上 下
39 / 125

離縁はしたくない

しおりを挟む
 おばちゃん根性を出し切り、自分の言いたいことだけを言い終えた私は、先に応接室を退出することにした。

 その時、私は護衛騎士のレイクス卿と秘書官のマテオに目配せをした。

〝ここに残ってコイツらのやり取りを見守れ!記録して後で報告しろ!〟

 2人は黙って頷く。…頼んだわよ!!









 結局、レイクス卿とマテオが戻って来たのは3時間以上経ってからだった…。
 冷静な2人がかなり疲れて戻って来た。

「お嬢!伯爵様と子爵家は、かなり揉めてました。」

「もう、こっちがぐったりですよ!」

「ご苦労!!今、お菓子とお茶を用意させるから、そこに座りなさい。」

「「ありがとうございます。」」

 メイドに美味しいお菓子とお茶を用意させる。

「で、どうだったの?」

「あの子爵夫人が騒いでました。
 娘は純潔を奪われたのだから、黙って第二夫人にしろみたいなことを、何度も繰り返して伯爵様に訴えていましたよ。」

「でも、伯爵様は第二夫人は要らないって折れなくて、『私の妻はエレノアだけだ!』とか何度も言ってました。子爵令嬢は泣いてました。」

 アブス、泣いたのか……

「子爵夫人は、お嬢と伯爵様が離縁はしないで済むように、伯爵様からきちんとお嬢に謝るべきだと話していました。」

 あのババア…。お前が言える立場か!

「慰謝料とか持参金の話はしていたの?」

「無理ですよ。離縁しない為にどうするかの話と、第二夫人は要らない・第二夫人になりたいの話が平行線でしたから。話は全然まとまっていません。」

 予想通りね。あのバカ伯爵は、上手く話をまとめられるような男ではないからね。

 ふふ!ギルが調査をし終わるまで、揉めるだけ揉めさせて、時間稼ぎをしてもらうわよ。

 どっちにしても、夜会の日にあんなことをしたら、噂になってしまうだろうから、嫁入り前のアブスは後に引けないだろうし、バカ伯爵も嫌でも責任を取らなきゃいけないだろうけどね。

 アブスは、みんなに関係がバレて伯爵様が責任を取らなくてはいけない状況にしたかったのだろうし。
 あの地味女…、ああ見えて大胆なことをしてくれたじゃないの。
 体を張って頑張ったご褒美に、あのバカ伯爵をアンタにあげるわ。




 翌日。

「奥様、旦那様がいらしております。」

「忙しいから、要件を聞いてくれる?」

「畏まりました。」

 少しして…

「奥様に謝りたいと言っておられますが…。」

「謝罪は要らないと伝えて。離縁状のサインならすぐにすると伝えてくれる?」

「畏まりました。」

 約1分後…

「奥様、旦那様は離縁はしないと言っておられます。」

「仕事の邪魔だから、今日はもう来んなって伝えてくれる?」

「畏まりました。」



 その次の日。

「奥様、旦那様が謝りたいと来ていますが。」

「謝罪は不要。仕事の邪魔をしに来るなら、今すぐに実家に帰らせてもらいますと伝えてくれる?」

「畏まりました。」



 またまた次の日。

「奥様、旦那様から手紙が届いています。」

「忙しいから、読んでもらってもいい?」

「それは流石に…。」

「ごめん。自分で読みます。」


 ……謝罪が書いてあるな。
 今夜は一緒に夕飯を食べたいだって…?バカが!

「レイクス卿!伯爵様の所に行って、忙しいからしばらくは食事はご一緒出来ないと伝えて来てくれる?」

「御意!」


 こんなやり取りをしているうちに、数日が経つのであった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。 そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。 婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。 どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。 実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。 それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。 これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。 ☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?

氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。 しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。 夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。 小説家なろうにも投稿中

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

処理中です...