君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

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兄様が好き

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 バード男爵と令嬢が来て面倒だと思っていたけど、マリラをクビにするきっかけが出来て良かった。

 しかし、鬼嫁の怒りは収まらない。
 金にがめついバード男爵やその他の親族達に、ふざけた使用人のマリラ、結婚詐欺師のような伯爵様。全てにストレス。
 
 顔すら見たくなくて、食事も寝室も別にして、用事がある時は手紙を書いて渡してもらうようにし、伯爵様とは極力関わらないようにしていたけど、たまには不満を爆発させたいわね。バード男爵令嬢の第二夫人の件もあるし……。よし!

「バード男爵様。伯爵様にも同席してもらって、先程の御令嬢の第二夫人のお話の続きをしたいと思うのですが、どうでしょうか?」

 帰りたそうにしていたバード男爵を引き留める鬼嫁。第二夫人の話を前向きに検討しているよって雰囲気で話しかけると、バード男爵と令嬢の表情が変わるのが分かった。

「アランは時間はあるだろうか?」
「叔父である男爵様が大切な話があると言えば大丈夫かと思いますわ」

 ふふっ、食い付いてきたわね。
 伯爵様はどうせ大した仕事をしてないんだから、今すぐに来てもらおうかしら。

「メイド長。バード男爵様と私から伯爵様に大切な話があるから、今から時間が取れないかを聞いてきてくれないかしら?」
「畏まりました」

 伯爵様はすぐに執務を中断して来てくれたので、応接室で話をすることになった。
 この顔だけ男の伯爵様とは、同じ邸に住んでいるのにまともに顔を合わせるのはいつぶりだろう? 私達は順調に家庭内別居の道を歩んでいるよね。

「アラン、仕事している時に急に呼び出して悪かったな」
「大丈夫ですよ。叔父上とシンディーはエレノアに会いに来ていたらしいですね」

 会いに来たのではなく、たかりに来たの。
 このバカ旦那、早く気付けよ!

「兄様、お久しぶりですわ!」

 あらあら、ニコニコしてそんな風に親しげアピールしなくてもいいのよ、私よりも年上のお嬢様ったら。
 要らない旦那だからアンタにあげるわ。

「今日は夫人に色々と聞きたいことがあって来たんだよ」

 ここからは小娘が話してくれないか……と、言いたそうに私に視線を送ってくる男爵。
 ちっ、しょうがないな。

「伯爵様とバード男爵令嬢はとても仲が良いとお聞きしましたわ。ねぇ、お嬢様?」
「そうですわ。私は昔から兄様が好きだったのです」

 ふっ、食いついてきてくれてありがとう。

「まあ、伯爵様は幸せですわね。ところでお嬢様の好きとはどういった種類の好きなのでしょう?
 兄妹みたいなものなのか、異性としてなのか、お嬢様から詳しくお聞きしたいわ」
「エレノア、何を言って……?」

 伯爵様が『えっ?』って反応をしているのを無視して、お嬢様は嬉しそうに話を続ける。

「勿論、異性としてですわ!
 私は子供の頃から兄様をお慕いしていましたの。第二夫人になったら、私が兄様を支えていきますわ!」

 ブラボー! 素晴らしい自己アピールだね。
 大きな拍手を送りたいくらいだわ。男爵もそんな娘を嬉しそうに見ているし。
 若いっていいよねー。アラフォーおばちゃんになると好きだけじゃダメなことを分かっているから、あんな風に自信満々に言えないもん。

「シンディー、何を言っているんだ? 第二夫人って、何のことだ?」

 伯爵様は普通に驚いている。初耳だったのね……

「先程、男爵様からお叱りを受けましたの。
 伯爵夫人である私が、新婚なのに一家の主人よりも仕事を優先していると噂話があると。伯爵夫人として跡取りを産んだり、主人に寄り添うことも必要なのに、私は忙しくてそれが出来ていないと」
「叔父上、その話は本当ですか? 誰がそんな噂話を……?」
「ああ……、ただの噂話だろう。別に夫人を叱ったつもりはない」

 そこまで私がバラすとは思っていなかったようで、気まずそうにする男爵。
 おばちゃんはおしゃべりだから、何でもバラすからね。覚悟して!


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