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閑話 アブス子爵令嬢
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没落しそうなロジャース伯爵様と、大金持ちのベネット伯爵令嬢の婚約の話題は、社交界で1番大きな話題になっていた。
大金持ちの世間知らずの令嬢を、見目だけはいい貧乏伯爵が上手く落としたと言う人が多く、聞いていて気分のいいものではなかった。
ロジャース伯爵様は、とてもお優しいお方なのに…。
あんな金持ちの令嬢と婚約なんてするから、色々言われてしまうのよ。
「ララ。貴女が好きだったロジャース伯爵様は、あの大金持ちの令嬢と婚約したらしいわね。
優しいとか言っていたけど、あの伯爵様も若くて綺麗な金持ちの女性が好きだったのね。他の男性と一緒だわ。」
「お母様でも、そんな風に言うのは許せません!」
「何を言ってるの?結婚するのに、お金は必要なのよ!
そう言えば…、ベネット伯爵家の跡取りの子息がいたわよね?ララより少し年下だったかしら?
残念だわ…。」
この人は……!
2人を夜会で見ることがあったが、仲睦まじい様子だった。
ロジャース伯爵様がベネット伯爵令嬢を見る目は穏やかで、ベネット伯爵令嬢は、ロジャース伯爵様しか目に入らないといったような雰囲気を出している。
やっぱり、あの2人は両思いだったのね…。
ベネット伯爵令嬢…、私は貴女が大嫌い。
私の欲しいものを全部持っている貴女が憎い…。
そんな私は、ついベネット伯爵令嬢をバカにするようなことを言ってしまったことがあった。
『お金でロジャース伯爵様を買ったようなものよ。伯爵様が可哀想だわ。』
『大金持ちだから、我儘で傲慢な令嬢に違いないわ。ロジャース伯爵様は結婚したら苦労するでしょうね。』
『ロジャース伯爵様だけでなく、王子殿下にも媚を売っているらしいわよ。はしたないわね。』
『ちょっと綺麗で金持ちだからって、世の中の男性全てに好かれているだなんて勘違いはしないで欲しいわ。本当にバカな女…。』
そんなことばかり話していたら、
「ララ…、どうしちゃったの?ロジャース伯爵様が好きだったのは分かるけど、あからさまな嫉妬は見苦しいわよ。」
「前のララはそんなことを言う子じゃなかったのに…。
ララはベネット伯爵令嬢と会話したこともないわよね?それなのに酷いと思うわ。」
数少ない友人が離れていった…。
2人はそのまま一年後くらいに結婚し、私の長い恋はこれで終わったと思っていた……
しかし…
結婚してからの2人を夜会で見ていたら、以前と雰囲気が変わってしまっていることに気がついてしまった。
結婚してロジャース伯爵夫人になった彼女が、伯爵様を見る目が違うし、ロジャース伯爵様も何かが違うのだ。よく分からないけど、何となく不自然な感じがする。
更に、ロジャース伯爵様だけで夜会に来ている姿をよく見るようになる。
上手くいってないのかしら…
その頃になると、ロジャース伯爵夫人の事業がかなり凄い勢いで成長していると耳にする。
投資すれば大成功し、店を出せば大当たりで予約が取れないとか、王妃殿下まで利用しているだとか…。
社交の場では、予約の取れないロジャース伯爵夫人の店に行った話が自慢になるくらいだった。
ロジャース伯爵家の借金の為に、夫人が必死に働いているだとか、あの伯爵家が一気にお金持ちになったとか噂話も聞くようになる。
「ロジャース伯爵家は、大金持ちになったらしいから、第二夫人になるのもいいかもしれないわね。」
「伯爵様、とても素敵だし、最近は夫人と上手くいってないって聞いたわ。狙っちゃおうかしら?」
「いいわね!第一夫人に稼いでもらって、第二夫人は跡継ぎを産めばいいんだわ!」
みんな勝手なことを言っている…。
私はロジャース伯爵様がお金持ちになる前から、ずっと好きだったのに。
更にはお母様まで
「ララ。ロジャース伯爵夫人の事業は凄いみたいね。どのお店も大人気で予約が取れないみたいよ。
ロジャース伯爵家がこんなにお金持ちなら、第二夫人になるのも悪くないわね。
どうせ、仕事が忙しいからと旦那様を放置しているんでしょう?子供を産んで夫の寵愛を受ければ、第二夫人だって悪くないわよね。」
「そんな上手くはいきませんわ。他に別の女性がいたら、あの夫人なら離縁するのではないでしょうか?」
「大丈夫よ。離縁は夫婦2人が同意しないと出来ないのだし、あの伯爵様がパトロンとの離縁に応じるはずがないわ。
それに、あの夫人の方が伯爵様を好きになって結婚したって話じゃないの。伯爵様が大好きな小娘から、離縁なんて絶対に言い出せないわよ。
上手く伯爵様に取り入れば、第二夫人でもいい待遇を受けられるわ。」
「…………。」
ある夜会で、ロジャース伯爵様が1人で参加している姿を見かけた。
友人夫婦と楽しそうに会話している。
「アラン。夫人は今日も忙しいのか?」
「ああ。取引先との付き合いがあるらしい。」
「アランのとこも跡取りが必要なのだから、夫婦2人の時間も大切にしろよ。」
「……分かっているさ。」
あのロジャース伯爵様が一瞬、悲しげな目をしていたことに気づいてしまった。
やはりあの2人は上手くいってないみたいだわ。
あの女は好きな人と結婚したくせに、どうして伯爵様を大切にしないの?
いくら仕事が忙しいからって、あんな悲しそうにさせるなんて…。私なら絶対に寂しい思いはさせないわ。
私ならいつも側に寄り添って、支えて…、伯爵様だけを深く愛するのに…。
あの女……、許さない。
奪ってやるわ。
大金持ちの世間知らずの令嬢を、見目だけはいい貧乏伯爵が上手く落としたと言う人が多く、聞いていて気分のいいものではなかった。
ロジャース伯爵様は、とてもお優しいお方なのに…。
あんな金持ちの令嬢と婚約なんてするから、色々言われてしまうのよ。
「ララ。貴女が好きだったロジャース伯爵様は、あの大金持ちの令嬢と婚約したらしいわね。
優しいとか言っていたけど、あの伯爵様も若くて綺麗な金持ちの女性が好きだったのね。他の男性と一緒だわ。」
「お母様でも、そんな風に言うのは許せません!」
「何を言ってるの?結婚するのに、お金は必要なのよ!
そう言えば…、ベネット伯爵家の跡取りの子息がいたわよね?ララより少し年下だったかしら?
残念だわ…。」
この人は……!
2人を夜会で見ることがあったが、仲睦まじい様子だった。
ロジャース伯爵様がベネット伯爵令嬢を見る目は穏やかで、ベネット伯爵令嬢は、ロジャース伯爵様しか目に入らないといったような雰囲気を出している。
やっぱり、あの2人は両思いだったのね…。
ベネット伯爵令嬢…、私は貴女が大嫌い。
私の欲しいものを全部持っている貴女が憎い…。
そんな私は、ついベネット伯爵令嬢をバカにするようなことを言ってしまったことがあった。
『お金でロジャース伯爵様を買ったようなものよ。伯爵様が可哀想だわ。』
『大金持ちだから、我儘で傲慢な令嬢に違いないわ。ロジャース伯爵様は結婚したら苦労するでしょうね。』
『ロジャース伯爵様だけでなく、王子殿下にも媚を売っているらしいわよ。はしたないわね。』
『ちょっと綺麗で金持ちだからって、世の中の男性全てに好かれているだなんて勘違いはしないで欲しいわ。本当にバカな女…。』
そんなことばかり話していたら、
「ララ…、どうしちゃったの?ロジャース伯爵様が好きだったのは分かるけど、あからさまな嫉妬は見苦しいわよ。」
「前のララはそんなことを言う子じゃなかったのに…。
ララはベネット伯爵令嬢と会話したこともないわよね?それなのに酷いと思うわ。」
数少ない友人が離れていった…。
2人はそのまま一年後くらいに結婚し、私の長い恋はこれで終わったと思っていた……
しかし…
結婚してからの2人を夜会で見ていたら、以前と雰囲気が変わってしまっていることに気がついてしまった。
結婚してロジャース伯爵夫人になった彼女が、伯爵様を見る目が違うし、ロジャース伯爵様も何かが違うのだ。よく分からないけど、何となく不自然な感じがする。
更に、ロジャース伯爵様だけで夜会に来ている姿をよく見るようになる。
上手くいってないのかしら…
その頃になると、ロジャース伯爵夫人の事業がかなり凄い勢いで成長していると耳にする。
投資すれば大成功し、店を出せば大当たりで予約が取れないとか、王妃殿下まで利用しているだとか…。
社交の場では、予約の取れないロジャース伯爵夫人の店に行った話が自慢になるくらいだった。
ロジャース伯爵家の借金の為に、夫人が必死に働いているだとか、あの伯爵家が一気にお金持ちになったとか噂話も聞くようになる。
「ロジャース伯爵家は、大金持ちになったらしいから、第二夫人になるのもいいかもしれないわね。」
「伯爵様、とても素敵だし、最近は夫人と上手くいってないって聞いたわ。狙っちゃおうかしら?」
「いいわね!第一夫人に稼いでもらって、第二夫人は跡継ぎを産めばいいんだわ!」
みんな勝手なことを言っている…。
私はロジャース伯爵様がお金持ちになる前から、ずっと好きだったのに。
更にはお母様まで
「ララ。ロジャース伯爵夫人の事業は凄いみたいね。どのお店も大人気で予約が取れないみたいよ。
ロジャース伯爵家がこんなにお金持ちなら、第二夫人になるのも悪くないわね。
どうせ、仕事が忙しいからと旦那様を放置しているんでしょう?子供を産んで夫の寵愛を受ければ、第二夫人だって悪くないわよね。」
「そんな上手くはいきませんわ。他に別の女性がいたら、あの夫人なら離縁するのではないでしょうか?」
「大丈夫よ。離縁は夫婦2人が同意しないと出来ないのだし、あの伯爵様がパトロンとの離縁に応じるはずがないわ。
それに、あの夫人の方が伯爵様を好きになって結婚したって話じゃないの。伯爵様が大好きな小娘から、離縁なんて絶対に言い出せないわよ。
上手く伯爵様に取り入れば、第二夫人でもいい待遇を受けられるわ。」
「…………。」
ある夜会で、ロジャース伯爵様が1人で参加している姿を見かけた。
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「……分かっているさ。」
あのロジャース伯爵様が一瞬、悲しげな目をしていたことに気づいてしまった。
やはりあの2人は上手くいってないみたいだわ。
あの女は好きな人と結婚したくせに、どうして伯爵様を大切にしないの?
いくら仕事が忙しいからって、あんな悲しそうにさせるなんて…。私なら絶対に寂しい思いはさせないわ。
私ならいつも側に寄り添って、支えて…、伯爵様だけを深く愛するのに…。
あの女……、許さない。
奪ってやるわ。
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