52 / 125
閑話 アブス子爵令嬢
しおりを挟む
没落しそうなロジャース伯爵様と、大金持ちのベネット伯爵令嬢の婚約の話題は、社交界で1番大きな話題になっていた。
大金持ちの世間知らずの令嬢を、見目だけはいい貧乏伯爵が上手く落としたと言う人が多く、聞いていて気分のいいものではなかった。
ロジャース伯爵様は、とてもお優しいお方なのに…。
あんな金持ちの令嬢と婚約なんてするから、色々言われてしまうのよ。
「ララ。貴女が好きだったロジャース伯爵様は、あの大金持ちの令嬢と婚約したらしいわね。
優しいとか言っていたけど、あの伯爵様も若くて綺麗な金持ちの女性が好きだったのね。他の男性と一緒だわ。」
「お母様でも、そんな風に言うのは許せません!」
「何を言ってるの?結婚するのに、お金は必要なのよ!
そう言えば…、ベネット伯爵家の跡取りの子息がいたわよね?ララより少し年下だったかしら?
残念だわ…。」
この人は……!
2人を夜会で見ることがあったが、仲睦まじい様子だった。
ロジャース伯爵様がベネット伯爵令嬢を見る目は穏やかで、ベネット伯爵令嬢は、ロジャース伯爵様しか目に入らないといったような雰囲気を出している。
やっぱり、あの2人は両思いだったのね…。
ベネット伯爵令嬢…、私は貴女が大嫌い。
私の欲しいものを全部持っている貴女が憎い…。
そんな私は、ついベネット伯爵令嬢をバカにするようなことを言ってしまったことがあった。
『お金でロジャース伯爵様を買ったようなものよ。伯爵様が可哀想だわ。』
『大金持ちだから、我儘で傲慢な令嬢に違いないわ。ロジャース伯爵様は結婚したら苦労するでしょうね。』
『ロジャース伯爵様だけでなく、王子殿下にも媚を売っているらしいわよ。はしたないわね。』
『ちょっと綺麗で金持ちだからって、世の中の男性全てに好かれているだなんて勘違いはしないで欲しいわ。本当にバカな女…。』
そんなことばかり話していたら、
「ララ…、どうしちゃったの?ロジャース伯爵様が好きだったのは分かるけど、あからさまな嫉妬は見苦しいわよ。」
「前のララはそんなことを言う子じゃなかったのに…。
ララはベネット伯爵令嬢と会話したこともないわよね?それなのに酷いと思うわ。」
数少ない友人が離れていった…。
2人はそのまま一年後くらいに結婚し、私の長い恋はこれで終わったと思っていた……
しかし…
結婚してからの2人を夜会で見ていたら、以前と雰囲気が変わってしまっていることに気がついてしまった。
結婚してロジャース伯爵夫人になった彼女が、伯爵様を見る目が違うし、ロジャース伯爵様も何かが違うのだ。よく分からないけど、何となく不自然な感じがする。
更に、ロジャース伯爵様だけで夜会に来ている姿をよく見るようになる。
上手くいってないのかしら…
その頃になると、ロジャース伯爵夫人の事業がかなり凄い勢いで成長していると耳にする。
投資すれば大成功し、店を出せば大当たりで予約が取れないとか、王妃殿下まで利用しているだとか…。
社交の場では、予約の取れないロジャース伯爵夫人の店に行った話が自慢になるくらいだった。
ロジャース伯爵家の借金の為に、夫人が必死に働いているだとか、あの伯爵家が一気にお金持ちになったとか噂話も聞くようになる。
「ロジャース伯爵家は、大金持ちになったらしいから、第二夫人になるのもいいかもしれないわね。」
「伯爵様、とても素敵だし、最近は夫人と上手くいってないって聞いたわ。狙っちゃおうかしら?」
「いいわね!第一夫人に稼いでもらって、第二夫人は跡継ぎを産めばいいんだわ!」
みんな勝手なことを言っている…。
私はロジャース伯爵様がお金持ちになる前から、ずっと好きだったのに。
更にはお母様まで
「ララ。ロジャース伯爵夫人の事業は凄いみたいね。どのお店も大人気で予約が取れないみたいよ。
ロジャース伯爵家がこんなにお金持ちなら、第二夫人になるのも悪くないわね。
どうせ、仕事が忙しいからと旦那様を放置しているんでしょう?子供を産んで夫の寵愛を受ければ、第二夫人だって悪くないわよね。」
「そんな上手くはいきませんわ。他に別の女性がいたら、あの夫人なら離縁するのではないでしょうか?」
「大丈夫よ。離縁は夫婦2人が同意しないと出来ないのだし、あの伯爵様がパトロンとの離縁に応じるはずがないわ。
それに、あの夫人の方が伯爵様を好きになって結婚したって話じゃないの。伯爵様が大好きな小娘から、離縁なんて絶対に言い出せないわよ。
上手く伯爵様に取り入れば、第二夫人でもいい待遇を受けられるわ。」
「…………。」
ある夜会で、ロジャース伯爵様が1人で参加している姿を見かけた。
友人夫婦と楽しそうに会話している。
「アラン。夫人は今日も忙しいのか?」
「ああ。取引先との付き合いがあるらしい。」
「アランのとこも跡取りが必要なのだから、夫婦2人の時間も大切にしろよ。」
「……分かっているさ。」
あのロジャース伯爵様が一瞬、悲しげな目をしていたことに気づいてしまった。
やはりあの2人は上手くいってないみたいだわ。
あの女は好きな人と結婚したくせに、どうして伯爵様を大切にしないの?
いくら仕事が忙しいからって、あんな悲しそうにさせるなんて…。私なら絶対に寂しい思いはさせないわ。
私ならいつも側に寄り添って、支えて…、伯爵様だけを深く愛するのに…。
あの女……、許さない。
奪ってやるわ。
大金持ちの世間知らずの令嬢を、見目だけはいい貧乏伯爵が上手く落としたと言う人が多く、聞いていて気分のいいものではなかった。
ロジャース伯爵様は、とてもお優しいお方なのに…。
あんな金持ちの令嬢と婚約なんてするから、色々言われてしまうのよ。
「ララ。貴女が好きだったロジャース伯爵様は、あの大金持ちの令嬢と婚約したらしいわね。
優しいとか言っていたけど、あの伯爵様も若くて綺麗な金持ちの女性が好きだったのね。他の男性と一緒だわ。」
「お母様でも、そんな風に言うのは許せません!」
「何を言ってるの?結婚するのに、お金は必要なのよ!
そう言えば…、ベネット伯爵家の跡取りの子息がいたわよね?ララより少し年下だったかしら?
残念だわ…。」
この人は……!
2人を夜会で見ることがあったが、仲睦まじい様子だった。
ロジャース伯爵様がベネット伯爵令嬢を見る目は穏やかで、ベネット伯爵令嬢は、ロジャース伯爵様しか目に入らないといったような雰囲気を出している。
やっぱり、あの2人は両思いだったのね…。
ベネット伯爵令嬢…、私は貴女が大嫌い。
私の欲しいものを全部持っている貴女が憎い…。
そんな私は、ついベネット伯爵令嬢をバカにするようなことを言ってしまったことがあった。
『お金でロジャース伯爵様を買ったようなものよ。伯爵様が可哀想だわ。』
『大金持ちだから、我儘で傲慢な令嬢に違いないわ。ロジャース伯爵様は結婚したら苦労するでしょうね。』
『ロジャース伯爵様だけでなく、王子殿下にも媚を売っているらしいわよ。はしたないわね。』
『ちょっと綺麗で金持ちだからって、世の中の男性全てに好かれているだなんて勘違いはしないで欲しいわ。本当にバカな女…。』
そんなことばかり話していたら、
「ララ…、どうしちゃったの?ロジャース伯爵様が好きだったのは分かるけど、あからさまな嫉妬は見苦しいわよ。」
「前のララはそんなことを言う子じゃなかったのに…。
ララはベネット伯爵令嬢と会話したこともないわよね?それなのに酷いと思うわ。」
数少ない友人が離れていった…。
2人はそのまま一年後くらいに結婚し、私の長い恋はこれで終わったと思っていた……
しかし…
結婚してからの2人を夜会で見ていたら、以前と雰囲気が変わってしまっていることに気がついてしまった。
結婚してロジャース伯爵夫人になった彼女が、伯爵様を見る目が違うし、ロジャース伯爵様も何かが違うのだ。よく分からないけど、何となく不自然な感じがする。
更に、ロジャース伯爵様だけで夜会に来ている姿をよく見るようになる。
上手くいってないのかしら…
その頃になると、ロジャース伯爵夫人の事業がかなり凄い勢いで成長していると耳にする。
投資すれば大成功し、店を出せば大当たりで予約が取れないとか、王妃殿下まで利用しているだとか…。
社交の場では、予約の取れないロジャース伯爵夫人の店に行った話が自慢になるくらいだった。
ロジャース伯爵家の借金の為に、夫人が必死に働いているだとか、あの伯爵家が一気にお金持ちになったとか噂話も聞くようになる。
「ロジャース伯爵家は、大金持ちになったらしいから、第二夫人になるのもいいかもしれないわね。」
「伯爵様、とても素敵だし、最近は夫人と上手くいってないって聞いたわ。狙っちゃおうかしら?」
「いいわね!第一夫人に稼いでもらって、第二夫人は跡継ぎを産めばいいんだわ!」
みんな勝手なことを言っている…。
私はロジャース伯爵様がお金持ちになる前から、ずっと好きだったのに。
更にはお母様まで
「ララ。ロジャース伯爵夫人の事業は凄いみたいね。どのお店も大人気で予約が取れないみたいよ。
ロジャース伯爵家がこんなにお金持ちなら、第二夫人になるのも悪くないわね。
どうせ、仕事が忙しいからと旦那様を放置しているんでしょう?子供を産んで夫の寵愛を受ければ、第二夫人だって悪くないわよね。」
「そんな上手くはいきませんわ。他に別の女性がいたら、あの夫人なら離縁するのではないでしょうか?」
「大丈夫よ。離縁は夫婦2人が同意しないと出来ないのだし、あの伯爵様がパトロンとの離縁に応じるはずがないわ。
それに、あの夫人の方が伯爵様を好きになって結婚したって話じゃないの。伯爵様が大好きな小娘から、離縁なんて絶対に言い出せないわよ。
上手く伯爵様に取り入れば、第二夫人でもいい待遇を受けられるわ。」
「…………。」
ある夜会で、ロジャース伯爵様が1人で参加している姿を見かけた。
友人夫婦と楽しそうに会話している。
「アラン。夫人は今日も忙しいのか?」
「ああ。取引先との付き合いがあるらしい。」
「アランのとこも跡取りが必要なのだから、夫婦2人の時間も大切にしろよ。」
「……分かっているさ。」
あのロジャース伯爵様が一瞬、悲しげな目をしていたことに気づいてしまった。
やはりあの2人は上手くいってないみたいだわ。
あの女は好きな人と結婚したくせに、どうして伯爵様を大切にしないの?
いくら仕事が忙しいからって、あんな悲しそうにさせるなんて…。私なら絶対に寂しい思いはさせないわ。
私ならいつも側に寄り添って、支えて…、伯爵様だけを深く愛するのに…。
あの女……、許さない。
奪ってやるわ。
102
お気に入りに追加
6,618
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました
ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。
このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。
そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。
ーーーー
若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。
作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。
完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。
第一章 無計画な婚約破棄
第二章 無計画な白い結婚
第三章 無計画な告白
第四章 無計画なプロポーズ
第五章 無計画な真実の愛
エピローグ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる