を盛ったことを知っているの?」
「……はい。子爵様や奥様、坊ちゃんがそのことで家族喧嘩をよくしていたので、子爵家の使用人達は気付いていると思います。
それに…、媚薬を買って来るように始めに命令されたのは私でしたので。」
あら、アブスのメイドは随分と正直者じゃないの。
こういう子、私は嫌いじゃないわね。
「そうだったのね…。貴女も大変ね。
ところで…エマは、相手の同意なく媚薬を盛るのは犯罪だと知っていたのかしら?
貴女が買いに行かされた媚薬は、購入者以外の人物に渡したり使わせたりしたら、購入した人物本人が告訴されることも知っていたの?」
「え…?告訴ですか?
媚薬を買って来るように命令されて、もし買うことが出来て、私が買って来た媚薬をお嬢様にお渡ししていたら、私は告訴されていたかもしれないのですか?」
「そうなのよ。媚薬は犯罪に使われることが多いから、私の実家の店では、購入者のみが使うって決まりがあって、その決まりを守れない時には告訴をする場合があると説明して、お客様には同意書にサインまで頂いてからお売りしているのよ。」
「媚薬を盛るのは犯罪なのは知ってはおりましたが、命令で買いに行かされた媚薬をお嬢様に渡していたら、私が告訴されてしまうことは知りませんでした…。」
エマの表情が更に暗くなる。
これは…、案外いけるかも!
「エマは平民出身なのかしら?
ごめんなさいね。バカにするとかではなくて、ちょっと気になって聞いているだけなの。」
「はい。平民です。子爵家の使用人はほとんどが平民でしたので。」
「そう…。でも、貴女は品があるから平民出身には見えなかったわ。ここに来るまで、相当な努力をしたのでしょうね。凄いわ!」
「ありがとうございます。」
「でも……、気をつけてね。」
「…はい?」
「あのお嬢様に犯罪の片棒を担がされないように気を付けてってことよ。
すでにあのお嬢様は、伯爵様の妻になりたいからと犯罪を犯したでしょ?
そこまで伯爵様に執着するお嬢様なら、今度は伯爵様の愛とやらを手に入れるために、また何かをするかもしれないって普通なら考えるわよね?」
可哀想なエマはまた顔色が悪くなってしまった。
鬼嫁は虐めてないからね。あくまで注意を促してあげているだけだから。
「何かよからぬことをして、もし失敗でもしたら、あのお嬢様は全ての罪を貴女になすりつけて、自分だけ逃げるかもしれないわ。
何も知らない貴女に媚薬を買いに行かせたようにね。」
「………。」
「いくらメイドとして優秀でも、平民の貴女はそんな時はかなり不利な立場になるわね。
簡単に捨て駒にされてしまうかもしれない…。」
「………。」
「でも、私は初対面だけど、真面目で誠実そうに見えるエマにそんな目にはあって欲しくないわ。
私に力を貸してくれるなら、貴女に何かあった時に私が貴女を守るわよ?」
「…え?」
「エマは真面目でしょ?もしあのお嬢様が、人として反道徳的なことをしたり計画を立てていることに気付いたら、貴女ならすぐにおかしいって分かるわよね?そんな時にすぐに知らせて欲しいのよ。エマは毎日お嬢様の側にいるのだから、何かあればすぐに気付ける立場でしょ?
勘違いしないで欲しいのは、私はあのお嬢様を陥れたくてこんなことを言っているのではなく、この伯爵家を守るために言っているの。
あのお嬢様のやらかしのせいで、この伯爵家の評判はガタ落ちよ。これ以上、何かあると困るの。
だからエマの力を貸してくれないかしら?」
「しかし、私は子爵家に雇われている者ですし…」
「大丈夫よ!何かあれば私が雇ってあげるわ。給与は子爵家より良いと思うわよ。
私、アブス子爵家よりも稼いでいるから!」
「私は………」
エマは私の提案に頷いてくれた。何かあれば、メイド長にすぐに報告すると約束してくれたのだ。
「エマ、今日は色々話してくれてありがとう。忙しい貴女の時間を奪ってしまったお詫びに、これも受け取ってね。」
鬼嫁は追加で金貨2枚をエマに渡した。
「お、奥様…。こんなに沢山ありがとうございます。金貨に見合う働きが出来るように頑張ります。」
「期待しているわよ!
お嬢様にはバレないようにね。表面上エマは、私を嫌っているような態度を取って構わないわ。」
「はい。気を付けます。」
エマはメイド長と一緒に部屋を出て行った。
鬼嫁はお母様のくれた金貨に感謝した!!
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