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閑話 ロジャース伯爵
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私は夜会の帰りの馬車の中で、跡継ぎを望む友人達の言動や、夫人達が厚かましくエレノアの店に行きたいと言って困らせたことなどについて謝っていた。
謝罪を先延ばしにするのは良くないことだと気がついた私は、すぐに謝ろうと思ったのだ。
私が謝ったことに対してエレノアは、夜会への同伴は王族主催のものだけにして欲しいと訴える。
エレノアの気持ちは分かってはいるのだ。しかし、夜会に一緒に参加出来ないとなると、私がエレノアと一緒に過ごせる時間は、ほぼ無くなるだろう。それだけはどうしても嫌だった…。
だから私は、親友の夜会だけでも一緒に参加して欲しいと頼むことにした。しかしエレノアからは、夜会は最低限にして欲しいと言われてしまうのである。
結婚前の君は確か…
『アラン様のエスコートで夜会に参加することが、私の1番の楽しみなのです。』
初々しく微笑みながらそんな風に言ってくれていた。
今頃になって気付いた。
私はエレノアが好きなのだと。今の私は、あの頃のように戻りたいと、心の底から強く望んでいるのだと…。
愛がどんなものなのかも知らない私に、エレノアは純粋な好意を向けてくれていたように思う。そんなエレノアと過ごす時間はとても心地良かったのに…。
結婚初夜に彼女を拒絶するようなことを言って、私は全てを失ったのだ…。
あのエレノアと過ごす幸せな時間も、私を見つめる優しい目も、信頼もすべて。
かつてのエレノアが、何も持たない私に寄り添ってくれたように、今度は私からエレノアに寄り添えないだろうか…?真摯に向き合って、彼女からの信用を取り戻したい。
そのために今すべきなのは……
私はエレノアの執務室に向かって歩いていた。
彼女が許してくれるまで、何度でも謝ろうと考えて。
私が愛をよく知らないことや、私の両親の話をして、エレノアが私に執着したらと考えたら怖くなってしまい、初夜にあんな言葉を言ってしまったのだと説明して謝る。
しかし、エレノアの反応は冷たいものであった。
なぜその事情を結婚する前に話してくれなかったのか。
突然あのような事を言われて傷ついたし、結婚詐欺にあったような気分になったとエレノアは言う。
更に、金蔓がいなくなられたら困るからと、必死に謝っているように見えるし、信用出来ない人の謝罪を受け入れることは難しいと言われてしまった。
エレノアの実家から援助をしてもらっていることは認めるが、金蔓だなんて一度も思ったことはないのに。
エレノアを傷付けたことを本当に後悔していること、今のままではいたくないし、信頼してもらえるようになりたいと謝罪するのだが、エレノアの目は冷たいままであった。
そんなエレノアは…
「私はそんなことは望んでおりませんわ。今更、伯爵様の何を信頼しろと言うのです?
私は今後、伯爵様を愛するつもりはありませんし、私から愛されたいとも思わないで下さい。」
その言葉は、私の小さな希望を一瞬で失わせるものであった。
ああ…、そうか。私が結婚初夜にその言葉を言ってしまったから、エレノアは結婚生活への希望を全て失ってしまったのだな。
私とのこれからの人生に、何の希望も見出すことが出来なくなったから、私を見てくれなくなったし、私に対して心を閉ざしてしまったのだ。
こんなにも心を抉られる言葉だとは…。言われてみて初めて気付いた。
私は取り返しのつかないことを言ってしまったのだと改めて後悔する。
それでも私は……、また前のような関係に戻りたいと思わずにはいられないのだ。
だから私は、エレノアに拒否されようとも、何度だって謝りに行こうと決めた。
次の日から、何度もエレノアの所に向かい、謝る日々が始まる。
そして何度目かの謝罪でやっと『許します』と言ってくれたのだった。
しかし、その後にエレノアが口にしたことは、前のように戻れるとは思わないで欲しいという言葉だった。
お互い愛は望まず、干渉も執着もしない。私はそんな結婚生活を望んでいたのだから、問題はないだろうと。
そのようなことは受け入れるはずはないし、夫婦とは言えないと思う。私はそんな結婚生活を望んだわけではないのだ。
私はただ、また君の笑った顔が見たいだけなのに…。
そんなエレノアに私は、夫婦としての時間を共有したいことを伝える。
信頼されたいなんて我儘は言わないし、愛して欲しいとも言わない。ただ、少しでいいから私を見て欲しいし、食事の時くらいは一緒に過ごさせて欲しいと跪いて頼みこんだのだ。
必死に頼み込んで…、私は週に2回、食事を一緒に食べる約束を取り付けたのであった。
今は週に2回の食事だけだが、少しずつエレノアと過ごす時間を増やしていきたい。
エレノアがまた私を見てくれる日が来ることを願って、時間はかかるかもしれないが、私が出来るやり方で、少しずつ彼女の心を取り戻して行きたい。
そう思っていたのに…。
その願いは、あっさりと打ち砕かれることになるのであった。
私の不貞という最悪の裏切りによって……。
謝罪を先延ばしにするのは良くないことだと気がついた私は、すぐに謝ろうと思ったのだ。
私が謝ったことに対してエレノアは、夜会への同伴は王族主催のものだけにして欲しいと訴える。
エレノアの気持ちは分かってはいるのだ。しかし、夜会に一緒に参加出来ないとなると、私がエレノアと一緒に過ごせる時間は、ほぼ無くなるだろう。それだけはどうしても嫌だった…。
だから私は、親友の夜会だけでも一緒に参加して欲しいと頼むことにした。しかしエレノアからは、夜会は最低限にして欲しいと言われてしまうのである。
結婚前の君は確か…
『アラン様のエスコートで夜会に参加することが、私の1番の楽しみなのです。』
初々しく微笑みながらそんな風に言ってくれていた。
今頃になって気付いた。
私はエレノアが好きなのだと。今の私は、あの頃のように戻りたいと、心の底から強く望んでいるのだと…。
愛がどんなものなのかも知らない私に、エレノアは純粋な好意を向けてくれていたように思う。そんなエレノアと過ごす時間はとても心地良かったのに…。
結婚初夜に彼女を拒絶するようなことを言って、私は全てを失ったのだ…。
あのエレノアと過ごす幸せな時間も、私を見つめる優しい目も、信頼もすべて。
かつてのエレノアが、何も持たない私に寄り添ってくれたように、今度は私からエレノアに寄り添えないだろうか…?真摯に向き合って、彼女からの信用を取り戻したい。
そのために今すべきなのは……
私はエレノアの執務室に向かって歩いていた。
彼女が許してくれるまで、何度でも謝ろうと考えて。
私が愛をよく知らないことや、私の両親の話をして、エレノアが私に執着したらと考えたら怖くなってしまい、初夜にあんな言葉を言ってしまったのだと説明して謝る。
しかし、エレノアの反応は冷たいものであった。
なぜその事情を結婚する前に話してくれなかったのか。
突然あのような事を言われて傷ついたし、結婚詐欺にあったような気分になったとエレノアは言う。
更に、金蔓がいなくなられたら困るからと、必死に謝っているように見えるし、信用出来ない人の謝罪を受け入れることは難しいと言われてしまった。
エレノアの実家から援助をしてもらっていることは認めるが、金蔓だなんて一度も思ったことはないのに。
エレノアを傷付けたことを本当に後悔していること、今のままではいたくないし、信頼してもらえるようになりたいと謝罪するのだが、エレノアの目は冷たいままであった。
そんなエレノアは…
「私はそんなことは望んでおりませんわ。今更、伯爵様の何を信頼しろと言うのです?
私は今後、伯爵様を愛するつもりはありませんし、私から愛されたいとも思わないで下さい。」
その言葉は、私の小さな希望を一瞬で失わせるものであった。
ああ…、そうか。私が結婚初夜にその言葉を言ってしまったから、エレノアは結婚生活への希望を全て失ってしまったのだな。
私とのこれからの人生に、何の希望も見出すことが出来なくなったから、私を見てくれなくなったし、私に対して心を閉ざしてしまったのだ。
こんなにも心を抉られる言葉だとは…。言われてみて初めて気付いた。
私は取り返しのつかないことを言ってしまったのだと改めて後悔する。
それでも私は……、また前のような関係に戻りたいと思わずにはいられないのだ。
だから私は、エレノアに拒否されようとも、何度だって謝りに行こうと決めた。
次の日から、何度もエレノアの所に向かい、謝る日々が始まる。
そして何度目かの謝罪でやっと『許します』と言ってくれたのだった。
しかし、その後にエレノアが口にしたことは、前のように戻れるとは思わないで欲しいという言葉だった。
お互い愛は望まず、干渉も執着もしない。私はそんな結婚生活を望んでいたのだから、問題はないだろうと。
そのようなことは受け入れるはずはないし、夫婦とは言えないと思う。私はそんな結婚生活を望んだわけではないのだ。
私はただ、また君の笑った顔が見たいだけなのに…。
そんなエレノアに私は、夫婦としての時間を共有したいことを伝える。
信頼されたいなんて我儘は言わないし、愛して欲しいとも言わない。ただ、少しでいいから私を見て欲しいし、食事の時くらいは一緒に過ごさせて欲しいと跪いて頼みこんだのだ。
必死に頼み込んで…、私は週に2回、食事を一緒に食べる約束を取り付けたのであった。
今は週に2回の食事だけだが、少しずつエレノアと過ごす時間を増やしていきたい。
エレノアがまた私を見てくれる日が来ることを願って、時間はかかるかもしれないが、私が出来るやり方で、少しずつ彼女の心を取り戻して行きたい。
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