君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

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王子殿下

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 結局、私の予想通りだった。

 伯爵様の友人達からは新婚生活について聞かれるか、跡取り梅の話か、私の店に来たい話か、私の投資に興味があるという話をされることが多かった。私のことは放っておいて、伯爵様と友人とで話をしていればいいのに。ああ、早く帰りたい。

 そんな時…、

「あの…。ロジャース伯爵様、よろしければ踊って頂けませんか?」

 あら、積極的で可愛らしいお嬢さんね。第二夫人を狙っているっていう女狐の1人かしら?
 私としてはどーぞ、どーぞって感じ。

「すまない。私は妻以外とは踊るつもりはないんだ。」

 何言ってんだ?このペテン師が!って鬼嫁っぽい反応をしてしまいそうになるのを、必死で我慢する私。

「アナタ、御令嬢に恥をかかせるようなことをしてはいけませんわ。私はのんびり飲み物でも飲んでいますから、御令嬢と踊って差し上げて。」

「だが、私はエレノア以外とは……」

「私は大丈夫ですから。」

「分かった。すぐ戻るから、待っていてくれ。」

 こうやって見ると、伯爵様ってあまり女性が得意な方ではないよね。
 よし!ダンスに行っている間、どっか隅の方でのんびりワインでも飲んでよーっと。

「アランは夫人が他の男に誘われてしまうのかと心配みたいだな!くっ、くっ…。」

「そんなことはございませんわ。」

 アイツがそんな心配するわけない!!

 伯爵様の友人達、もういいよ…。ワインでも探しに行こうと思ったその時だった。

「エレノア、いたのか!」

 この嫌な声は…。
 何でこの人がここにいるの?面倒な人に見つかってしまったな。

「……王子殿下。ご機嫌よう。」

「エレノア、そんな嫌そうにするなよ。」

 今日も馴れ馴れしい男だわ。殿下の絡みも結構疲れるんだよねぇ。

「ふふっ!嫌そうだなんて心外ですわ。このような場で王子殿下にお会いするとは思っておりませんでしたので、少々驚いてしまっただけです。」

「兄上が王位を継承したら私は臣籍降下するから、最近は夜会などの社交の場には出るようにしているんだ。」

「あ、そうですか。殿下も執務でお忙しいのに、お疲れ様でございますわね。
 それでは、私はこれで……」

「エレノア、待て!……私と踊っていただけませんか?」

 殿下の胡散臭い笑顔が怖いわ。
 はぁー。嫌だと言えたらどんなに良かったか。

「……はい。喜んで。」

「あまり喜んでいるようには見えないが…。まあいいか!行くぞ!」

 私が喜んでいないのを知りながら誘うのやめてよね。




 「エレノアと踊るのは卒業パーティー以来か。久しぶりだよな。」

「そうかもしれませんわね。学生時代は、散々、殿下にこき使われて終わってしまったという記憶しかありませんが。」

「あの時はエレノアがいて助かったよ。本当は卒業後も、私の側近として働いてもらいたかったくらいだ。
 ところで、エレノア……。お前、本当に幸せにやっているのか?私には無理に笑っているようにしか見えないぞ。」

 うっ!鋭い……。



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