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閑話 ロジャース伯爵
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後日、叔父上とシンディーが、エレノアの実家に迷惑をかけたことについて謝罪したいという内容の手紙をエレノアに渡してもらった。すると、私は関係していないなのだから、謝罪は要らないと彼女から返事が来る。
謝罪する時間すら私にはくれないのかと思うと、心が痛むような気がした。
そして、叔父上とシンディーが爵位を剥奪されて少し経つ頃、王妃殿下の誕生日を祝う夜会が開催される。
エレノアと結婚してから初めて2人で参加する夜会だ。
あの後、エレノアと話をするどころか、顔すら合わせることがなかった。
彼女が母のように、愛に狂って執着してくるのではと恐れていたはずなのに…。実際には、私に無関心になり、嫌われて近寄ることすら出来なくなるなんて考えてもいなかった。
今更だがエレノアは、父に狂ったように執着することしか出来なかった無力な母とは全然違うのだ。
そのことに気付かずに、私は初夜の日にエレノアに突き放すようなことを言ってしまい、信用を失ってしまった。
このままではいけないとは思うのだ。しかし、どうして良いのか分からない。
結婚前に、彼女が私に向けてくれていた好意が今更恋しくなるとは…。
夜会に行くために磨かれたエレノアは、とにかく美しかった。
落ち着いた品の良い水色のドレスを着て、髪の毛は既婚者らしく結い上げていて、いつもより大人っぽく感じた。そして、フワッと優しい匂いがするような気がする。
会場入りすると、他の男達がエレノアをチラチラ見ているような気がする。その視線が不愉快に感じるのだ。
しかし、それ以上に不愉快なことが起こるのである。
それはパーティー前に、王族に挨拶をした時だった。王子殿下がエレノアに話掛けて来たのだが、
「エレノア!お前、結婚して少し老けたな!苦労してるのか?」
一瞬耳を疑った。私の妻をエレノアと呼び捨てにしたのか?普通ならば、このような公式な場ではロジャース伯爵夫人と呼ぶだろう。
しかもこんなに美しいエレノアに老けただなんて…。殿下とは言え、なんて失礼な物言いなんだ!
「王子殿下。毎日、とっても幸せに過ごしてますので、ご心配なく。」
私はこんなに苛立つのを我慢しているのに、エレノアは冷静だった。
その後のエレノアと王子殿下のやり取りを見ていると、お互いをよく知る者同士のような、幼馴染とか親しい友人だとか、そのような類の会話のように聞こえた。しかし、それはそれで面白くない気持ちがあった。
今の私はそんな風に会話すらしてもらえないのに…。
挨拶を終えた後に、王子殿下とエレノアの仲が良いように見えたことを口にすると、学園時代にずっと同じクラスで、生徒会で酷使されただけの関係だと言う。強い口調で否定するくらい嫌だってことか。何となく安心したような気がした。
夜会が始まり、ワルツが流れている。
私は、エレノアをダンスに誘うことに成功した。断られるかもしれないと心配していたのだが、こういう場では普通の夫婦として振る舞ってくれるということなのだろう。良かったと安堵するのだが、すぐに現実を突きつけられることになる。
結婚してから初めてのエレノアとのダンスは、彼女の心が私から離れているのだと痛いほどに伝わるものであった。
貴婦人らしく美しく微笑んでいるのだが、目が笑っていないし、視線を合わせようともしてくれない。ダンスも一曲だけで終わらせようとしているのが分かる。
夫婦なのだからと話をして、結局、エレノアと三曲踊ることが出来たのだが、私の心は満たされなかった。
『アラン様とこれから沢山ダンスが踊れるのですね。』
婚約した後の夜会で、彼女はそう言って嬉しそうに微笑んでくれていたのに…。
彼女から笑顔を奪ったのは私だ。今更何を思い出しても遅いのに…。
それでも…、私はエレノアの心を取り戻したいのだ。
謝罪する時間すら私にはくれないのかと思うと、心が痛むような気がした。
そして、叔父上とシンディーが爵位を剥奪されて少し経つ頃、王妃殿下の誕生日を祝う夜会が開催される。
エレノアと結婚してから初めて2人で参加する夜会だ。
あの後、エレノアと話をするどころか、顔すら合わせることがなかった。
彼女が母のように、愛に狂って執着してくるのではと恐れていたはずなのに…。実際には、私に無関心になり、嫌われて近寄ることすら出来なくなるなんて考えてもいなかった。
今更だがエレノアは、父に狂ったように執着することしか出来なかった無力な母とは全然違うのだ。
そのことに気付かずに、私は初夜の日にエレノアに突き放すようなことを言ってしまい、信用を失ってしまった。
このままではいけないとは思うのだ。しかし、どうして良いのか分からない。
結婚前に、彼女が私に向けてくれていた好意が今更恋しくなるとは…。
夜会に行くために磨かれたエレノアは、とにかく美しかった。
落ち着いた品の良い水色のドレスを着て、髪の毛は既婚者らしく結い上げていて、いつもより大人っぽく感じた。そして、フワッと優しい匂いがするような気がする。
会場入りすると、他の男達がエレノアをチラチラ見ているような気がする。その視線が不愉快に感じるのだ。
しかし、それ以上に不愉快なことが起こるのである。
それはパーティー前に、王族に挨拶をした時だった。王子殿下がエレノアに話掛けて来たのだが、
「エレノア!お前、結婚して少し老けたな!苦労してるのか?」
一瞬耳を疑った。私の妻をエレノアと呼び捨てにしたのか?普通ならば、このような公式な場ではロジャース伯爵夫人と呼ぶだろう。
しかもこんなに美しいエレノアに老けただなんて…。殿下とは言え、なんて失礼な物言いなんだ!
「王子殿下。毎日、とっても幸せに過ごしてますので、ご心配なく。」
私はこんなに苛立つのを我慢しているのに、エレノアは冷静だった。
その後のエレノアと王子殿下のやり取りを見ていると、お互いをよく知る者同士のような、幼馴染とか親しい友人だとか、そのような類の会話のように聞こえた。しかし、それはそれで面白くない気持ちがあった。
今の私はそんな風に会話すらしてもらえないのに…。
挨拶を終えた後に、王子殿下とエレノアの仲が良いように見えたことを口にすると、学園時代にずっと同じクラスで、生徒会で酷使されただけの関係だと言う。強い口調で否定するくらい嫌だってことか。何となく安心したような気がした。
夜会が始まり、ワルツが流れている。
私は、エレノアをダンスに誘うことに成功した。断られるかもしれないと心配していたのだが、こういう場では普通の夫婦として振る舞ってくれるということなのだろう。良かったと安堵するのだが、すぐに現実を突きつけられることになる。
結婚してから初めてのエレノアとのダンスは、彼女の心が私から離れているのだと痛いほどに伝わるものであった。
貴婦人らしく美しく微笑んでいるのだが、目が笑っていないし、視線を合わせようともしてくれない。ダンスも一曲だけで終わらせようとしているのが分かる。
夫婦なのだからと話をして、結局、エレノアと三曲踊ることが出来たのだが、私の心は満たされなかった。
『アラン様とこれから沢山ダンスが踊れるのですね。』
婚約した後の夜会で、彼女はそう言って嬉しそうに微笑んでくれていたのに…。
彼女から笑顔を奪ったのは私だ。今更何を思い出しても遅いのに…。
それでも…、私はエレノアの心を取り戻したいのだ。
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